これは知り合いの女性の悲劇を語った話です。
当時、彼女はキャバ嬢をして生活設計を立てていました。美人でスタイルも良く、話題も豊富な彼女は、客層からそこそこの人気を誇っていたそうです。
ある日、彼女は1人の客からアンティーク製の人形をプレゼントされました。
白い肌、金髪の巻き毛、澄んだ硝子玉のような青い瞳、ビロードの衣装…どこをとっても美しく、見ていて惚れ惚れするような、そんな印象を受けたと言っていました。
そしてその時から、彼女の運命は大きく変わっていったのでした…。
あの人形をプレゼントされてからというもの、すっかりアンティーク製の人形に心奪われてしまった彼女は、自分でもアンティークショップに出向いて人形を買い漁るようになったのです。
初めは玄関や寝室に飾って愛でていましたが、その内もっともっと欲しくなったのです。
食費を切り詰め、服や鞄、アクセサリーなども売り払い、集まったお金で人形を買い漁り始めました。
それも手当たり次第に…何かに取り憑かれているのではと危惧するくらい、彼女は人形に執着心を見せていました。
その内、仕事にも来なくなりました。何日も無断欠勤が続いたので、流石におかしいとキャバ嬢仲間が彼女のマンションを尋ねてきました。
インターホンを鳴らし、しばらく待ってみるも応答なし。試しにとドアノブに手を掛けると鍵は掛かっていませんでした。
玄関を一目見たキャバ嬢仲間は「あっ」と声を上げました。そこにはアンティーク製の人形がゴロゴロと乱雑に敷き詰められていたからです。廊下や部屋の中もまた同様、足の踏み場もないくらいに人形が転がっていました。
そしてその人形に埋もれるように、部屋の主である彼女はいました。痩せ細り、皮膚は茶色く変化し、頬は窪んで、まるでミイラさながらのような出で立ちで事切れていました。死因は栄養失調…。
何かに取り憑かれた人間、何かを異様に執着する人間…怪異なんかより、よほど恐ろしい。
人間が、1番、怖い。
作者まめのすけ。