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「うっ…まただ」
エレベーターに乗っていた少女は、おびえるように一人呟いた。
彼女の名前は咲月。
高校1年生。
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数か月前、家族とともにこのマンションに越してきた。
それも、ただのマンションではない。
昨年建ったばかり新築ほやほや、都心の50階建てのタワーマンションだ。
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都心の47階の高層階。
一変した暮らしにテンション最高潮の彼女だったが、ここ最近ある悩みを抱えていた。
それは1階から自分の階に上がる時、それも20階ほどを通過するときに感じる「視線」である。
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どこからか、自分を見ている誰かがいる。
その視線がどこから来るのか。
果たして何者なのか。
まったく見当もつかない。
少なくとも、人間の視線でないことは確かだ。
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「ねえねえママ、聞きたい事あるんだけど」
「どうしたの?」
「このマンションってなんか曰くとかある?あれ…実は昔お墓だったとかさ」
「え?何を急に言い出すの?」
「実はさ…」
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「なるほどね…でも気のせいじゃないの?何もいないんでしょ?」
「だと思うんだけど…毎日だからさ。さすがにストレスで」
「そう…でも古いマンションでもないし噂なんて聞いたこともないわよ」
「うーん…あ、そうだママ!」
「?」
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「今度、帰り一緒にエレベーターに乗って!一回でいいから!」
「はあ?あなた高一でしょ?いい年して何言ってんの?」
「お願いっ!毎日毎日怖くてたまんないの!ママがいてくれたらマジ心強いから!」
「しょうがないな…わかったわよ」
「ありがとうママ!大好き!」
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そして翌日。
約束通り、咲月はママと一緒にエレベーターに乗った。
いつも通り、20階ほどを通過する時…。
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「そう、ここ…ここで誰かに見られている気がするの」
「…」
「でも、ママがいてくれるから怖くない!ありがとう!」
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「…」
「マ…マ…?」
母はずっと無言で、咲月の問いかけに答えることはない。
そしてしばらくして、母はゆっくりと咲月を見て…ようやく口を開いてこう言った。
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「あなたにはまだ…私があなたのお母さんに見えるの?」
作者J1
怪談の季節になってきましたね。
久々の投稿です。短編なのでサクッとお楽しみください…