中編4
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星島さん

人間40年も生きてきたら、日曜日にやることなんてありきたりになるもんさ。

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9時に布団から這い出して、顔洗って歯磨いてトイレ行って飯食って、、、

いや、飯食ってトイレだったかな?

まあ、そんなことはこの際どうだって良いだろう?

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飯食ってからしばらくソファーで携帯いじっていたら、退屈してきて、25万キロ走ってる箱型スカイラインで朝から安アパートを出掛けたんだ。

最近オーブンした山あいにあるデカイショッピングモールで、買い物でもしようかなってね。

別にいつもの近くにあるチンケなスーパーでも問題ないんだけど、たまには息抜きにも良いかなとか思ったわけさ。

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山を削って作られたという、そのショッピングモールの広い駐車場は8割方埋まってたな。

で店内はというと、どいつもこいつも行くとこないのか?というくらい混んでたよ。

家族連れとかカップルとか、皆でかいショッピングカートを押しながらブラブラ往き来してる。

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俺はというと、取り敢えず切らしていたトイレットペーパーと育毛剤は確保したから、あとは食材か?などとと思いゴロゴロカートを押しながら奥にある精肉コーナーに向かったんだ。

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ショーケースの前で肉を吟味してると、

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「ねぇ星島さ~ん、今晩はA5ランクの黒毛和牛でも食べる~?」

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となにやら奇妙に甲高くて胡散臭い女の声が聞こえたものだから辺りを見回すと、少し離れたところに凄いオバサンがいたんだ。

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膝丈ほどの濃いピンクの毛皮コートを羽織り、同じ色に染めたソバージュの長い髪。

デカイ派手なサングラスを掛けていて、指にはこれでもかというくらい指輪をはめている。

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カートの上にはてんこ盛りになるくらい商品を乗せていて、オバサンは下に乗せたペット用のケージに向かって何か話しかけていた。

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「そうね、わかったわ星島さん、じゃあ今晩のご飯はお肉にしましょうね」

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─星島さん?お肉?

ペットの小型犬でも連れてきてんのか?

それにしても「星島さん」って、、、

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それとなく見てると、そのオバサン、ショーケースから一気に5パックくらい高級牛肉を取ると無造作にカートに入れ、そそくさと立ち去った。

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昼近くになって腹が減ったから、レストラン街に行ってみた。

まだ昼前ということもあってか、比較的スムーズに席に座ることが出来たな。

ハンバーグの専門店だったけど、既に半分くらい席は埋まっていたと思う。

鉄板に乗ったアツアツのハンバーグを食べていると、

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「さあ、星島さん、美味しいハンバーグ、一緒に食べましょうね!」

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また、あの甲高い声が聞こえる。

見ると、少し離れた四人掛けテーブルのソファーにあのオバサンが座っていた。

傍らにペットケージを置いて。

ケージの入口を開き、一口大に切ったハンバーグをフォークでペットに食べさせているようだ。

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─スゲー、ペットの昼飯が俺と同じなのかよ!?

いったい何飼ってるんだ?

トイプードル?ミニチュアダックスフント?

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驚きながらチラチラ見てると、

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「そう星島さん、あなたもお外に出たいのね。

わかったわ、じゃあ、お膝の上においで」

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と言うとケージの入口に両手を突っ込んで、中からペットを出すと膝の上に乗せた。

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─え!?

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俺は一回目を擦り再び見る。

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大きさは50センチくらいだろうか?

オバサンの膝の上に二本足で立ち、テーブルに両手を乗せてガツガツと皿に乗ったハンバーグを犬喰いしている。

あれは犬?

いやいや、どこかおかしい。

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そこでバレないように凝視してみる。

そしてゾクリとした。

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首から下は、、、

猿のような毛だらけの風体で短いしっぽがあり、二本足で直立している。

ただ頭部は、、、人間?

、、、そう、明らかに人間だった。

よく見ると、その横顔は中年のオッサンそのものだ。

白髪交じりの薄い頭髪に適度にシワのある顔。

手づかみで、ハンバーグをガツガツ食べている。

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何だあれは?

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俺が唖然としている間に「星島さん」はハンバーグを全て平らげてしまった。

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「星島さん、お腹いっぱいになった?

じゃあ、お家に戻ろうか」

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オバサンはそう言って「星島さん」を両脇から抱いて、ケージに戻した。

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…………

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帰りの車の中。

山道を次々カーブでハンドルを切りながら、ふと俺は思う。

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─人間40年も生きてきたら、おかしなものを見ることもあるさ、、、

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と。

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さて、明日からまた仕事頑張ろうかな。

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…………

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fin

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