長編11
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葬儀場

やっと暑さも落ち着いてきたかな

朝晩、少し涼しくなってきたかな

「おい、帰ってきてやったぞ、大変だ!」

珍しくオヤジが慌てて帰ってきた

3人娘がうれしそうにオヤジを迎えに行った

「じいちゃ!!!お帰り!!」

「おう!!」

3人娘と一緒にオヤジがリビングに来た

「あいつは?」

「おふくろなら台所だよ」

「そっか、おい!!!大変だぞ」

オヤジはおふくろを呼びに行った

「うるさいわね、あんたは!今、お昼の準備してるのよ」

「あのな・・町内会長の奥さんが亡くなったぞ」

「え!!!うそでしょ、え・・・だって・・・昨日、家の前で挨拶したのよ、いつもの奥さんだったよ」

「俺もびっくりだよ、昨日な町内会長が商店街の喫茶店にいたんだよ

珍しいなと思ってたら声をかけられてな」

「おやじさん、おひさしぶりですな、久しぶりに商店街の様子を見に来たんですよ、私も若いころはよく通っていましたからね」

「おやっさん、そいつな、俺の親戚だよ」

喫茶店のマスターが話しかけてきた

「そっか!」

「いとこ同士でな、たまに来るんだよ」

「しよっちゅう行っても迷惑だしな」

「おいおい・・・いつでも遊びに来いよ」

「・・・という感じでよ・・今日も商店街の喫茶店に行ったんだよ」

「おやじ・・・せめて声をかけていけよ」

「悪いぃな・・・」

「娘たちも商店街へ行きたいんだよ、お菓子やジュース買いたいし」

「パパの言う通り、じいちゃんとSおじさんが私たちのお菓子やジュース勝手に食べたり飲んだりしてるから私たちおやつが無いんだよ」

「うう・・・・」

「うう、じゃないぜ、オヤジ」

「悪い!・・・朝早く喫茶店へ行く途中で町内会長の家の周りが騒がしくて立ち寄ってきたんだよ、そしたらパトカーが来てよ・・・もう奥さん冷たくなっていたらしい・・俺、もう1度会長の所へ行くけどな、手伝いに行ってくる」

