浩輔君は深夜のドライブが好きだ。その日もアパートに遊びに来ていた数人の友人らとドライブに出掛けた。気分が高揚していたためか、今日は思い切って遠出してみようということになり、皆もそれに承知した。
行き先は特に決めていなかったが、雑談を交わしながらドライブしていたため、いつしか人気のない道を走っていた。辺りは建物もなく、膝丈ほども伸びた雑草が左右に生い茂る寂しい道だったという。
時計を確認すると、既に午前2時。そろそろ帰ろうかと思った矢先、浩輔君は道端にしゃがんでいる人影を見つけた。
「おい、誰かいるぞ」
車を停め、車内から人影を確かめる。雑談に花を咲かせていた仲間達もピタリと口を閉じ、こぞって窓の外に注目した。
車のヘッドライトが映し出したのは、白い肌をした女性ーーーいや、まだ華奢な少女の後ろ姿だった。道端にしゃがみ込み、必死に手を動かしている。
「は、裸だ!あの子、裸だよ。服着てねーぞ!」
仲間の1人が興奮した声を上げる。なるほど、確かにその少女は衣服の類は全く身に付けてはいなかった。下着さえも付けておらず、文字通り「生まれたまま」の姿である。
その少女は車の来訪に気付いたらしく、パッとこちらを振り返った。ライトが眩しいのだろう、目を細めている。
色白で可愛らしい顔をしているようだったが、何故か口の周りが泥だらけだった。
「何だ、あの子…。どうしてこんな所に」
「暴漢に襲われて、服を根こそぎかっさらわれたとか?」
「とにかく、こんな場所に1人きりにしたら可哀想だ。車に乗せてやろうよ」
「そうだな。風邪でも引いたら大変だし」
彼等は心配半分下心半分で少女に声を掛けることにした。しかし、あまり大勢で行くと少女が怯えるかもしれないので、代表して浩輔君が行くことにした。
車から降り、そっと少女に歩み寄る。少女は目を細めたまま、ジッと浩輔君を凝視しーーースンスンと匂いを嗅ぐような仕草をした。
「どうしたの、こんな所で。大丈夫?」
出来るだけ警戒させないように、やんわりとした口調で問い掛ける。しかし少女は何の反応も見せない。どころか、裸体を恥じらう様子もない。
何か変だな…。そう思い、よくよく少女の顔を見る。可愛らしい顔は口の周りにこびりついた泥で台無しだ。
「ん!?」
それは泥ではなかった。赤茶色っぽいそれは、どう見ても血だった。
浩輔君が思わず息を呑むと、少女は「うおおぅ」と低い声で唸り、四つん這いになって走り去っていった。それも凄いスピードで。
少女がしゃがみ込んでいた場所には、野良犬の死骸が転がっていた。野良犬は腹の中の臓器がゴッソリなくなっていたという。
作者まめのすけ。