六回目の投稿です。
僕はアルビノと呼ばれる先天的な病気です。
体毛が白金であり、肌が白く目は淡い赤色です。
それ以外は普通の人と何も変わりません。
アルビノだからという訳ではないと思いますが、物心つく頃から霊的なものを見ることや感じることができ、また簡単な除霊や霊的なものを落とすことができます。
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あれは高校二年の夏休みのことだった。
体力を付けたいのと、お金がほしかった僕は電気製品配送のアルバイトをしていた。そのバイト先はほぼ全員が強面であるが、僕のことはかわいがってくれていた。
その日は社員の笹木さんという人と配達に出ることになった。笹木さんというのは、僕より十歳年上でパンチパーマで顔には複数傷があり、今は優しいが昔は『暴れ馬』と呼ばれていた喧嘩大好きな人だ。
配達も順調に進み、残すは70型のテレビだけとなった。僕が地図を見てナビをして、到着したのは豪邸だった。豪邸と言ってもだいぶ古い。門は錆びていて、建物もかなり劣化している様子だった。
インターホンを押しても反応がなかったので、勝手に門を開け玄関まで行き玄関をノックした。
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「〇〇電気の笹木でーす!」見た目からは想像ができない程の優しい声で叫んだ。
「ガチャ」
ドアがゆっくり開く。僕たちを出迎えてくれたのは、白髪の70歳くらいの女性だった。
「どうぞお上がりください。」
そう言って僕たちを中に案内した。女性が前を歩いていると後ろから足音が聞こえ、僕たちの横を男の子が通り過ぎた。その子は女性の手を握り、僕たちの方を振り返る。
「あ、人じゃない」僕は男の子が幽霊であるとすぐに分かった。試しに笹木さんに声を掛ける。
「笹木さん、前にいる子供見えますか?」すると笹木さんは
「あ?何言ってんだ!仕事中なんだからだまってろ」
笹木さんは何故だか機嫌が悪かったが、見えていないみたいだった。
50畳ほどはあるだろうリビングに着くと、奥に大きなテレビが見えた。女性はそのテレビを指差し、
「これを持って行っておくれ」
そう言うとテレビの上の埃を「フゥッ」と吹いた。かなり年季の入ったテレビであった。笹木さんは手際よくテレビを少しずらし、配線の確認をしていた。
その時さっきの子供が笹木さんの腕を掴んだ。僕は子供の霊に何もされなければいいなと思いながら見守った。
すると笹木さんは勢いよく腕を振り払った。何か感じているのではと思ったが、
「あー、虫が飛んでらー!」と言っていた。
配線をまとめ、僕と笹木さんは古いテレビを持ち上げ、外に運ぼうとした。僕の腕はプルプル震えてしまい、落としそうになるのを必死で耐えながら下を見た。カーペットから男の子の顔だけが出ていて笹木さんを睨んでいるのである。僕は嫌な予感がした。そしてその予感は的中した。
「グニ」
笹木さんは男の子の顔を踏みつぶした。それはわざとであったのかは定かではないが、踏まれた瞬間男の子の顔は苦悶の表情をしていた。
テレビをトラックの荷台に積み、新しいテレビを家に運ぶ時には男の子の姿は見えなかった。
作業が終わり、事業所へと車を走らせた。その車の中で、
「笹木さん、さっき何にも感じなかったですか?」
と聞くと、
「あ?感じるも何も、目に見えるものしか俺は信じない主義なんだよ!」と訳の分からない返事をしてきたため、僕は黙ってしまった。
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事業所へ着くと、笹木さんはさっきの古いテレビを事業所の休憩室に持って行くと言いだした。最後の力を振り絞り休憩室までテレビを持って行った。
休憩室には5、6人いて、煙草を吸いながら雑談していた。テレビを設置し、電源を入れるとテレビは綺麗に映った。笹木さんは事務所の方へ行ってしまった。
ジュースを飲みながら僕も雑談していると、テレビが急に砂嵐になった。みんな電波のせいだろと、後ろの配線を見たがしっかり線は繋がっている。リモコンをカチカチいじっていると、
「コロスコロスコロスコロスコロスコロス」
と子供の声が聞こえ、テレビに映っていた砂嵐は徐々に男の子の顔の形が浮かび上がってきていた。そこにいた全員が悲鳴を上げた。僕たちは怖くてその場から動けずにいた。その間にも子供の声はどんどん大きくなっていく。
「ガチャ」
誰か休憩室に入ってきた。大きな足音、それは笹木さんだった。
「おめーらいちいちうるせーんだよ!」
そう叫びテレビに近付いた。
近付いたと思ったら、デカい拳を高く上げ、
「ドカン!ドカン!ドカン!」
三発ほどテレビの上に鉄拳をお見舞いしていた。その瞬間にテレビはさっきまでのチャンネルを映し出した。もう変な声も聞こえない。
「テレビなんかはぶん殴れば直るんだよ!」
そう言って事務所の方へ戻っていった。みんなその後は黙ってテレビを観ていた。
遠くの方で、男の子の泣き声が聞こえたが、すぐに聞こえなくなった。
作者龍悟
はっきり言ってあの人は野獣です。
あまり怖くありませんが、読んでいただければと思います。