それは冬が終わったばかりの春、まだ冷たい風が吹く時だった。
真っ白な世界で裡は取り残されていた、その場でフワフワと浮いている…
裡(ここはどこだろう…
私は死んだのかな…
なんだか眠いや…
このまま寝ちゃおうかな…
眠い…)
しばらくすると、赤い光が裡の体から出始めた。
裡は自らの体から出るその光に気がついていない。
?「ふぅ…やっと見つけたぞ、彼女に強力な守護霊がついていたとは思わなかったな…
上田裡に宿る守護霊よ、協力してくれて感謝する…」
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ーーーーーーーーーーーーー
music:5
裡(………?)
?「目が覚めたか。」
裡が目を覚ますと、そこは綺麗な川が流れる川岸だった。
目の前には男のような女のような不思議な人が立っている。
美海「この人が助けてくれたんだよ、この人が外れ死神を捕まえてくれなきゃ君も私と同じになってたし。」
裡の隣に寝転がる美海がそういう。
裡「あ、ありがとうございます。」
?「礼には及ばない、私も本来の目的を達成出来たのだからな…。」
裡「目的?」
?「…貴方には言っても大丈夫だな。
私は処刑神だ、この外れ死神から大きなダメージを受け身動きがとれなかったが、食われたわけではない。」
処刑神と名乗る人が手を差し伸べると、そこに黒いモヤが湧いた。
苦しむ声をあげながら歪んでいる…
sound:33
アァ……ウアァ……
処刑神「今回は私の失態のせいで卑劣な事件が起こってしまった…申し訳なかった。」
裡「いえ、多分もう解決したし、みんな許してくれると思いますよ。」
処刑神「感謝する。」
その後は、裡は何故か持っていた白い箱の中身を美海と処刑神にも振舞った。
処刑神「うむ、下界の食物もうまい物だな。(もしゃもしゃ…)」
美海「…ねぇ君、」
裡「ん?どうしました?」
美海「このお菓子、
sound:20
迷宮うさぎサブレ…!?」
裡「そうですよ、すごく美味しいでしょ!こんなにもサクサクしてて…美海さん?」
見ると、美海は声を出して泣いていた。
両手にサブレを持って口に突っ込む。
美海「お母さん…お母さん…!!」
裡「お母さん?もしかして…美海さんのお母さんってケーキ屋さんなの?」
美海「はい、生前は妹がいました…。」
裡「妹?……あっ!」
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music:7
笹雄「考えられる可能性は3つある、
「ショートケーキが嫌いなのは女の子として恥ずかしい」「昔は好きだったが、今は嫌い。」そして
「あの写真と女の子は別人」
位だな、最後は可能性低いがな。
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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
music:5
裡(実は最後のが正解…
あの写真は美海さんだったんだ、これでつじつまが合う!)
裡「美海さんのお母さんってどんな人だったの?
ってかなんで死んだの?」
美海「………、
話すと長くなりますが…いいですか?」
裡「うん、大丈夫。
処刑神さんは?」
処刑神「私か?私は構わない、時間は山ほどある。」
裡「わかった。」
美海「え〜っと、どこから話せばいいかな…」
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music:1
私の両親は夫婦そろってパティシエでした。
お母さんは洋菓子、お父さんはケーキを作るのが得意だったんだ。
それと妹がいた、6歳下の妹。
喧嘩したりもしたが、仲の良い姉妹でいれたと思う。
そんな感じで藤城家は幸せに過ごしていく…
はずだったんだけどね…
とある恐ろしいことが分かって私の両親は離婚したんだ…
死んだから言えるんだけど私ね、
お父さんと別の女の人との子供だったんだ。
それを偽ってお父さんはお母さんに私を育てさせたんだ!
悲しかった…私はお母さんの子供じゃないってわかって…
その後、親権の話が来たんだけど、もっと悲しくなった!
お母さんは妹だけを取って私ごとお父さんを追い出したの…
「偽りなんかいらない!」って言い捨てて!!
それから私とお父さんの2人暮らしだったんだけど、
お父さんはしょっちゅうどこかに出かけてて私1人だったな。
そんな時、私を助けてくれたのがこっそり飼っていた子ウサギだったの。
学校でいじめられて辛かった時も、お父さんが知らない女の人を連れて帰ってきた時も、子ウサギだけは私の味方だったんだ…
バイト何個掛け持ちしたっけ…わかんないやw お父さんがお酒やタバコ好きじゃなくてよかったな。
そんなある日、ふと家に帰ってきたら、
子ウサギがいなくなってたの…
お父さんに聞いたら「家では裕福とは言えないからペットを飼うのはやめなさい!」って言われた。
きっとどこかに捨てて来たんだ!その日は一日中泣き明かしたよ…
そんな時、お母さんがウサギをモデルにした「迷宮うさぎサブレ」を作ったから食べに来なさいって言ってくれたの!
