残業していたら、帰るのがすっかり遅くなってしまった。腕時計で確認したら、もう12時近かったと思う。
マンションの1階でエレベーターを待つ。数分の後、エレベーターが到着し、扉が開いた。
「あら…?」
こんなに遅い時間帯だというのに、エレベーターはほぼ満員状態だった。老人から小学生くらいの子、中年世代、若い人…年代は様々だ。
呆気に取られていると、手前にいた女性が言った。
「このエレベーターは地下に行きますよ」
「地下…ですか?」
「乗るんですか。乗らないんですか」
「…混んでるみたいですし。次のに乗ります」
エレベーターの扉はゆっくり閉まり、ガコンと音を立てて起動した。しばらく体の震えが止まらなかった。
このマンションに、地下はない。
作者まめのすけ。