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リサイクルショップ〜シリーズ 9 新人看護師の体験〜

中編5
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リサイクルショップ〜シリーズ 9 新人看護師の体験〜

看護師になって一年目、救急病棟に配属が決まった私は、新しい生活のスタートに不安と期待に胸を膨らませていた。

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「初日かもしれないけど、ここに来る患者さんは一刻を争う人ばかりだから…気を引き締めてお願いね。」

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と、先輩であり主任の二階堂さんに言われ…

私も「頑張らなくちゃ…」と、奮い立つ思いだった…

初日は先輩の言う通り、いろんな患者さんが運ばれてきて、もう…てんてこまい…

自分が何をしているかも分からないうち、あっという間に一日が過ぎて行った。

それから毎日、忙しい日々を送るうち、さすがの私も仕事に慣れ、先輩や先生に指示されなくても、自分から動けるようになっていった…

そんな頃の話。

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何時ものように、忙しい一日が始まり、急病で倒れたお婆さんや、バイクで転倒して大怪我をおった、男性など一刻を争う患者ばかりの日だったことを覚えている。

そんな中、ある一人の患者が運ばれてくる…

何でも、列車に引かれたとのことで意識もなく、重体と思われた。

医師の佐伯先生と二階堂主任の手によって急いで血で真っ赤に染まった服が剥ぎ取られる。

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「あれ?傷口はどこだ?」

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佐伯先生があちこちを見回したけど、出血している場所も傷を負っている場所もなく、どういう事か?と、救急隊に目をやると…

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「ああ、その人…列車に飛び込んだ人を助けようとして引かれたもんだから、飛び込んだ人の血を浴びてるみたいよ…」

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と救急隊が飄々とした感じで答えた…

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「ああ、そうなんだ…でも、頭に傷おってるし。」

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と、頭の傷を懸念し、

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「CTとろう…」

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と、患者を移動しCTをとる…

異常なし…

足にも擦り傷等あったが大したことなく、重体と思われたが、軽傷に切り替えられた…

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その日のうちにベッドに移動した。その日は救急病棟のベッドも珍しく空いていたので、そこで我慢してもらう。

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「お気づきになられましたか?青田さん…もう大丈夫ですからね…」

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と、二階堂主任が毛布をかける…

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「ここは?」

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「病院のベッドです。」

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不安そうに彼方此方を見て、病院だと気がつくと、安心したのか、マクラに深く頭を沈めた…

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「事故のこと覚えてますか?」

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と聞くと、首を触りながら、さあ?と言った顔と仕草をしていた…

彼の所持品から、身元を判断し、

『青田 和明』とネームに記しベッドに取り付けた…

あまり対した怪我もなく、明日にでも退院でくることを話すと、安堵したような表情を浮かべていた…

その時、受付を担当していた浜田さんが青田さんのベットの元に来た…

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「あの…今、この方の知り合いだという方がいらしたんですけど…お名前は…?」

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と、聞いて来た…

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「『青田 和明』さんですけど?」

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と答えると、ああ…と言った顔で

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「美波さんでは無いですよね?」

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と、患者である青田さんの顔を見た…

青田さんが顔を横に振ると、ニッと笑って受付のあるナースステーションへと戻って行った…

美波さんという方が、青田さんが助けようとした人なのかもしれない…

とっさにそう思い、青田さんに話を聞いて見た…

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「青田さん…電車に飛び込もうとしてる人を助けようと、飛び込んだそうですね?」

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「え?そんな事、僕が出来るわけないじゃないですか!」

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あれ?話が違う…

じゃあ、なぜこの人は列車に引かれたの?

まさか、逆にこの人が助けられたの?

すると、思い出したかのように青田さんが話し出した…

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「でも、踏切を飛び越えて入って行く人は僕も見ましたよ…でも…その後の記憶が全くなくて…看護婦さん!僕、さっきまで不思議な夢を見ていたんです!いや、夢というか…記憶が頭の中に飛び込んできたというか…

…なんて言うか…

自分が自分じゃないみたいな感覚で…

ある、リサイクルショップに居るんです!

で…目に飛び込んできたアコースティックギターを手に取ると、何処かで聴いた事のあるような…なんて言いましたか…映画の挿入歌だったと思います…それを自分では考えられないほど上手く弾くんです…

すると、見たこともない知らない青年三人が、僕に『おい?○○?大丈夫か?おい!?』って身体をゆするんです…何が何だかわからず、黙っていると…その中の一人が店を出ようって…外に無理やり出されると、またその中の一人が、少しふざけた感じで病院行っちゃう?的なことを言うんです。

周りも私の状態が異常なのを察して病院に行くことを勧めてきたんですが…

でも、見ず知らずの若者に病院行こうと言われても、全くどこも悪くないのに、病院に行く気にもなれず、逃げるように手を振りほどき逃げたんです…それから…何故か目が覚めると病院のベッドの上で…」

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なんだが、本当にそれを見てきたかのように話すので、少し気になったが、もう大丈夫ですからね、と言葉を残し仕事に戻った…

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その日は当直で夜も病院に残り、入院している患者のケアをした…

毎回、何事もないことを祈りつつ仕事をしていたが、その日は最悪な夜だった…

青田さんがナースコールを押したので駆けつける…

夜は照明を落としているので懐中電灯を手に向かう…

ベッドに近づき、患者さん自体にライトを向けることはしない。

眩しくないようライトは、天井に向けるのが、ルールだ…

白い壁のおかげでその周辺だけ明るくなる…

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「どうかなさいましたか?」

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と青田さんの顔を見て、凍りついた……

顔全体の血管がまるで、ツルの枝のように浮き出て、今まで見たこともないような形相で私を睨みつけている…

身体はまるで猫が獲物を狙うかのような格好をしていた…

恐怖で足が動かず、声も出ない…

先ほど見た時の穏やかな表情からは想像もつかない…悪魔でも見ているのか?と思えるほど怖ろしい顔をしている…

隣のベットに寝ていた木村さんを見て更に硬直した…

顔に食いついたかのような跡があり…首からは大量の血を吹き出し絶命している…

その時だった…

青田は急に飛び起きると、蛙か?ウサギか?と思うようなフォームで飛び跳ねると…

そのまま病室を出て、何処かに消えてしまった…

何が起こったのか分からず呆然と立ちすくんでいると、同じ当直だった三浦さんが来て

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「今、青田さんが変な走り方でナースステーションの前かけて行ったけど何があったの??!」

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と、血相を変えて飛び込んできた…

恐ろしくて、わけも分からなかったので、首を横に大きく振ると…

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「ベットのその血は何なの!?」

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と、指を指した…

見ると、彼が寝ていた形に合わせたかのようにべっとりと赤い血が人型に残されていた…

その脇にカレンダーを破いた切れ端が置いてあった。何かが書かれている…

そこにはこんなことが書かれていた…

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『助けて 僕の身体を 誰かが 乗っ取ろうとしている 助けて』

Concrete
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