今回は心霊系ではありませんが、一歩間違えれば「死」なお話です。
都会で、それも日本ではあり得ない経験であり、何時ものように、文章にすると全く怖くないですがよろしければお付き合いください。
我が家にはケビンという大型犬がおりましたが、シェパードのような精悍な黒マスク、立派な体躯、冴え渡る頭脳を持ち合わせた犬でした。
彼のお散歩は私と弟の役割でした。
私がまだ中学生、弟が小学校低学年の頃、25kgを超えるケビンを連れ、近所の公園へ行きました。
初夏の頃なので六時をすぎてもまだ明るく、併設されたグラウンドでは野球部?が練習しており、大変賑やかでした。
公園中ほどへ着くとケビンがふと、立ち止まりました。
私と弟はケビンに従って立ち止まり、彼の動向を見守りました。
ケビンは少し離れた大木の上の方を見ています。
彼に従い私も何気に視線を上へ移すと。
その大木の枝にエメラルドグリーンの大蛇がトグロを巻き、鎌首をあげてこちらを睨んでいました。
視線はもちろん、弟です。
色が白く、華奢で小柄だった弟は、よく妹と間違えられました。
スコップと新聞紙、ビニール袋を持ち、薄着で無防備に佇む彼は丁度良いエサに見えたのでしょう。
あまりお互いに刺激を与えてはいけない、そう思い、ケビンを見てみると。
ケビンも私の方を見ていました。
「あ、なんか急にトイレ行きたくなってきた、一旦帰ろか。」
「え〜、まだ来たばっかりやん。ケビンと待っとくからお姉ちゃん一人でいってきたら?」
「いや、トイレ済んだらコース変えるから。」
「別に変えんでもええやん。」
「ケビンが飽きたら困るやろ。」
あまり意味のない理由を付けて自然体を装い、その場を去りました。
もぉ、めちゃくちゃ怖かったです。
でも両親や、一緒にいた弟まで信じてくれず、
「あんたが狙われとったからお姉ちゃん必死で守ったんやろ。」
と説明しても
「そんな熱帯雨林におりそうな蛇、こんな街におるわけないやん。」
と、一蹴。
「でも!ケビンが一番に見つけてんで?」
「たまたま鳥でもおったんやろ。」
「ちゃうわ!ホンマにおったって!」
「はいはい、ゆ〜ちゃん大発見、おめでと〜!」
「もぉっ!」
しかし後日、近所にも何人か見た方がいらっしゃる事を知り、少し話題になりました。
家族にも私の見間違いではないと信じてもらえましたが、何よりも信頼して止まないケビンが見ていたので間違いない、改めてそう思いました。
私達の住む街は、後の平成七年一月十七日に阪神大震災により大打撃を受けた街ですが、一応、街ですので、動物園でもない限りエメラルドグリーンの大蛇なんてお目にかかれないと思うんです。
多分どこかのペットが逃げたんだろう、ということで収まり、その後エメラルドグリーンの大蛇とは誰も出会いませんでした。
あの蛇、どこいったんでしょうね。
ご拝読ありがとうございました。
作者ゆ〜
今回は一番怖くない不思議な話です。
高度経済成長期〜バブル時代にかけての頃はこんなペットもブームだったのでしょう。
我が家ではまだケビンより弟の方が小さかったので、餌食にピッタリとばかりに大蛇は鎌首をあげたのでしょう。
今思い出してもとても怖いです。