幸せの絶頂だった…お母さんが私のウサギ好きを覚えてくれてて嬉しいし、お昼食べたばっかりなのにお腹減っちゃったのw
そんな買い物に行く途中、
私のいじめが幸せの絶頂を潰して私にとどめを刺したの…
死んだって気がついたのは、
私をいじめた奴が私の遺体をあの場所に埋めたところを見ちゃったからだね。
ほら、私がカフェとかペットショップとかレストランとか作ったあの場所。
最悪な状況で成仏したくなくて、
しばらく××町を飛び回って遊んでたんだけど、
なんで………
あぁいや、あの後何回かお母さんのお店に立ち寄ったのね。
半年くらい立った頃、
お父さんがお母さんにもう一度プロポーズしたんだ、土下座もあった。妹は泣いて喜んだ。
私は…
その時の私は……
自分を恨んだんだ………
お母さんが復縁出来たのは偽りの子供の私が死んだからだって!
迷宮うさぎサブレはただの毒味だって!!
でも…それでも迷宮うさぎサブレを食べてみたかった。
そこからだっけな…私が行動に移ったの。
最初は誰かに乗り移ろうと思って偽物のお店を立てたんだ、料理とかも拾ったお金で材料集めて自分で作ったんだ。
で、お客さんの水をついでる時、
私は自我を失って狂気に落ちた。
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music:5
美海「お母さんはすごく優しくて良い人だった。でも今はどうなんだか…」
裡「美海さん…」
処刑神「………ふぅ、
やれやれ、君はいくつか勘違いをしているようだ。」
美海「え?そんなはずは…」
処刑神「外れ死神が君にとり憑いたに当たって、君のことを調べさせてもらった。」
裡「過去とかもわかっちゃんですか!?」
処刑神「序の口だ。
藤城美海、君が「それから私とお父さんの2人暮らしだったんだけど、
お父さんはしょっちゅうどこかに出かけてて私1人だったな。」までは合っている。
だが子ウサギは捨てられてはいない。」
そう処刑神が言うと、川に近づいて1匹の子ウサギをすくい上げた。
裡(かっ、川からウサギ…?w)
処刑神「この子ウサギは病死だったらしい、君の父はこの子ウサギを丁重に葬ってくれたそうだ。
君の父がしょっちゅう出かけていたのは君に内緒で働いていたからだ、少しでも君に楽をさせてあげたかったんだろうな。」
美海「あ…あぁ…」
処刑神「迷宮うさぎサブレは確かに君のために作られた洋菓子だ。
作られているところを見たからな。
甘くないのは君の妹の味覚に合わせて作ったらしい。甘いのは…」
美海「私の…ために…!?」
それを聞いた処刑神は、子ウサギを川に戻して美海に向かって微笑んだ。
処刑神「いじめられている者に殺されたのは不運なことだが、君の過ごして来た人生は悪いものだったか?
死後も彼女や色々な人が君のことを思い、君の代わりに正気を取り戻してくれたではないか!」
美海「はい…、確かにそうですね。
最悪な状況じゃなかったんだ…!」
処刑神「君らもう未練は全て果たした、ちゃんと成仏できるよ。」
美海「ありがとうございます。
でも…」
成仏できると言われた美海は、急に暗くなった。
裡「どうしたの?」
美海「私に…安心して成仏する資格なんてないです!
私はたくさんの人を食い殺してしまった…
私はこの世で地縛霊になるつもりです、地獄に行っても償えきれない!」
処刑神「ならそうするがいいだろう。だがな、
この魂たちはそうは思っていないらしい。」
そう処刑神が言うと、地から魂が湧き出て来た。
キラキラと輝きながら浮遊している。
裡「きれい…。」
処刑神「みな、君のことを悪いとは思っていない。
逆に成仏せず君のことを待っていた。
これは成仏すべきじゃないのか?」
美海「みんな…私のことを…!」
美海が再び号泣する頃、裡はとある音を聴いていた。
裡(………?
sound:20
あれ?声がする…)
裡は気がついていないが、裡には赤い光がまとっている。
頭には霊力の長い耳、腰には可愛らしい霊力の丸い尾がついている。
裡は今「霊聴」にものすごくたけている。
裡は魂たちの声を聴いた。
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(お前は悪くねーよ!悪いのは君に憑いていた者だぜ?)
