これは、僕が高校生になった時の話だ。
《蛟の夢》の時、僕にミズチ様が男神だと教え、僕の希望を打ち砕いた奴がいた。と、書いたはず。
そいつとの出会いの話である。
・・・こういう怖い話が好きなグループって、何で3人組が多いのだろう?
まぁ、腐れ縁だ。腐れ縁。
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その年僕等は、高校生になった。
頭のレベルが一緒だったので、隣には薄塩もいる。
「高校だな。」
「高校だなー。」
当たり前の事だ。
「クラス、同じだといいな。」
「ああ。」
そんな感じで、僕等の高校生活は始まった。
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だがしかし!
世の中はそう甘くはなかった。
クラスは同じではなかった。
担任も禿げている。・・・うん。これは関係ないか。
まあ、仕方ないな。
仕方がな・・・
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ツンツンッ
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背中をつつかれて振り向くと、斜め後ろの男子が、身を乗り出して僕の背中をつついていた。
「名前、なんてーの? 」
「・・・・・・え?」
「だから名前!あ、俺は▲▲な!」
「・・・◯◯◯◯。」
そいつ--▲▲は、何故か吹き出した。
「いや、フルネームかよwww」
「・・・おかしいですか?」
「敬語だしwwww」
あ、僕は初対面の相手には基本敬語だ。
「ごめん・・・?」
「謝ってるしwwwww」
・・・なんか、苛つく奴だな。
いや、僕がコミュ障なだけかもしれないけど。
「ま、いーや。◯◯かー。これからよろしく!」
「・・・宜しく。」
「じゃあな!」
そう言ってそいつは、どうやら同じ中学校出身らしい人達のグループの中に、帰っていった。
・・・なんだったんだ?あいつ。
それが▲▲、のちのピザポとの出会いだった。
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それからという物、毎日毎日飽きもせず、▲▲は僕に絡んできた。・・・正直五月蝿い。
「なあなあ!コンちゃん!」
「・・・コンちゃん?」
「渾名!嫌なら止めるけど?」
「別に・・・嫌では無いです。」
「じゃあコンちゃんな!決定!」
・・・あれである。こういうのが普通なんだろうか。テンションに付いていけない。
「昼飯どーする?」
「・・・弁当、持って来ているので。」
「へー。コンちゃんが作ってんの?」
「どうしてそうなるんですか。」
「なんか作れそうだからwww」
大体、僕なんかに構ってないで、もっとこう・・・色々あるだろう!他の友人も居るんだし、そっちに行け!頼むから!
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そんな感じで、日々は過ぎていった。
その中で僕は、ある事に気付いた。
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事の発端は、入学してから1週間ほど経った頃、皆の親睦を深めるためという名目で、季節外れの肝試しをしよう、という事になった所から始まった。クラス全員ほぼ(強制)参加で、断る訳にはいかなかった。
発案者は入学早々派手にやっているDQN。
ピックアップしてきたスポットの中には、本当に洒落じゃすまない所も何ヵ所かあった。
だが!ヘタレの僕に注意なんて出来る筈もない。
どうしたものかと頭を捻繰り回していると、▲▲がサラッと言った。
「◯◯病院と××トンネルは止めとこうぜーい?」
僕は驚いた。本気で危ない所を見事に言い当てていたからだ。
「は?何でだし?」
▲▲が答えた。
「んー?××トンネルも◯◯病院も、かなり古いしさー。前行った時なんも無かったんだよねー。特に◯◯病院なんて、公衆便所みたいになっててww」
「行くんだったらさー、□□公園だろ。ヤバいって噂になってるし。」
□□公園の噂はデタラメだ。まさか、わざと安全な場所を選んでるのだろうか。
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▲▲の案は認められ、肝試しは□□公園に行く事になった。
当然の事だが、何も出なかった。
帰り道、僕は▲▲に聞いてみる事にした。
「・・・なんで◯◯病院と××トンネルは駄目だったんですか?候補には、この二つより古い建物もありましたよね?」
▲▲は笑いながら言った。
「今更www」
「いや別に適当に言ってみただけww素直に言う事聞くのも嫌だったしwwそんだけwww」
・・・適当?
