ある日、携帯に着信があった。知らない番号だったが、とりあえず出てみると「鈴木さん?鈴木さんでしょ?」と、すっごく嬉しそうに言われた。声から察するに中年のおばさんのようだ。
言っておくが、俺の苗字は鈴木ではない。言うまでもないが、名前も鈴木ではない。要は間違い電話。
俺は自身が鈴木じゃないと言ったんだが、おばさんは尚も食い下がってくる。
「またまたぁ。そんなこと言っちゃってぇ。鈴木さんでしょ?ふざけないでよ」
いや、ふざけてんのはそっちだろ。
番号確認してから掛けやがれ。
心の中では散々悪態をつきつつ。口調は至って穏やかに「俺は鈴木さんではありませんよ」と反論すること10分。
おばさんが納得しないことに苛々していた俺は、つい口調を荒げてしまった。
「鈴木じゃねぇっつってんだろ!」
するとおばさんの口調がガラリと一変。まるで男みたいな低い声になったかと思うと、ボソリと呟く。
「知ってるよ。だって加藤だもんね」
それだけ言って電話は切れた。
因みに俺の苗字は「加藤」。
作者まめのすけ。