ある日、朝っぱらから友人Tに呼び出された。内容がとてもくだらない、狐狗狸(こっこくり)さんをやろう、とのことだ。
僕は全然乗り気ではない、幽霊は信じていても、狐狗狸さんは信じていないのだ。
Tの家は僕の家から1.2kmほど離れている。自転車で行けば、5分で着く。だが、めんどくさい。
めんどくさいのでゆっくり行く準備をしていると再度、電話がかかってきた「おい、○○←(my name)はよ、来い!」と、急かしてきた。
行く準備も整って、自転車に乗り、速攻でTの家に向かった。
Tの家に着くと、友人Yも来ていた。着いた途端にTが「おー、よく来たな!さっそく狐狗狸さんやろうぜ」と興奮気味で言う。
付き合ってやるか…と飽きれた。
Yは暇そうにティッシュをいじっている。
狐狗狸さんとはみんなが知っている通り、五十音と鳥居を書いた紙に、十円玉を置いて、質問などをすると言ったものだ。地域でやり方が違うだろうが、これが最も簡単なやり方だ。
Tが紙を置き、十円玉を取り出した。そして、Tが十円玉に手を置いた。続けざまに僕も手を置いた。
Yはティッシュをまだいじっている。Tが「おーい、Y!早く来いよ」と言う。
その瞬間、Yがティッシュを食った。まぁ、いつものことなのでほおっておいて構わないだろう。
Yがとぼとぼとこちらに歩いて来た。そして、十円玉に手を置いた。
すると、Tが「んじゃ、始めるぜ」と言う。
最初の質問はTがする「狐狗狸さん狐狗狸さん、五分後に僕たちは何をしていますか?」
勿論、十円玉は動かない。
次もTが「狐狗狸さん狐狗狸さん、今の日本では何が起きていますか?」
すると、十円玉が動く。
あ、、、、べ、、、、の、、、、み、、、、く、、、、す、、、、
Tは「う、動いたッ」と喜んでいたが、僕は「おいY、動かすな」と言った。Yは「すまん…」と呟いた。
Tは残念そうに質問を続ける。「狐狗狸さん狐狗狸さん、僕は神様になれますか?」
…………動かない……
見兼ねたYが「狐狗狸さんはな、憑依による占いの一種、竹を三またに組んで盆をのせ、軽く手をそえ、伺いごとを述べるんだ、あるいは文字盤の上に三脚状のものを動く様に置き、その示す文字を読む、通常三人で精神を集中して行うものだ。昔に十円玉があったと思うか?考えられないだろ?」
と言われ、すごく自分が馬鹿らしく思えてきた。
Tは撃沈だった。
だが、負けじとTは反論する。「でも、そのやり方だったらできるんだろ?」
Yは冷静に「それも違う。科学的に狐狗狸さんは解明されてる。M•シュブルールさんがだな、小学生などを対象に狐狗狸さんの実験を行ったところ、日本の首都や人気野球選手の背番号といった質問では十円玉が正答を指し示したが、簡単な英語での質問や過去のアメリカ大統領名など、本人達の知識を超えた問い掛けには紙の上を迷走するだけだった。また、被験者の小学生にアイマークレコーダーを装着させ視線の動きを観察したところ、質問を聞いた際、十円玉の動きに先行して回答となる語句の文字を目で追っていた。ちなみにこれが、潜在意識説だ」
Tは完全に論破されポカンとしていた。
僕も驚いていた。
Tは呆気にとられすぎて、十円玉から手を離していた。
みるみるYの顔色が悪くなって、こう言った「バカ!幽霊説もあるんだぞ硬貨が動くのは狐の霊、または低級な“自然霊”の憑依によるものと信じられて来た。また、“死んだ子供の霊”によるものと言う説もある。途中で手を硬貨から離した者は、あるいはコックリさんに「コックリさん、ありがとうございました。お離れ下さい。」と言ったのに対してコックリさんがその場から動かなかった場合は全員が、取り憑かれてしまうと言われているんだぞ!?」
僕は驚き何も言えなかった。
すると、Yが大声で「狐狗狸さんお帰りください」と言う。
ハ……イ……
それと同時に十円玉から手が飛ぶ様に離れた。
Tを見ると笑っている。
不気味な声でTが「ウヒヒヒヒ」と笑う。
僕は憑依されてる!?と焦りまくった。
Yは「ペンは何処だ?」と探し始めた。
その間にもTは「うひひひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」とだんだん声が大きくなっている。
Yがペンを見つけて、Tの額に五つ星を書いた。
書き終えるとTが突然、倒れた。
Yは一安心し、またティッシュをいじっている。
しばらくするとTが起き上がって、「うおっ、何があったんだ!?」と言った。
僕は「Tが途中で十円玉を離すから憑依されたんだ」と状況を説明した。
Tは「うぉーー、見たかったぁぁぁぁ」と泣いて訴えていた。
その後、Yに何故、五つ星を書いたのか聞いて見ると、「あれが、対処法なんだ…」とだけ言った。
Yは面白い奴で小学生の頃にUFOを呼んでいたのを覚えている。
あと、それと、それと…マズイ、このまま話していると朝になってしまう。
後日また話そうか。
どうでしたか?狐狗狸さんは恐らくガセですね。ただ単に自己暗示で無意識のうちに動かしている様なものですね。他にも筋肉疲労説などいろいろな説がありますね。
作者MINT61147020