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中編4
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暗示夢

ここ最近、怖い夢に悩まされている。

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毎回激しい心臓の拍動による息苦しさで目が覚まされ、肌着は汗でぐっしょりだ。

意味不明な叫びとともに目が覚めた時もあり、横に寝ている妻がびっくりして飛び起きた時とかもあった。

後から夢の内容を妻に尋ねられたりするのだが、起きた途端に記憶がどんどん抜け落ちていくみたいで、実際断片的にしか覚えてない。

今思い出せる限りを羅列すると、

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何故だか私は薄暗い畳の部屋にいる。

床の間のある8帖ほどの仏間だ。

部屋の真ん中辺りでは、割烹着姿の女性が鼻歌を歌いながら箒で畳をはわいている。

立派な仏壇の前には、手を合わせて何やらお経を唱えている黒い着物姿の老婆が正座している。

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俺はというと洋服ではなく絣の着物を羽織っていて、大人ではなく未だ子供のようだ。

誰かに追われているのか何故だか必死に隠れ場所を探している。

一刻を争う感じだ。

和室のあちこちを探しまわり最後は奥にある押入れの中に隠れると、襖の隙間から緊張しながら外をうかがっていた。

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すると物凄い勢いで和室の襖が開けられ、白装束の大柄な男がいきなり入ってきた。

その顔は血で真っ赤に染まっており、さながら赤鬼の形相をしている。

男はハチマキで頭に懐中電灯を挟み、袂には散弾銃と日本刀を挿している。

まるで昔の映画「八つ墓村」の犯人のようだ。

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男は意味不明な言葉を叫びながら室の中を歩きまわっている。

そしてまず日本刀を抜き部屋の中央辺りにいる女性の首を一刀両断で斬り落とした。

畳に落ちる女性の頭部。

でもその白い顔は何故だかそれでも楽しげに鼻歌を歌い続けている。

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次に仏壇の前の老婆の真後ろに立ち散弾銃を構え、躊躇なく引き金を引く。

派手な銃声とともに、一瞬にして老婆の頭部がぶっ飛ぶ。

老婆は頭部を失いながらも口をパクパクしながら拝み続けている。

部屋はあっという間に血と肉塊の海に染まった。

凄絶な光景だ。

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その様子を見ながら、俺は押入れの中でブルブル震えている。

そしてどうか見つからないようにと心で祈りながら、緊張しながら男の様子をじっとうかがっていた。

だがすぐに見つかってしまい、男に無理やり押入れから引き摺り出されてしまう。

正座して拝みながら必死に命乞いをする俺。

男はそんな俺の願いを聞き入れることなく日本刀を抜くと、ゆっくり頭上に振りかざした。

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─ダメだ、殺される!

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ここで終わる。

いつも殺されてしまう直前に目が覚めるのだ。

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ある日の夜会社の同僚である立原と居酒屋で飲んでいる時、憂鬱な様子の俺を見て彼はこう言った。

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「何か悩みでもあるのか?もしそうなら話してみろよ。話すだけでも少しは気が紛れるかもしれんから」

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そのとおりかもしれないと思った俺は、毎夜うなされている悪夢の話をした。

立原は黙って最後まで聞いた後、

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「夢というのはでたらめな記憶の断片の羅列の場合がほとんどなんだが、たまに将来起こるかもしれないことを暗示して本人に注意を促す時があるらしい」

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と言って俺の顔を見た。

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「将来の暗示だって?

あんな恐ろしい事柄がいずれ起こるというのか?」

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そう言って真顔で立原を睨む俺に対して彼は

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「おいおい、これはあくまでそんな考えもあるという程度の話だよ。あまり本気にするなよ」

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と言って困ったように苦笑いした。

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そして翌日休日の昼下がり。

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その日午後から夫婦で郊外のスーパーに買い物に行く予定だったのだが結局、妻と二人リビングのソファーに座りテレビドラマを観ていた。

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すると突然警告音とともに画面上部に「ニュース速報」のテロップが流れると番組は中断され、とある大型スーパーの外観が映しだされる。

スーパーの駐車場には数台のパトカーや救急車が停車して規制線が貼られ騒然とした様子だ。

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「ねぇ、ここ、私たちが行く予定のスーパーじゃない?

何か事件なのかな」

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と妻が不安げな顔で俺の顔を見る。

スーパーを背景に立つスーツ姿の若いキャスターが、深刻な表情でマイクで喋りだす。

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「速報です。

今から1時間程前、大阪市郊外にあるこちらの大型スーパー「Yタウン○○店」の1階フロアーで若い男が突然、コートに隠し持っていた日本刀で買い物中の女性に斬りつけた後、さらに隠し持っていた散弾銃で同じく買い物中の男性の頭部に発泡した模様です。

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「頭部を撃たれた男性はその場で死亡が確認され、女性は救急車で市内の病院に搬送され集中治療を受けておりますが、重体です。

犯人の若い男はスーパーの館内を逃走しておりましたが、先ほど警察により現行犯逮捕されました。

男は『もう一人、どうしても殺さないといけない奴がいた』などと喚いていたそうで、これより警察により犯行の詳しい状況や動機などが解明される模様です」

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「現在のところ判明している被害に遭われた男性と女性の身元を申し上げます。

男性は大阪市N区N町在住の会社員立原誠さん33歳で、女性は、、、」

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「嘘だろ、、、」

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俺は画面を見ながら思わず声を漏らした。

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「どうしたの、知り合いの人?」

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俺は妻の問いかけに答えることも出来ずに、ただ呆然と画面に観入る。

そして昨日立原の言っていた言葉を思い出し、全身が凍りついた。

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fin

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Presented by Nekojiro

Concrete
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