「あんた、お通夜の場所と日時が分かったら連絡するんだよ」

「おう!」

「さぁさ、お昼は出来たからみんなで食事しましょ、食べ終わったらお通夜へ行くからね、準備するんだよ」

急いで昼食は済ました

匠と仁は部活でいない

帰って来てから準備だな

「おっちーー!!!大変なんだぞ、楓ちゃん、葵ちゃん、カナちゃんたちなるべき地味な服を着るんだぞ、

着替えをママが手伝うんだぞ」

「うん!!!」

3人娘たちはS子に連れられて仏間で着替えをはじめた

カナちゃんママも早々に自分の部屋へ行き着替えを始めた

息子たちは夕方に帰ってきた

急いで着替えた

オヤジからの着信

「え・・と今夜の19:30分からお通夜で場所は・・・・おふくろに伝えておく」

急いでオヤジからの伝言を言った

「え・・・19:30・・・ちょっと間に合うかしらね・・・てっきり近所の葬儀会館ですると思ってた」

「奥さんの菩提寺で葬儀をすることになったと言ってた、ここから1時間半か・・・ギリギリかな」

オヤジが帰ってきた

「あんた、早く着替えな」

「わかってる」

メールでS君にも伝えた

後から来るとのこと

なんとか間に合った

「ふぅ・・・15分前か・・・間に合ったな」

急いでお寺へ入り手続きをして中に入った

親族や周りの家の人たちがたくさんいた

ちょっと疲れていたので椅子に座らせてもらった

オヤジとおふくろが町内会長の所へ行き挨拶をした

「会長も相当落ち込んでるな・・・わかる気はするぜ」

とオヤジも少し落ち込んでいた

部屋の中は20人程度

式がはじまった

楓がキョロキョロとし出した

なにか感じているのかな

「楓、どうした?」

「うん、パパ、人の声聞こえなかった?」

「え?人の声?どういうこと?」

「なんかね、小さな声が聞こえてたよ」

「全然聞こえなかったよ」

「そう・・・」

式も無事に終わった

来客たちは早々に帰って行った

残ったのは会長と娘さん

もう一人は奥さんの弟さん

オヤジとおふくろはまた会長の所へ行き挨拶をしていた

3人娘たちが会長の娘の所へ行ってしまった

「帰るよ、3人娘たち」と呼んだ

「帰りたくないよ、お姉ちゃんと一緒にいたいよ、パパ」

「ダメダメ、迷惑だろ、帰るよ」

「え!!!!そんな・・・」

「帰りたくないんだぞ!パパ!」

会長の娘さんは3人娘とよく遊んでくれた

今は高校生だけど中学生の時は会うと遊んでくれた

呼んでも離れない、困ったな

「あのぉ・・今夜、お泊りしていってはどうですか?」と会長の娘さんから言われた

「え・・いや・・ご迷惑になると思いますけれど」

「全然です、父と叔父と私だけの3人は寂しいです、ぜひ」

私一存で決められないのでおふくろを呼んだ

「どうしようかね・・・迷惑だろうし・・・」

「いいじゃねーかよ、娘さんが「いい」と言ってるんだ、泊まろうぜ」

「あんたさ、いつもなんだけどその図々しさなんとならないの?私ととデートする時も私が用事があっても強引に私を連れまわしてさ、本当に迷惑だったのよね、仕方ないわね、お言葉に甘えましょう」

