短編2
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釣り人

僕は釣りが好きだ。最近YouTubeで釣り動画も投稿している。

川や海に行って釣りをするが、釣れる瞬間が一番好きだ。あれほど楽しいものはない!

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山の中にある渓流に行った時のことだ。奇妙な光景を見た。

老人らしき人たちが等間隔に並んで竿も持たず川の方をジッと見ているのだ。

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変な奴らだなぁと釣りの準備をしながら思った。

仕掛けを作りながらも時々老人たちの方へ目をやった。

一番向こうにあるやつが急に川へ飛び込んだ。

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川は深いらしく老人はバタバタと苦しそうにもがいていた。やがて力尽きたのか動かなくなり体だけがぷかぷかと浮かんだ。

その老人は何かに引っ張られるように上流へ向かった。

次、初めの老人の隣にいたおばあちゃんが飛び込んだ。

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後は同じだ。もがき力尽き浮く、そして引っ張られる。

3人目も同じだった。そこで僕は怖いことに気づいた。

徐々にこちらへ近づいてくる。もしかしたら自分の番になるのかもしれない。

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慌てて帰り支度をする。すぐに車へ戻らねばならない。

その間も老人たちは身投げしていく。いや、待てよ。あれ、抵抗してないか?

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近づくにつれ分かったが、ジッと川を見つめている時の表情は必死に背中を起こそうとしているようだった。

もしかしたら糸か何かで引っ張られているんじゃないか?

だとしたらなおさら逃げなくてはならない。

僕はアニメの主人公ではない!一般人だ!

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自分が他人の不幸に巻き込まれることはない!僕はさっさと帰り支度を済ませて車まで急いだ。

それを見たからか残った老人たちが僕を睨み追いかけて来た。

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それでもやはり糸か何かで繋がれているようである地点まで来たところで動きは止まった。

犬小屋に繋がれた犬のように。

僕は関係なしに車に戻った。さっさとエンジンをかけて出発した。

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帰りがてら老人たちに糸をかけているであろうやつを見つけた。

そいつはキッチリとスーツを着こなし髪はワックスをかけて綺麗に整えた役人っぽい男たちだった。

口が裂けるほどの満面の笑みと異常にとんがった耳と吊り上がった目をしており悪魔的な存在に思えた。

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そいつらは僕を認識しているようだったが、こちらに敵意を向けなかった。

おそらく死にそうな老人を見ても自分の保身に走った僕を見て自分たちの仲間だと思ったのだろう。

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人間なんてみんな少しばかりの悪魔を飼ってるだろう?

あの引っ張られて川に引き摺り込まれる老人たちだって散々若者をこき使って来ただろう。

今、自分が酷い目に遭っているのならそれは誰かにそうして来たからだ。

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僕もいつかこの出来事の精算を迫られる日が来るのかもしれないな。

今日の犠牲者をたまたま直に見ただけのこと。みんな誰かを犠牲にして生きてる。

そう言い聞かせながら車を走らせた。

Concrete
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