バイト帰りのこと。
喉が乾いたから、道端にある自販機でお茶買ってたら後ろから声掛けられた。
「おにいさん」
振り向く。女の子が立ってた。小学3年生くらいか?可愛い顔をしてはいるが、顔は無表情だし、口調もぶっきらぼう。まっすぐ俺を見つめている。
「おにいさんは社会人ですか?」
いきなりそんなことを聞いてきた。何だこの子…。第一、こんな時間に何してんだよ。
「おにいさんは会社員ですか?」
また聞いてきた。違うよと答えると、「じゃあ学生さんなんですね」と言われる。確かに現役大学生の
身分なので頷いた。
「おにいさん。お母さんが呼んでます」
「は?お母さん?」
「はい。お母さんが誰でもいいから連れてきてって言いました」
「…お母さんって君の?」
「はい。こっちです」
女の子はスタスタと歩き出した。俺は一瞬迷ったが、女の子のあとに続いて歩き出した。もしかしたら急病とかで動けないで困ってるのかもしれないし。
女の子は公園に入っていった。そしてジャングルジムの前に立つと、俺のほうを見た。
「お母さんです」
いた…確かにいた。女の子の母親らしき女の人がいた。
彼女はジャングルジムで首を吊っていた。眼球がギョロリと飛び出し、だらしなく開いた口からはダラリと舌が垂れ下がり、涎が延びていた。
彼女は俺に気付いたのか、ロープをギチギチいわせながら、首だけをこちらに向けた。浅黒く変色した唇がゆっくりと動く。
「こ…この子……、この子が…ご…めいわ…く、く、おかけしまし……た…」
悪夢のようだった。
作者まめのすけ。