あれは…私が小学2年生の時のことです。
保育園に通ってた妹を迎えに行くため、母の運転する車に乗り込みました。
保育園に着くと、母は私に「ここで待ってて」と言い残し、1人車外に出て行きました。
私が後部座席で母と妹を待っていると、車の窓をコンコンと叩く音が聞こえてきました。そちらを見ると、1人の女性が立っていました。
随分前のことなので、顔立ちはハッキリと思い出せません。ただ、妙に生々しい真っ赤な唇だけは酷く印象的だったことだけは覚えています。
彼女は私をジッと見つめ、話し掛けてきました。
「お嬢ちゃん、お名前は?」
「○○です」
「○○ちゃん。○○ちゃんのこと食べてもいい?」
「え…?」
食べてもいいって…私を?
ポカンとしていると、彼女は更に畳み掛けてきました。
「○○ちゃん。食べてもいい?」
「だ…だめ…」
「○○ちゃん。食べてもいい?」
「だ、だめ。だめです…」
「○○ちゃん。食べてもいい?」
「だめ…だめ…。食べちゃだめ」
「○○ちゃん。食べてもいい?」
「○○ちゃん。食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べてもいい?食べたい。食べてもいい?」
何度となくリピートされる質問に耐えられなくなり、私はとうとう泣き出してしまいました。
「○○ちゃん。食べてもいい?」
それでも彼女は質問することを止めません。あまりの恐怖に、私はとうとう突っ伏してしまいました。
気付いた時には、戻ってきた母に揺り起こされていました。私は母にこの話をしましたが、夢でも見ていたのだろうと信じてくれませんでした。
それからというもの、私は1人で車に残ることが出来なくなりました。
またあの女性が来て尋ねられるのではないかと怖いのです。「○○ちゃん。食べてもいい?」って。
作者まめのすけ。