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【連続紛失事件と嘆きの価格体系!】

中編3
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【連続紛失事件と嘆きの価格体系!】

都市伝説case:4

【連続紛失事件と嘆きの価格体系!】

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俗にバミューダ・トライアングルと呼称される海域では、

航空機や船舶が突如として消失する現象が過去に幾つも報告されている。

あるいは富士の樹海なども散策に訪れた人間が失踪してしまうことで有名だ。

そんな特殊な場所に限らずとも「神隠し」は様々な形で起きている。

それらは霊的現象なのか、あるいは磁場の影響か、

もちろん人為的な事件もあるだろう。

いずれにせよ、そこにあったものが突然「消える」のは、

さほど珍しいことでは無い。

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茨城県某市のバイパス沿い。

紛失物が多発するファミレスが存在する。

基本的には一日の客100人あたり平均5件の物品紛失が報告されている。

幾つか例を紹介しよう。

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軽度被害:

どうやら傘が盗まれた、落としたペンを拾おうとしたら見つからない。

中度被害:

気づいたらイヤリングが無い、文庫本がどこかに消えた。

重度被害:

メガネ、補聴器、財布、重要書類、貴金属などの紛失。

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統計を数字だけで考える際に気をつけるべきことは、

「まぁいいか」「気のせいかもしれない」で報告されない件が相当数にのぼることだ。

客100人あたり“報告されているだけで”5件は実は、かなりの件数であると考えられる。

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しかもこれらの紛失物は、店内でのちに発見された例がほとんど無い。

となると考えられるのは盗難、しかもこの店舗に毎日のように訪れる、

連続窃盗犯の存在。

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被害額を考えると、いつ客に訴訟されてもおかしくない。

店舗存続の危機。

雇い入れた探偵指導のもと監視カメラ台数を増やし、

倉庫の一角をモニタールームに改造。

リスクはあるが注意喚起のポスターも掲出した。

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3ヶ月続けた結果、

ほぼ5件/100人の紛失。

犯人の特定にも到らず、つまり効果無し。

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じつのところ、私はそこの常連客だった。内情を知っているのもそのおかげだ。

ある春の日、カルボナーラを食べていたら店内で何人かが騒ぎ始めた。

どうやら物が消えたらしい。

いつものことなので、まぁ自分のボールペンくらいなら無くなってるよなと思ってカバンを確認してみる。今までペンやノートくらいなら消えたことがあったし、被害はそれくらいなので、学校も近いし当たり前にそのファミレスに通っていた。

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その日は珍しく同時に何件もの紛失がその場で起きたので、

いよいよ店長によって客に対する簡易的な盗難被害の確認が行われた。

計10人。

店内にはその2倍程度の客しかいなかったし、一瞬で盗難事件が起きるにしては異様な数である。

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ひとりはキャンパスノート。

もうひとりは万年筆。

あとひとりはマスク。

さらにひとりは名刺入れ。

私だけ、アルバイトの給料ほぼ全額を含む財布だった。

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え、なんで?

めっちゃ不平等じゃない?

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店長に事情を聞いてみようとするけれど「いや、だってランダムじゃないですか霊って」と言う。

まぁその通りだけど、霊マジで何なの霊。ちょっとは手加減しろよ。

なんだよランダム霊って。っていうか霊なのはもう確定なのね。

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ノートはまぁだいたい200円くらい。

万年筆は安ければ数千円。

マスクなんて数十円だし、名刺ケースなんて幾らもしない。

私だけ、毎日アルバイトで働いて稼いだ10万円の入った財布。

え、何それ。

家賃どうすればいいんだよこの野郎。

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これは一種の霊ハラスメントである。

許せない。裁判沙汰にしてやる。

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あれこれ専門家を調べて、弁護士と霊能者を同時にファミレスに呼んだ。

弁護士は「犯人特定に至る証拠が無いと立件できない」と言うし、霊能者は「その霊は私には見えない」と言う。つまり刑事事件にも出来ないし、霊的な呪いも出来ない。

いったい私が何をした?

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という話をしていた彼女は、昨年の12月にこの世を去りました。

自殺、ということになっています。

まぁそれはいいとして。

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次回、case5。

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