「オヤジ、今ならストーカーで捕まるぞ」

「うるせーー!!」

「おふくろもきっぱりと断ればよかったじゃん」

「今はね、はっきりと断るよ、高校生の時だよ、あの怖い顔で断ったらなにをしでかすかわからなかったからね

「たしかに・・・あの顔で断ったら・・・ゾッとする」

「じいちゃんは怖くないよ」

「あははは、昔のことだよ、楓」

結局、お寺に泊まることになった

S君やF子が来た

「間に合わなかったか・・・」

「アニキたちどこだろ?」

S君からメールが来た

お寺の泊まる部屋を教えた

部屋数が少ないので俺とS君は車の中になった

会長の娘とF子のおしゃべりが止まらない

「F子姉ちゃん、C子姉ちゃんとよくしゃべってるんだよね」

「まぁ・・娘さんが小さいときにF子がよく遊んでいたからな」

「そうなんだ」

「今の楓たちとおなじだよ」

「うん!!!C子姉ちゃん、優しいもん」

「車の中か・・・」とS君は頭を上にあげた

「仕方ないよ、寝る部屋が無い」

「まぁね・・・」

「というか・・・お寺だから車の中にいたくないんだろ?」

「図星、そうだよ、家の中で寝たい、このシーンとしてるから嫌なんだよ」

「たしかにな・・静寂だもんな」

「パパたち、何してるの?」

3人娘たちが来た

「別に・・どうした?」

「ううん、パパたちが車の中で寝ると聞いて「かわいそう」だと思って来たよ」

「ありがとう」

「楓ちゃん、ありがとな」

「Sおじさん、おやつやジュース、この前も勝手にじいちゃんと一緒に飲んだり食べてたりしてたでしょ、許さないからね!」

「うわっ!きついな、楓ちゃん」

「ふん!!!」

「F子そっくり・・」

3人娘たちが来たおかげで車内は明るくなった

「パパ、トイレがしたいんだぞ」

「え・・トイレ・・・場所どこだろ?」

「とりあえずは葵を連れて・・・カナちゃんもか・・・トイレへ行ってくる」

さてと困った

はじめてのお寺だ

とりあえずはお寺の門の方から探した

うろうろと歩いて見つけた

本堂の横にあった

本堂の後ろは暗くてよくわからないが雑木林になっているのかな

「Sおじさん、パパたち遅いね」

「探してるんだよ」

「うん・・」

15分が過ぎた

「遅いな・・大丈夫かな、パパたち」

「見つからないのかな」

「ね、Sおじさん、今さっきから何か聞こえない?」

「え?何が?」

「こう、なんか、小さな声が聞こえる」

「いや、聞こえないけど」

「私だけかな」

「やっとこさ、着いた」

「遅かったな」

「ごめん、トイレ探してたんだけどな、なかなか見つからなかったんだよ」

「ね、パパ、小さな声聞こえない?」

「声、いや聞こえないけど」

「聞こえないんだ・・・」

「さっきから楓ちゃん、小さな声が聞こえてるらしい」

「え・・・」

「楓、場所というか方向はどこ?」

「うん、わかんない」

「あ、でも、あっちの方かな」

楓が指さしたのは本堂がある方向だ

この駐車場は本堂からして東側にある

駐車場からは見えない

駐車場の前は建物が建ってる

「なんかな・・・今夜は寝れそうもないな」

「同感、目が冴えてる」

「パパ、あたちは眠いんだぞ」

「葵とカナちゃんは寝た方がいいよ」

「うん、寝るんだぞ」

葵とカナちゃんはすぐに寝た

「私も眠れない・・・」

「なんかよ、静かすぎるんだよな」

「うん、和尚様のお寺は確かに静かだけどお寺の前は田んぼでカエルや虫の声が聞こえるからね

ここは山奥だからシーンとしてる」

「そうそう、和尚様の所はカエルや虫がよく鳴いてるから良く寝れるんだよ、なんだろうね」

「Fの言う通り、静かなんだよな、ほんと、山奥の寺は怖いんだよな」

「確かにな、あ・・・丑三つ時だな」

「うわあ・・丑三つ時・・・」

「パパ・・・なんか周り騒がしくなってきたような気がするけど」

「え?騒がしい?」

「うん、ザワザワと人の声がする」

「え?人の声?楓ちゃん」

「うん、Sおじさんは聞こえない?」

「聞こえないよ」

「パパも聞こえないよ、楓」

「私だけかな、人の気配もするし」

「人の気配まで・・・」

私は運転席側から外を見たが暗闇が広がっているだけ

全然感じない

「なんとなくなんだけど、本堂の方から人の声がする」

「本堂?もうこんな時間帯に人はいないと思うけどな」

「俺もそう思うよ、楓ちゃん、和尚様の所は24時間誰かがいるけどね」

「和尚様の所は山登りや瞑想などで深夜に来る人が多いからな」

「パパ、確かめたい」

「えええ???いやもうこんな時間だよ」

「うん、わかってる、でも気になるんだよ、パパ」

「葵やカナちゃんをどうしようか?」

「寝かせておこうよ、S君、S君はここにいて、楓と2人で行くよ」

「わかった、ここで待ってる、気をつけてな」

楓と2人で本堂の方へ確かめに車から出た

この建物の裏だから少し遠回りになる

懐中電灯を頼りに歩いた

街灯が無いので真っ暗闇

楓と手を繋ぎながら歩いた

「パパ、本当にシーンとしてるね、虫の声も聞こえないよ」

