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中編4
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深夜喫茶「徘徊者」

 俺は昔、24時間営業の喫茶店でバイトしてたんだが、その店では本当にいろんな事があったんだ。

数え切れないくらいの……その中でも特に、店の常連客でもある、通称メロンちゃん(バイト仲間が勝手につけたあだ名)という女の子が絡むと、本当に怖い体験をする事が多々あった。

今からその一部を話したいと思う。良ければ最後まで付き合ってくれ。

あれは、蒸し暑さが一挙に霧散するような豪快な雨が降る夜だった。

途切れることなく落ちてくる雨に、俺は深いため息をついた。

暇、ではない。こんな大雨が降ると、決まって店は避難所と化す。

「すみませーん」

「あ、はい」

「注文いいですか?」

「はい、少々お待ちを」

「ね~サンドイッチまだ~?」

「はいただいま」

「トイレどっち~?」

「そこを突き当たって右です」

と、まあこんな感じだ。しかも深夜帯は2オペ。深夜だというの昼間なみの忙しさだ。

ため息の一つや二つ、出るのは当たり前。

「メロンソーダ……」

俺の背後から、聞きなれた声が上がった。

振り返ると、そこにはゆるふわな髪をし、ヘッドフォンを首にぶら下げた、一人の少女が立っていた。

この店の常連客だ。いつも決まった時間、決まった席につき、必ずメロンソーダを注文する謎の美少女。

メロンソーダばかり注文するので、バイト仲間の間では、通称メロンちゃんと呼ばれている。

「はい……少々お待ちを」

正直に言う。俺はメロンちゃんが苦手だ。なぜかって?

メロンちゃんはいわゆる見える人で、関わるとろくでもない事が多いからだ。

そのせいで俺はこの店で何度も怖い目にあってきた。

が、それはそれ、メロンちゃんは客だ。

俺の采配で無視を決め込むわけにはいかない。

俺はしぶしぶ返事を返すと、厨房でメロンソーダを受け取り、メロンちゃんがいるテーブルへと向った。

ふと、テーブルの仕切りの向こう側に、何かが動くのが見えた。

子供だ。正確には、仕切りから見える、子供の頭。

子供?客に子供連れなんていたか?いや、記憶に無い。

軽く頭を傾げ、俺は子供の頭を目で追った。すすすっと、頭が動く。髪の長さからして女の子のようだが……気になる。俺はメロンソーダを一旦カウンターに置くと、窓側の席に回りこんだ。

丁度子供の進む前方に回りこむ。が、

通路側に座っていた男性客が立ち上がり、こちらに向ってきた。しかも縦にも横にもでかい。

無駄にでかいぞこの男。

前が見えない。向ってきた男が俺を邪魔そうに見るため、俺は体を横にし通路を譲った。

直ぐに通路の方を振り返るが、いない。

あれ?どこだ?

頭だけを左右に振ると、今度はカウンター側の仕切りに、女の子の頭部が見えた。

いた。っていうかいつの間に反対側に?こうなると意地だ。

俺は、窓側の通路を素早く移動し、カウンター側の通路へと回り込もうとした、その時だ、

「やめた方がいい」

声と同時に、俺は急に右手首を掴まれた。

振り返ると、そこにはメロンちゃんがいた。相変わらずの無表情な顔でこちらをジッと見ている。

やめた方がいい?何の事を言ってるんだと思ったが、直ぐにそれが、俺が女の子を追い掛け回している事だと悟った。何だか気恥ずかしくなる俺。しかも注文をまたせたままだと気がつき、俺は急いでメロンちゃんに頭を下げた。

「す、すみません、すぐに持ってきます」

掴まれた手を振りほどき厨房へと急いで向う。が、また掴まれた。

何なんだ一体。

俺はちょっとムッとしながらも振り返り、

「すみません今すぐお持ちしますから」

と言って、再びメロンちゃんの手を振りほどこうとした。しかし、メロンちゃんは俺の手首を離すまいと、今度はしっかりと掴んでくる。

「あの、離して、」

俺がそこまで言いかけた時だった。

「逃げて、見つかった」

「はあ?」

訳が分からない。何に見つかったと言うんだ。

俺が困惑していると、メロンちゃんはめいっぱい背伸びをし、俺の耳に口を近づけ、囁くような声で言った。

「さっきから追い回してるみたいだけど、あれ、頭だけですよ。子供の生首が浮遊してる。自分に気づく人を探してるみたい」

「なっ……!?」

頭から冷水を掛けられたかのように、全身の血が凍りつく。同時に背後から、

「ヒヒ……」

と、地の底を這うような、不気味な声が響いた。

引きつり強張った顔で僅かに振り向く、仕切りから、少女の顔が上半分だけ飛び出し、こちらを凝視していた。

「逃げて……」

メロンちゃんが言うのと同時に、俺は逃げた、ダッシュで逃げた。

店を飛び出し。着の身着のままで、駐車場に止めてあったバイクにまたがると、俺は無我夢中で店を後にした。

翌日、俺は朝出勤してきた店長に、大目玉を食らったのは言うまでも無い。

しかもその日の夜、助けたお礼と言われ、メロンちゃんにメロンソーダを奢るはめになった。

ちなみに、あの現象はしばらく続いた。見つからないように仕事をし、見つかったら逃げるの繰り返し。

そのたんびに俺は、メロンソーダを奢るはめになった。

メロンちゃん曰く、あの時店の中にいた客の誰かが、あの女の子の体を持っているみたいと言っていたが、

正直その時の俺にはどうでもいい事だった。

とりあえず言える事は一つ、

だから言ったんだ。メロンちゃんに関わると、ろくでもないことが起こると……

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ネタバレ注意
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深夜食堂にはまり、
深夜喫茶にはまる時がきた。

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本が出たら買っちゃうくらい
お気に入りのシリーズです。

最近あまり怖話に来なかったのですが、
またちょくちょくチェックしに来なきゃ!
と思いました。(笑)
コオリノさんのお話は本当に面白いです。

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京介さま>感想、ありがとうございます。

シンプル、そうですね。

あまり長編にこだわらず、起こった出来事を淡々と話す回もあっていいかなと思いましたので。

メロンちゃん可愛いですか?私は不気味でしょうがありません(汗)

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待ってました!
シンプルだけど怖い。それになんだかメロンちゃんが可愛いw

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