学校の帰り道、突然眼の前に黒猫が飛び出して来た。
「やだ!!黒猫!!」
隣を歩いていた明美が真っ青な顔してそう叫ぶ。
「どうしよう…黒猫に横切られると不吉なことが起きるって、ママが言ってた」
顔面蒼白の明美を見て、私はつい吹き出しそうになった。
今時そんな迷信を本気で信じてるなんて明美もまだまだ子どもだな。
私は可笑しくなって、つい怯える友人に適当な嘘をついてみてしまった。
「確か黒猫に横切られたら、すぐに追いかけて捕まえれば助かるって昔、本で読んだことがあるよ」
勿論、全部出鱈目である。
しかし、そんな私の嘘を真に受けた明美は一目散に黒猫を追いかけて行くと、必死なって捕まえようと奮闘している。
私はただ可笑しくて、一人遠くから眺めていると明美が踏切りの遮断器を潜り始めてしまった。
「危ない!!」
次の瞬間、明美は快速列車に撥ねられて、勢いよく吹き飛ばされてしまった。
「明美っっ!!」
すぐさま救急車が飛んでやって来たが、結局明美は助からなかった。
それどころか、バラバラになった明美の頭部だけがどうしても見つからない。
翌日、私は花束を持って例の踏切りへ向かうと、途中、眼の前を黒猫が横切った。
「この嘘つきっ!!」
それは紛れもなく明美の顔をした黒猫であった。了
作者トワイライトタウン