中編3
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彼我の産声1

「昨日、〇〇町の民家に住む夫婦の遺体をこの家の長男が発見致しました。

警察は事件と事故の両面で捜査しています。

警察によりますと、遺体は目立った外傷がなく、死後数時間が経過したものだとのことです。

昨日、午前8時頃、〇〇町の一軒家からこの家に住む40代夫婦の遺体を長男が発見致しました。

朝がた両親が起きて来ないのを不審に思い、寝室に確認しに行くと両親が倒れているのを発見し、119番へ通報。

救急隊が駆けつけましたが既に息を引き取っている状態とのことでした。

警察は司法解剖を行い死因などを調べる方針です」

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これで合計57人となった。

あの時から既に3週間は経過したか。

お前たちの責任ではないと、善斗のおばあちゃんに言われたが、無理な話だ。

外では日に日に増えてくるヘリコプターのけたたましい羽音が鳴り響く。

LIVE中継でこの町の上空が映し出された。

見慣れた街並みがこんな風に全国に晒されるとは思いもよらなかった。

映像がスタジオへと切り替わり女性キャスターが引退した元敏腕刑事に神妙な顔つきで質問をする。

「鴨居さん。二週間前より起きている〇〇町の連続大量不審死とやはり関連性は見られるのでしょうか」

「今のところ、詳細が分からないので、下手なことは言えません」

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「ただ、状況から察するに例の事件に関連する蓋然性は非常に高いと思われてもおかしくないでしょう」

と物凄く遠回しに一連の事件との関連性を示唆した。

何か下手な発言をしてしまうと後々揚げ足を取られかねないので仕方がないか。

女性キャスターが「〇〇町連続大量不審死」と赤く大々的に書かれているボードの前へ移動をした。

『この後、事件の詳細へ』とテロップが出てコマーシャルに切り替わった。

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俺の住んでいるこの町内で連続大量不審死が起こっている。

事件の始まりとなった最初の遺体も同じように民家から発見をされた。

遺体には外傷は見られないものの窒息死に近い状態であると判断された。

その翌日には2件も同じような事件が起きた。

同じ内容が複数件あると人はどうしてもそこに関連性を見出そうとしてしまう。

警察はそれぞれの人間関係を洗い出すものの、3つの事件に関連してくる人物像を割り出せないまま、日に日に遺体の数が増えていった。

それに伴い、訪れてくる報道陣の数が増え、そこら中でインタビューされる風景を目にするようになっていった。

報道陣だけならまだしも、SNS発信者や動画再生の回数を稼ぎたい輩も多く訪れ落ち着かない日々を過ごした。

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20人を超え始めてからだろうか。

特殊な病原菌がこの町で発生しているという説が浮上したのは。

物々しい格好をした調査員たちが遺体の発見された民家を綿密に調べた。

また司法解剖も念入りに行ったが、何一つそれらしいものは発見出来なかったらしい。

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ただ一度こういった話が上がってしまったが故に徐々に報道陣の数が減っていった。

原因が掴めていないのは何よりも怖いし、仮に何かあった場合はその会社が世間から糾弾されかねない。

その代わりに大量のヘリコプターが常に上空を徘徊するようになった。

一方、個人で行っている配信者たちはこの事件の原因を掴むことに躍起になり泊まり込みをしながら撮影をしていたようだ。

しかし、ある有名な投稿者がホテルで遺体となって発見されて以来パタっと来なくなってしまった。

解決の糸口となるものは何も発見できず、警察の信頼も失墜していった。

町から出ていく者も現れているが主に経済的な理由でそれが出来ない人が殆どである。

取り残された多くの町民は極力外出は控えてはいたが、遺体は全て室内から見つかった。

不穏な空気がじわりじわりと町を覆っていった。

当面の間、殆どの学校では集団での登下校が行われ、一人にならないように

呼びかけられていた。

ただそれは全く意味がなかった。

なぜならば、亡くなった人全てに共通するのは子供を持つ親だったからだ。

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