中編3
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見つけたのは

これは私が小学生だったときの話だ。

私は友達の家でかくれんぼをすることになった。

メンバーは私を含めて四人。

鬼はユキオという子に決まった。

私はユキオが数をかぞえ終わる前に、急いで押入れの中に隠れた。

押入れには布団が仕舞われていたので、その中にもぐりこんで身を隠した。

ユキオが数を数え終わり、階段をのぼっていく音が聞こえた。

私が隠れていたのは一階なので、しめしめと思っていた。

しばらく息を潜めていると、二階からユキオの声が聞こえてきた。

「ショウタみーけっ」

私は不思議に思った。

ショウタとは、私のことだ。

誰かと勘違いしたのだと思っていると、別の声が聞こえてきた。

「みつかっちゃた」

聞き覚えのない声だった。

私はユキオの「なんだ、ショウタじゃなかったのか」という声がすぐに聞こえてくるだろうと思っていた。

しかし、ユキオはそのようなことを一向に言わず、見つけられた子とわいわい騒いでいるだけだった。

そして、いつまで経っても、見つけられた子が誰なのかを言わない。

私は気になって、すぐに押し入れから出ようとした。

しかし、なぜだか体が動かなくなっていることに気づいた。

私はとても怖くなった。

どれだけ体に力を入れてもぴくりとも動かない。

すぐに友達を呼ぼうとしたが、声を出すこともできなかった。

私は真っ暗な押入れの中で、外から聞こえてくる声に耳をすませることしかできなかった。

「カズキみーけっ」「タクヤみーけっ」

他の二人が見つかった。

あとは私一人だ。そう思っていると、ユキオが言った。

「よし、全員見つけたぞ」

私は耳を疑った。

ユキオは私のことを忘れている。

いや、ユキオだけじゃない。

カズキもタクヤも、私のことを忘れてしまっている。――そんなことがあり得るだろうか? 

私はまた怖くなった。

私以外の三人と、私の知らない誰かとが、楽しそうに次の鬼を決めている。

どうやら鬼はタクヤ決まったようだ。

タクヤが数をかぞえる声が聞こえてくる。

かぞえ終わると、ドタドタとタクヤが走り出す音が聞こえてきた。

それからは、何も聞こえなくなった。

私はまた体を動かそうとしたが、駄目だった。

そのとき、押入れの近くで足音がした。

ひた、ひた、と足音がゆっくりとこちらに近づいてくる。

鬼のタクヤだろうか。

それとも、新しく加わった子だろうか。

私は直感的に、新しく加わった子に見つかったらまずいと思った。

金縛りの原因がその子にあるような気がしたからだ。

布団の中に顔を引っ込めたかったが、体はやはり動かない。

足音が押し入れの前で止まった。

突然、ぱっと視界が明るくなった。

襖が開けられたのだ。

私はタクヤと目が合った。

「ショウタみーけっ」

タクヤが明るい声で言った。

その瞬間、私は自分の体が動かせることに気づき、押入れから飛び出した。

タクヤはそれを見て笑った。

私はすぐに、新しくかくれんぼに加わった子が誰なのか訊ねた。

しかし、タクヤはそんな子はいないと言った。

私はかくれんぼを中断させ、隠れていたユキオとカズキを呼び出した。

そして、先ほどと同じことを問いただしたが、二人もやはり、新しく加わった子などいないと言うのだった。

最初に鬼だったユキオはこうも言った。

「ショウタ」は確かに、寝室のベッドの下に隠れていた、と……。

私は一刻も早くこの家から逃げ出したくなり、三人が止めるのを無視して、自分の家に帰った。

以来、この家でかくれんぼをすることはなくなった。

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