中編5
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〜現代都市伝説〜ますく

あ〜今週は疲れたな・・・

はぁ・・とため息をつくと体内に溜まっていた疲れとともに白い息が吐き出てきた。

仕事に追われる日々だがなんとか今日のノルマを終えることが出来た。

そして明日は待ちに待った土曜日!

金曜日の仕事終わりの帰り道が一番の幸せな時間かもしれない。

そして頑張った自分に何か褒美をくれてやろうか!

と心の中で俺は今週頑張った自分を慰めていた。

帰りの駅までの道のりにキラキラと煌びやかに光りが灯されているネオン街。

俺に対して当てているスポットライトのようだ。

そのスポットライトに導かれ、俺は一歩。また一歩と歩みを進める。

テンションも上がり始め、身体がアルコールを欲しているのが分かる。

この自分の全身にアルコールをぶち込んでやりたい!

よし、酒だ!!!

意気揚々と俺はこの欲求を満たしてくれる店を探した。

焼き鳥、おでん、串カツと様々な暖簾が俺の視界を奪い去っていく。

寿司もいいな〜 あっ焼肉でビール片手にホルモンをたらふく食べてやろうか。

そして、迷いに迷ったあげく餃子専門店の暖簾を潜ることにした。

店はそれなりに繁盛しているが、カウンター席が空いてるので待つことなく座ることが出来た。

メニューには様々な衣装を着させられた餃子たちが映し出されていた。

チーズ餃子、海老餃子、キムチ餃子、生姜餃子

全部、全部もってこい!!!と言いたいところだが、俺の腹と財布が耐えきれなさそうなのでビールと上位5位までの餃子持ってきてもらうことにした。

店員がいそいそと俺のところにやってきた。

その手には黄金に光り輝いている液体があった。

俺はそれを受け取り一呼吸置いた。

よし、と呟きそして口をつけ喉に注ぎ込んだ。

脳みそが飛び散るような衝撃だ。

一週間ぶりのアルコールだ。

堪らん。

この瞬間こそまさに生きているということを実感する。

やがて次々にやってくる餃子たちを俺は胃へと放り投げていった。

そして俺は全てを食べ終え、至福のひと時はほんの一瞬で終わらせてしまった。

店を出てからもこの幸せの気分をもう少し味わいたく、ウロウロと散策することにした。

(場合によっては2軒目もありかな)

さっきはお腹も満たすことも目的だったが今回はゆっくりと酒を嗜みたいが中々ピンとくるお店がなかった。

ゆっくり飲むならば人通りが少ないところがいいかなと思い、今まで行ったことのない裏路地に入っていくことにした。

裏路地に入ると、表の通りとは打って変わって不気味なほど静まり返っていた。

表の店にはないディープな店も散見している。

調子に乗って裏に来てしまったけども一人だと危ないよな・・・

とちょっと後悔し始めていた。

もう少し先まで進んで目ぼしいお店がなかったら戻るか、と思い気持ち早めに歩いた。

すると俺の歩くスピードに合わせて後ろから足音がする。

ん・・?つけられてる?キャッチか?

いやキャッチならば、スピードは合わせないよな・・・

ちょっと歩く速度を上げるか。

と先ほどよりもペースアップをした。

後ろの足音も同じように早まった。

なんだ?どういうことだ。

振り向きたいという衝動に駆られたが、振り向いたらダメな気がする。

なんと表現したら良いかわからないけどもねっとりとした視線を感じる。

だがこのまま真っ直ぐ進むとL字型の路地にぶつかるようだ。

曲がった先が行き止まりならば終わりだ。

もしかしてそれを狙ってたのか。

なるようになれ!と思い俺はL字路を曲がった。

すると足音がついて来なくなった。

後ろを振り返ったが誰もいなかった。

よかった、気のせいだったか・・?

しかし依然と不安ではあるので、このまま進んで表通りに

出られる道を探すかと思い、そのまま歩いていくことにした。

全く人気がなく、街頭だけが薄暗く道を照らし出していた。

すると視界の右隅に電柱の下にいる人影が入ってきた。

10メートルほど先にいる人影に焦点を徐々に合わせていく。

その瞬間俺は全身に悪寒が走った。

ぞぞぞぞぞっと鳥肌が全身を駆け巡った。

そもそもあれは人・・・なのか?

真っ赤なドレスに対して浮かび上がる黒くて長い髪は顔を覆っており

マスクもしている為顔が全く見えない。

ただこれはホラー番組かなんかでよく見るタイプの造形をしている。

本能が語ってくる。逃げろ。

ただ恐怖で足が震えている。呼吸も荒くなってきた。

どうすればいいんだ。

するとヌッとそいつは道の真ん中に出てきた。

「・・・・・?」

何かを言っている。聞き取れない。

「・・・綺麗?」

綺麗?何が?何が綺麗なんだ?

「私・・・綺麗?」

おい、まじかよ。いつの都市伝説だよ。

なんだ、ドッキリか?あれだろ、どっかにカメラ隠れてる感じだろ。

動画投稿者がどこかに潜んでいる感じだろ?

俺はキョロキョロと周りを見回したが人気はない。

その赤いドレスは俺に向かって一歩踏み出した。

俺はそれに合わせて一歩下がった。

「綺麗・・・?」

まだ言うか。そうでもないとか答えると確か襲われるんだっけか。

「綺麗だと思います」

「ありがとう」

お礼言うんだっけか?

「じゃあこれでも・・・?」

きた、そうだ、このタイミングでマスクを取るのか。

俺の緊張の糸は最大限に張り詰めていた。

それがマスクに手をかけ、するりと取った。

絶句した。

その口元には髭の剃り残しなのか、青白く街頭に照らし出されていた。

そうだ、なんでこの格好で女性って認識出来なかったかわかった。

ガタイが良すぎるんだ。肩幅凄いし。

足もよく見るとすね毛がすごいな。

冷静にそいつを見ていると口を開いた。

「綺麗って言ってくれたよね?」

とまた一歩近づいてくる。

これは何が正解なんだ?俺は持てる知識を全て導入したが

この場の危機を乗り越える解は一つしかないことはとっくに分かっていた。

一瞬で後ろを向き、脱兎の如く逃げ出した。

とっくに酔いは覚めている。

やばいやばいやばいやばいと頭の中ではこの言葉しか出てこない。

「綺麗って言ったじゃな〜い」

と後ろからはあいつがどんどん距離を詰めてくる。

先程のL字路まだ辿り着きすぐさまに曲がった。

その先にまた人影があった。

「早く、早くこっちに逃げて!」

とそいつが叫んでいる。

言われた方向には地下へと続く階段があった。

確かにそこに逃げれば隠れられる。

ありがてぇ、助かった。

俺は勢いよくそのまま階段を駆け降りていった。

するとそこには様々な原色でライトアップされたお店の看板があった。

「カマんジュール」

俺は察したがもう遅かった。

扉があき、ぶっとい腕が俺を掴んだ。

目の前が真っ暗になった。

俺は裏路地にたたずんでいた。

街頭に照らし出された先に人影が見えた。

そいつが警戒しながらこちらに近づいてくる。

そんなに警戒しなくてもいいのに。

さてと

「私綺麗・・・?」

Concrete
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