「うん、でもザワザワと人の声や気配は感じるの?」

「うん、感じてるよ、なんか強くなってきた感じ」

「そっか」

楓と話しているうちに本堂に着いた

「誰もいないよ、楓」

「うん・・・話声が止まったし気配が消えた」

「しばらく様子を見よう」

「うん」

およそ30分後

ガタン

祭壇の奥で何か音がした

「え?パパ、奥で何か音がしたよ」

「聞こえた・・・」

しばらく音がした方向を見ていた

「ね、パパ、奥見て」

「う・・・なんだ・・・」

スゥーと黒い影が立ち上がったように見えた

気のせいかな

そして、スゥーと消えた

「パパ、何、今の?」

「わからん」

「とりあえず、車の所へ戻ろうよ、パパ」

「そうだな」

急いでS君がいる駐車場へ戻った

S君に本堂での出来事を話しをした

「え・・人の影みたいなものが・・・」

「うん、Sおじさん」

「とりあえず明日、オヤジに話すわ」

「そうだな、とりあえずは車から出ない方がいい」

朝になった

車から出てオヤジの所へ行った

夜の本堂の話をした

「なに!何か得体のものが奥から見たのか・・・こりゃ・・何も起きなきゃいいけどな」

オヤジの予想は図星になった

もうえらいことになった

葬儀がはじまった

お坊さんの読経がはじまり粛々と式はすすんでいった

最後のお別れの時だ

はじめに娘さんが棺の中を覗いた

そのまま90度で後ろ向きに倒れた

もう会場はパニックになった

父親が娘の体を起こして何度も名前を呼んだ

口から泡を吹いていた

父親が不意に棺の中を覗いた

茫然とした顔のまま固まっていた

オヤジが慌てて壇上へ上がっていった

オヤジが棺の中を覗いた

「あかん・・・あかん・・・あかん」と何度も同じことを言った

「おい!オヤジ、何が「あかん」?」

「あかん・・・あかん・・・あかん」

私も壇上に上がって棺の中を覗いた

あまりにも驚いて座り込んでしまった

「あかん、あかんぞ、遺体がない!」と私は叫んでしまった

もう会場は一気に静まりかえってしまった

もう会場内はどうしたらいいのか状態となった

もう式、ところではない

遺体はどこだ?

父親が我に返って娘の名前を何度も呼んだ

「救急車を呼ぶ」と私は叫んで119番した

「おい、せがれ、警察を呼べ」とオヤジのでかい声

「わかった」

110番した

パトカーと救急車が聞こえてきた

すぐに娘さんを担架に乗せて病院へ

警察も何か起きたのかわからない様子だった

オヤジが「遺体が消えた」と説明をしてもそんなあほなという顔をしていた

警察も棺の中をのぞき確認をした

会場内もだいぶ落ち着き始めてきた

もう式はすぐに中止になった

事情聴取がはじまった

勿論全員アリバイはある

警察も困った

とりあえず鑑識が来ていろいろとサンプルをとった

すぐに警察は動いた

いつのまにか親族たちはいなくなっていた

わたしたち家族だけになっていた

「おいおい・・・他人だけが残っててどうするんだよ」

オヤジの嘆き

「もう帰ろ・・・」

その時だ

一人の警官が慌ててオヤジの所へ来た

「少し待ってください、今、その遺体が無くなった人の遺体が家で見つかったようです

ちょっと不審な点もありますので帰るのは待ってください」

念のために警察は家宅捜査をしたらしい

その時に遺体があったようだ

意味がわからん

遺体が家の中にあった?

そんな馬鹿な

昨日まできちんと棺の中にあった

何で家にあるんだ?

「あのぉ・・申し訳ないのですが昨日は確かに棺の中にあったんですよね?」

「もちろんだよ、親族も確認してるしよ、何で家にあるんだ、こっちが聞きたいぜ」

「どうなってるんだよ」とS君のびっくりした声

とりあえず私たちは家路についた

私とオヤジはそのまま会長宅へ行った

会長宅は警察官や野次馬で大騒ぎをしていた

警官に案内されて遺体を確認した

会長の奥さんだ

もう脳内は処理不能状態だ

なんであるんだ・・・

そうこうしてるうちに会長が帰ってきた

会長は奥さんの遺体を見て完全に固まった

「これは家内じゃない・・・誰だ?」

「え・・・奥さんだろ?」

「いや違う、確かによく似てはいるけどな、着てる服が違う」

確かに服が違う

横にいた警官は目が点になっていた

話が段々とややこしくなってきた

隣にいた警官はすぐに本部へ連絡をした

本部の方はもう完全に騒然としていた

とりあえずは私たちは家へ帰った

1時間後、会長から電話があった

「す、す、すいません・・・い、い、遺体が無くなりました」

「はい?え・・・無くなった?」

頭がまた混乱してきた

オヤジと私でまた会長宅へ

もう会長宅は警官が出たり入ったりしてて騒然としていた

警官の無線に連絡があったのか

「すいません、お寺の方で棺に遺体が現れたんだそうです」

「え??・・・現れた?」

もうどうなってるんだ

現れたり消えたりと

もう1度葬儀のやり直しになった

Concrete
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