(貴方に罪はないわ、私たちと一緒に行きましょう。)
(大丈夫だよ!ほら早く!)
美海「私のせいで…ごめんなさい…!」
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(なんで謝るんだよw)
(ほら涙拭いて!)
(君は絶対地獄になんか行かない!ってか行かせない!!)
美海「ありがとう…ございます…!」
ついに美海の体は光を帯び始め、ゆっくりと天に登り始めた。
裡「あ、待って!忘れ物!!」
裡はかなり高いところにいる美海に向かってありえないくらい跳躍した!
無事、美海に迷宮うさぎサブレがたくさん入った白い箱を渡すことが出来た。
その後、裡は自分では信じられないくらい軽々と着地した。
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美海「最後にいい!?」
裡「何ですか!!」
美海「あなたの名前は!?」
裡「裡です!!上田裡!!」
美海「裡さん!ありがとう!出来れば死ぬ前に会いたかったですーーっ!!!」
最後、美海は笑顔でキラキラと輝きながら周りと変わらぬ魂の姿となった。
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(ありがとう!)
(サンキューな!)
(ありがとうございました!)
ありがとう、
裡はその言葉を魂たちが天に登って見えなくなるまで聴き続けた…
裡「またねー!!!」
すると、処刑神は裡を前からぽんと押した。
裡は後ろにふっと倒れ、その世界から現世へと戻って行った…
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処刑神「さてと!早く仕事に戻らないと閻魔様に怒られてしまうなw
ふふ…この外れ死神はどう処刑してやろうか…
普通の処刑では足りぬ罪だな…
ふふ…
ふはははは!!!」
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music:4
裡が目を覚ますとそこは菁滋の家、つまり○○神社だった。
部屋の真ん中に巨大なふかふかの布団が敷かれ、そこに裡は寝かされていた。
春花「裡!裡!!」
裡「春……花?」
目の前には人間の姿に戻った春花がいた、少々涙目になっている。
春花「裡!みんな!裡が目を覚ましたよ!!」
笹雄「本当か!?」
1番に走って来たのは笹雄だった。
一晩中様子を見ていたようで、目には薄いクマができている。
笹雄「よかった…裡…!」
裡「!!??」
気がつくと笹雄は裡に抱きついていた!
裡はそういう経験が一つもないため、体が凍りつく。
春花「お手柔らかにしとけって初心者なんだからw」
笹雄「あ、その…ごめん。」
裡「いや、だっ、大丈夫です。(顔真っ赤っ赤w)」
裡「春花、姿が元に…!」
春花「あぁこれ?事態が落ち着いたから呪い解いてもらったのさ、今菁滋って人も呪い解いてるよ。」
天魔「おい!菁滋の呪いが解けたぜ!
…って裡ちゃん!?目が覚めたのか!」
裡「はい、向こうで色々あったんで。」
天魔「そうか、うまく戻って来れたんだな。」
裡「はい!」
そんな感じでしばらく話していると、直樹が1人のがっちりした大柄な男と一緒に部屋へ来た。
直樹「菁滋の呪いが解けたよ…
あ、裡さん目が覚めたんですね。」
裡「あ、はい!おかげさまで。」
笹雄「で、菁滋はどこにいるんだ?解けたんだろ?」
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天魔「え?」
直樹「え?」
笹雄「…え?w だからどこにいるんだ?」
菁滋「いや、僕ならここにいるよ…?」
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……………。
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裡&笹雄&春花「ええぇーーーーっ!!??」
裡「菁滋さんってこんながっちりしてたの!?」
春花「あの黒ウサギの正体がこんなガチムチのムキムキ!?」
笹雄「いや違うだろ!菁滋はもっと細くて爽やかで真面目な感じで」
天魔「アッハッハ!!ww とんだ勘違いをされたもんだな菁滋ww」
菁滋「仕方ないさ…
僕の家は父方が霊能力の家系なんだけど、母方が柔道家の家系なんだ。
それでこんな体になってしまったんだよ。
それよりも、
どうやら真に成仏出来たようだね。」
裡「はい、たくさんお礼を言って逝きました。
みんな笑ってました。
美海さんも…」
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それは冬が終わってだいぶ立つ春真っ盛り、暖かな風が吹く時だった。
その後、私たち一同は何度か警察に相談すると、あの場所を警察が調べた。
あの土地には白骨化した遺体が埋まっていたらしい。
私たちはあの後6人で心霊調査団体「うさぎつね」を結成した。
結団式(ほとんどパーティみたいな感じなんだけど…)には美海さんの両親と妹も参加した。
遺体を見つけてくれたお礼、たくさんの迷宮うさぎサブレを持って。
美海の妹「上田のお姉ちゃん!」
裡「ん?どうしたの?」
美海の妹「あたしのお姉ちゃんを助けてくれてありがとう!」
裡「え?」
美海の妹「あのね、昨日寝る前にお姉ちゃんが会いに来てくれたの!
