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中編4
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押入れの中

これはつい先日まで私が住んでいた借り屋での出来事だ。

最寄り駅まで徒歩7分、自転車なら4分といった場所にその物件はあった。そんな立地にも関わらず家賃は激安だった。かといってそこまでボロいわけでもなく、水周りは揃っていた。

ではなぜ安いのか。

俗にいう訳あり物件というやつだ。

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だがそういうものを全く信じていない私にとってはただの好都合な物件に過ぎなかった。すぐに手続きをした。

大家さんは気さくな人だったが笑い方が特徴的だった。話し好きなようで、少し世間話もできた。が、結局訳ありの「ワケ」の部分は聞かずじまいで、初の一人暮らしが始まった。

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そして入居から2日が経ち、新居にも慣れ始めた頃だった。夏真っ盛りでいつものように蒸し暑い夜である。

翌日の支度の為、服を出そうと押入れを開けた。

「あー、今日もあっついなーもう」

などと多少乱暴に押入れを開ける。

突如、ゾクリとした感覚がやってきた。中には自宅から持ってきた段ボールのみがあった。

どうやら押入れの中にあった冷気が外に出たようだ。

その一瞬の出来事を私は気にも止めなかった

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それからというもの、押入れを開けるたびに寒気を感じた。だが、考えてみれば当然で、中は日が入らない。とすると、外の空気が暑いからそのギャップが際立って感じられるだけだ。

そう考えていた。

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入居から一週間ほど過ぎたある日の夜。

その日も私は押入れを開けた。いつもの冷気を感じながら、もう段ボールから出した衣類を選んでいた。その日は、何かいつもと違うような、そんな微かな違和感を感じた。

しかしその日は何も無かった。

その日 は。

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翌日、私は違和感の正体に気付いた。結論からいうと押入れの奥側の壁、何枚かの板が形成しているそれのうち、端の一枚が若干浮いていたのだ。

幸い明日は休日だから、大家さんに言ってみよう、そう思った。

洗濯物を畳んで歯を磨き、布団に横になった。

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蒸し暑い、ジメジメした夜だった。何度も寝返りを打つも、なかなか寝付けない。

なんとかして眠ろうと、とりあえずまぶたを閉じてジッとしてみることにした。

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しばらくして、ようやくまどろみ始めた時だった。

ギ...ギギ......ギィ...

木の軋むような音が聞こえる。

風でも吹いているんだろう、木造だから無理はない。半眠りの頭でそんなことを考えていると、直ぐに音は止んだ。

だがー

ガコッ!っと一際大きい音。

その何かが外れる様な音に、私の意識は一瞬ではっきりしたものになった。

体を起こして、座った状態で辺りを見回す。

(さすがに今のは風じゃないだろ...?なんだ、なにが起きた?)

「小玉」の電球に薄明るく照らされた室内は、しかし昼間となんら変化はなかった。

(おかしいな。近くで聞こえた気がしたんだが...)

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もう一度辺りを見回すも、やはり異常はない。

そこでふと、布団の横の押入れに目がいった。

(ああ...、押入れの中で物が落ちたのか)

そう納得した私は、確認すべく押入れに手をかけ、横にあけーー

ーようとした。しかし少しだけ開けたところで硬直した。

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バッチリと、押入れの中にいた「モノ」と目が合ってしまった。

薄暗い部屋の中、しかも少ししか開けていない押入れだったが、確かに目が合った、そう確信した。

いつもの数倍の冷気が私の心臓を凍らせた。

ソレは少しだけ首を傾げた不自然なポーズのまま、目を見開いてこっちを見ている女だった。

あまりの恐怖に、息すら出来なかった気がした。

ただただ怖い、そんな感じだ。

動けずにいる私を見て、ヤツはニヤリと笑うとカカカカカカと奇妙な声をもらした。

かと思うとゆっくりとこっちに近づいてきてー

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そこで私の記憶は途切れている。

気を失ってしまったらしい。一瞬夢かとも思ったが、布団から大きく離れたところに転がっていたのは、寝相のいい私にはあり得ないことだった。

幽霊などを信じていない私だったが、その日のうちに退居することを決めた。

荷物をまとめて、大家さんに話をつけにいった。

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「おやぁ、残念。あー、家賃はいた分だけでええよ」

「すいません、ありがとうございました」

家賃を払うと、そこを出た。

途中まで見送りに来てくれた大家さんに礼を行って、少し先の角を曲がる。

そのとき、大家さんがニコニコと手を振っているのがチラリと見えた。

そして同時に、カカカカカッという乾いた笑い声が聞こえた。

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小魂さん、コメントありがとうございます
そうですね、その解釈は合っております
しかしそうではない捉え方もございます
まどろっこしい言い方で恐縮ですが、そうとしか言えません笑

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大家さんが覗いてたのかな…?

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死んさん、コメントありがとうございます
思わず笑ってしまいました笑
うーん、それはそれでトラウマですね

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その正体はアシュラマンだな

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