僕は何だか拍子抜けした。
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それからまた数日。
あの日から僕は▲▲の観察をしていた。
どうやら▲▲は無意識に霊的な物を避ける(?)事が出来るらしい。
だから見えてないっぽいのに、黒板のチョーク置き場に乗っているウサギに消しゴムを投げ当てたり、(勿論ちゃんと拾って逃がしておいた。)
廊下を歩いていた謎の小学生を避けたりとか出来るんだろう。
・・・今思うと、勘違いも甚だしいのだが。
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ある日、▲▲は僕に聞いてきた。何気無く。
「あのさぁ、コンちゃん、なんかペット飼ってるでしょ?」
「・・・ペット?別に何も・・・。」
いやー、と▲▲は言う。
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「飼ってるでしょ。足の生えた蛇。水生の。」
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え?
それってもしかして・・・。
「・・・蛇に足を生やしたら、蜥蜴でしょう?」
「いや、蛇。ベースが蛇。」
・・・やっぱり。
「・・・ミズチ様の事?」
「へえ。予想より凄いの飼ってんね?」
僕はムッとして言った。
《何でこいつはミズチ様の事が分かったのか》なんて事は、頭から抜け落ちていた。
「飼ってないし、ペットでも無い。」
▲▲は不思議そうな顔をした。
「え?じゃ、憑き物筋?でも、それにしては懐いてるしなー。てか、蛟って憑くの?」
僕は益々ムッとした。
「・・・一応、婚約者みたいな物だ。」
思わず、敬語がログアウトした。
ここには書いていないが、その頃までに僕は、ミズチ様と何度か夢の中で会って、会話の様なものをしていた。
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例)ミズチ様=ミ
僕「今日は暑いですね。」
ミ「シャ~。」
僕「こんなに暑いと、茹だっちゃいません?」
ミ「シャ~。」
僕「まぁ、池は冷たいし、大丈夫ですよね。」
ミ「シャー。」
勿論何を言っているのかは分からないが。
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冬至には、風邪を引かないように小豆粥ならぬ小豆入り甘酒を作って供えたりもしたのだ。
爬虫類とはいえ、かれこれもう5年以上の付き合いなのだ。
僕の事を守ってくれたりもしていたのだ。
恋愛感情ではないが、情だって移るじゃないか。
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▲▲は、驚いた様な顔して言った。
「マジで?冗談じゃなく?」
「本当の事だ。」
「そういう趣味ってこと?」
「はあ?」
「いや俺、別に偏見とかは無いけど。」
「なんの事だ。」
▲▲の口から出た言葉は、僕の予想の遥か上をぶっ飛んでいた物だった。
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「あのさ・・・コンちゃんてさぁ、ソッチ系?」
はぁ?
「ソッチ系て・・・?」
口ごもりながら、▲▲が言う。
「だから・・・なんか、男もOK・・・的な?」
はぁ?!
「それってどういう・・・?!」
そこから更に威力のある一言。
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「だってその蛟、男神だし。」
「何だってえええええぇぇぇぇぇ!!」
皆さんにお分かり頂けるだろうか?
ずっと仲良くしてきた未来の嫁が、実は嫁では無く婿だった時の気持ちが。
「せ、性別なんて、判断出来るのか?!」
「いや、普通に分かるし。」
「・・・・・嘘だろ。」
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その日は1日中、鬱々した気分で過ごした。
そしてその次の日--
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▲▲が必死に誤ってきた。
「ごめん!マジでごめん!」
「夢に蛟様出てきた!めっちゃ説教された!」
・・・説教?
