ある冬の出来事…
大雪が降り、「屋根の雪下ろしをする…」と屋根に上がろうとする祖父に暫くすれば、お父さんが帰ってくるから…危ないから…と説得して、屋根の雪下ろしは後回しに、家族で雪かきを済ませ家の中で一息ついて、お茶を飲んでいました。
私はまだ降り続ける雪で濡れたジャンパーを乾かすため衣紋掛けにジャンパーをかけている時…
雪かきのシャベルが足りず、リサイクルショップに買いに行っていた母が戻り
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「あれぇ…雪かき…もう終わっちゃってたんだ…」
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と居間のコタツに潜り、寒い寒い…と手をコタツで温めながら…
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「おじいちゃんどこ行ったの?仏間?」
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と尋ねました…
あれ?さっきまで「ストーブに灯油入れるで…」とか何とか言ってタンク持ってフラフラしてたのに…
と仏間に見に行きました。
廊下から障子戸を見ると仏壇の前に人影が見えたので
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「お母さぁん!仏間におじいちゃん居るよぅ!?」
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と言うと
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「あっそう…じゃあいいよ…あんたもこっち来て暖まりりなさい、寒いから…聡士ぃ…あんた、もうチョット其方寄ってあげなさい…お姉ちゃん入れないでしょうっ!」
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居間に戻り、私もコタツに潜り、寒い寒い…とコタツの上にあるリモコンでテレビを付け、天気予報を見ました。
まだ降り続ける…との予報に家族皆で溜息をつきました…
お婆ちゃんが
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「大変だねぇ…私も手伝ってあげれればいいのだけれど…」
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と申し訳なさそうに顔を歪めていました。
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「お婆ちゃんは腰が悪いんだからしょうがないよ…私達でなんとかするから…それに聡士は北高、柔道部のエースだよ!?力技ならこの子に任せときなって…ねっ?聡?」
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弟の聡士に言うと、本当に嫌そうな顔をしながら寝っ転がり、今週号の少年ジャンプを開いていました。
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「おじいちゃん、何してるのかしら?」
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母がお茶を啜りながら、気にしはじめたので…
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「釣りの道具でも手入れでもしてるんじゃないの?」
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と弟の読んでいる『銀玉』を横から覗いて読んでいました。
その時、玄関が開く音がしました…
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「ただいま〜!おーい屋根の雪、降ろしてくれたのか?誰がやったんだ?聡士かぁ?!」
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と、玄関でわけの分からないことを叫んでいました。
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「誰も降ろさないよ!?おじいちゃんがやろうとしたけど、お父さんがそのうち帰るからって止めたもん!危ないでしょう?足でも滑らせて下に落ちたりしたら…」
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「降ろしてあるぞ!来て見てみろ!」
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はっ?
と驚き、外に見に行くと…
確かに全て降ろされ、また下に三十センチを超える雪が積もっていました…
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「何これ…勝手に落ちたんじゃないの?もし降ろしたんなら下に降ろした雪も片付けるもん…」
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その時、ざわざわ…っと嫌な予感を感じました。
慌てて、仏間に駆けて行き障子を開けて愕然としました…
祖父が居ない…
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「お父さん!?おじいちゃん…おじいちゃんが屋根に登ったんだよ!
もしかしたら、落ちたんじゃ!?」
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その言葉に驚き、家族全員が飛び出してきて、「どう言う事だ!さっき仏間に居るって言ったじゃないか!?」
と、私を責めました。
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「だって!本当に居たもん!!」
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玄関に行き、祖父の長靴を探しました…当然ありませんでした。
急いで皆で外の雪の中を捜索すると、雪の下から冷たくなった祖父が出てきました。
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『救急車に連絡して病院に…』
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その流れを取ろうにも、大雪のせいで救急車もなかなかやって来ませんでした…
必死になって、父が蘇生を繰り返しましたが…
救急車の来た時には、既に手遅れでした。
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あの時、障子の向こうに居た影は…
祖父の霊だったのでしょうか…
その後、大雪が降るたびに
あの時もっと早く気付いていれば…
とあの日の事を思い出します。
作者ナコ
柔道部所属、斎藤というキャラクターはシリーズ27と28に登場してます。ご覧になって探して見てください!