これは数十年前、実際に起きたとされている話。
会社員であるMさんが帰宅すると、妻のAさんが体中をメッタ刺しにされて倒れていた。Aさんの傍にはSという女性が毒を飲み、倒れていたという。
Mさん、Aさん、そしてSは元々同じ会社に勤めていた。それなりに仲も良かった3人であったが、ある出来事がきっかけで関係がこじれてしまった。
当時、恋人同士だったMさんとAさんな社内婚約が発表されてからというもの、Sは奇行に走るようになった。
「結婚は許さない。ウラム」と書き殴ったメモをAさんのデスクに繰り返し置き、上司からも注意されたが、止めようとはしなかった。また、「結婚するなら赤い砂時計に殺人ナイフ!」と書かれた手紙をAさんに送りつけたという。
しかしMさんとAさんは結婚。それに逆上したSは、Mさんが会社に行っている時間帯を狙い、自宅に侵入。Aさんを西洋ナイフでメッタ刺しにした後、自らも毒を飲み、自殺を図ったのである。
Sの鞄からは、気味の悪い絵が1枚入っていた。
暗く沈む山をバックに、片腕が切り落とされたフランス人形、紫色の蝶、赤い砂時計、西洋ナイフが描かれていた。
これは日本でいう「丑の刻参り」である。フランス人形を殺したい相手に見立て、針などを突き刺し、呪いの念を送るのである。
Aさんは出血多量で亡くなったが、Sは何とか命を取り留めた。しかし、意識が朦朧としており、時々譫言を言っては魘されているらしい。
「助けて…フランス人形が追い掛けてくる。捕まったら殺される…怖い怖い!赤い…赤い赤い赤い赤い赤い砂時計!殺人ナイフが飛んできた!怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!殺人ナイフ!こわいよぉ…こわい…」
作者まめのすけ。