「ミズチ様・・・。日本語話せたのか?」
▲▲が、ほぼ半泣きで言う。
「コンちゃんが、自分の性別を勘違いしてた事は、知ってたって。人間に化けたり、喋ったりすると、男だってバレるから・・・今まで黙ってたんだって。」
僕は溜め息を吐いた。
「そうだったのか・・・。」
だから・・・と、▲▲が続ける。
「ごめん。蛟様の事。」
「何も知らなかったんだ。仕方がないだろ。」
「これから、どうすんの?蛟様と・・・。」
僕は少し考えた。
そして答えた。
「別にどうも?」
▲▲は、呆気に取られた様な顔をした。
「は?」
「確かに情は湧いていたが、恋愛感情とは違う気がするしな。恋愛感情でないのなら、性別は関係無いだろ。・・・期待をしていなかったと言えば、嘘になるが。」
大体、僕が見たことのあるミズチ様は、足の生えた大蛇なのだ。幾ら何でも、そういう意味で《好き》にはなれない。
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「良かった・・・。」
▲▲は、大きく息を吐いた。
僕は、前から聞きたかったある質問をしてみる事にした。
「ところで、何でミズチ様の事が分かったんだ?」
▲▲は、サラッと答えた。
「霊感あるなら・・・わかるっしょ普通。巻き付いてるし。あれ?コンちゃんて見えるよね?」
「何処に。」
「・・・腕とか・・・肩とか。身体中。」
慌てて身体中を見てみるが、何もいない。
「守護霊は基本、本人には見えないらしーよ?」
「じゃ、他の奴には・・・?」
「コンちゃん、他の奴の守護霊、見えてるだろ?」
見えてない。普通の霊だって、強いの以外は他の人に教えてもらわないと見えない。
だが、薄塩は・・・
僕は薄塩のいる教室へと走り出した。
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薄塩は教室で本を読んでいた。
「薄塩!!」
「へ?何?何で怒ってるんだ?」
「お前僕に付いてるミズチ様が見えてるのか?!」
薄塩は暫くボケッとしていたが、やがて首を縦に振った。
「見えてる・・・けど?」
やっぱり!
「何で男神だって教えなかった?!」
薄塩が驚いた様な顔をした。
「男神なの?!」
「男神だよ!!」
「蛟の性別何て分かるかーー!!」
薄塩が叫んだ。
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で、場所を変えて此処は第四総合教室。
メンバーは勿論、僕、薄塩、▲▲の三人。
僕が聞く。
「▲▲、何でお前はミズチ様が男神だって分かったんだ?」
▲▲が答える。
「蛟様って、◇◇川の神様のだろ?」
「ああ。」
「男神じゃん。」
「え」
「伝承からして男神じゃん。」
「じゃあ、僕に付いてる奴で性別を見た訳じゃ・・・」
「ないよ?」
何だ。凄いとか思って損した。・・・あれ?
「薄塩、のり姉はこの事、知らないのか?確かのり姉、地域の伝承とかに詳しかったはず・・・」
薄塩は何故かこんな(´・ω・`)顔をした。
「・・・多分、分かって黙っていたんだと思う。」
「・・・どういう事だそれ。」
「聞くな・・・!( ;ω;)」
・・・そっとしておこう。
「なあなあ!もしかして薄塩も見えたりすんのー?」
あ、空気読め▲▲!
「・・・見えるけど。」
「マジで?!ヤバイなこの学年wwww」
「・・・そうかい。」
「今度三人で遊び行こーぜwwww」
「・・・別にいいけど。」
「コンちゃんはー?」
「構わないけど。」
薄塩が聞いてきた。
「コンちゃん・・・て?」
「渾名。」
「ふーん。」
▲▲が笑いながら言う。
「何処行く?何処行く?」
・・・全く、こいつは・・・。
僕らは、何処に遊びに行くかを話し合う事にした。
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結局、ミズチ様の事は未だにはっきりとは決まっていない。だが、離れがたいのも事実。
・・・どうするべきなんだろう。
まぁ、それはその時が来たら、考える事にする。
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▲▲はあの後、何かと僕等と行動を共にする事が多くなった。
ピザポ○トが好きだと聞いたので、ここには次から、《ピザポ》と書いておく。
これが、僕とピザポの出会いだ。
詰まらない話ですまない。
だが、一応大切な友人との出会いだ。
僕にとっては、大切な事だったのである。
作者紺野
開けましたね。おめでとうございます。
紺野です。
ピザポ が なかまに なった ! !
回です。
御姉様はなぜミズチ様を男と知っていながら話してくれなかったのか。
答えは、貴方の心の中にあります。
物語はまだまだ続きます。
今年も宜しくお願い申し上げます。