「迷宮うさぎサブレ美味しかったよ」とか「あんたが私の妹でよかった」とか…
あ、「裡さんにサブレごちそうさまって言っておいて」って言ってたんだ!ごちそうさま!!」
それを聞いた美海の母は泣いていた、美海ごめんなさいと何度もつぶやいていた。
そこに大丈夫と言う美海の父がよりそう。
血が繋がってなくても大切な家族、美海の母はそれに気がつくのにあまりにも遅かったのだ…
結団式はにぎやかに、そしてしんみりとした雰囲気で終わった。
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「うさぎつね」の集合場所は菁滋の神社だ。心霊関係のことについて話をしたり、霊能力のトレーニングを菁滋がコーチで訓練したりした。
菁滋「笹雄君、だいぶ早く動けるようになったんじゃないか?」
笹雄「そうか?だいぶこの力にも慣れて来たしな、そうかもな。」
「うさぎつね」の活動は大ごとはなく平和な日々が過ぎた。
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そんなある日…
sound:14
トントン
裡「ん?なんの音?」
裡は神社の出入口付近で本を読んでいると、出入口の障子を叩く影が見えた。
障子の戸を開けてみると、そこには1匹の子ウサギがいた。
その子ウサギの模様は変わっていた、真っ黒な体なのに耳だけが真っ白なウサギ。
裡「どうしたの?迷子かな…あ、
耳が白い…かぁ〜。」
裡はその子ウサギを見てとある事件が頭に思い浮かんだ。
「シロミミ事件」。
うさぎつね結成前、裡たち一同が出会うきっかけとなった事件だ。
裡「よし、決めた!この子飼おう!」
裡はその子ウサギをひょいと抱きあげ、頭から背中にかけて撫でた。
子ウサギは人懐こく、「キューン」と鳴いて喜んでいる。
そこへ、霊能力の訓練をしている笹雄が近くに着地したしてきた。
笹雄「よぉ裡!…ん?読書は?」
裡「あ、一度休憩です。」
すると、笹雄は裡にこんな話をし始めた。
笹雄「…裡、聞いてもいいか?」
裡「いいですよ!なんでもどうぞ。」
それを聞いた笹雄は一呼吸おいてからこう話した。
笹雄「裡は…俺のことどう思ってるんだ?」
裡の回答はすぐに来た。
裡「最高の仲間です、槍坂さんがいなきゃ今の私はなかったと思います。
これからもよろしくお願いしま」
笹雄「あ、あのさ!」
裡「はい?」
笹雄「そんな大切な仲間だったら敬語なんてやめろよ!俺のことも呼び捨てな!」
裡「はい!…え?あ、うんわかったよ笹雄…君。(ギクシャクw)」
笹雄「君じゃないだろ!言うこと聞かなきゃ…狩るぞ?」
裡「あ、えっと笹雄…君…
わーごめん!やっぱり呼び捨ては無理だよーー!!」
裡は子ウサギを抱いたまま霊力を使って跳躍で逃げ出した!
笹雄「あ、ちょっと、こら待て!」
笹雄も霊力を使って裡を追いかけた!
そのまままるで狐が兎を狩ろうとしているような追っかけっこが始まった!
だが、なんか気のせいか少し楽しそうにしているようだが…w
裡「わぁ〜ん!そんな全力で追っかけないで!早いよ!w」
笹雄「だったらもっと訓練しとけ!いいから捕まれよ!w」
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ーーーーーーーーーーーーー
こうしてうさぎつねには新しい仲間が増えた。
この子ウサギは○○神社に住み着くことになるだろう。
子ウサギの名前?
子ウサギの名前は…
耳だけが白いからそのままの言い方で…
うん、そういうことw
作者ハピナ
こんばんちわーっす!
(ノ≧∀)ノわぁ〜い♪
ついに兎シリーズが終わりました…
(;゜0゜)
美海ちゃん無事に成仏しました。
南無。m(_ _)m
仲良くなった6人は
「うさぎつね」を結成したそうです。
(∩´∀`)∩バンザ──イ!
裡&笹雄もまだまだ活躍しそうです。
(๑′ᴗ‵๑)