小学校でまだ『真太郎』として出会ったエリカ。
彼女とは私の転校で疎遠になったが、大学入学式で再会し、以後今日までお付き合いが続いている。
そのエリカなんだが学生時代、アルバイトでお金を貯め、大学卒業と同時にタイヘ渡った。
性転換手術を受けるためだ。
なんでも担当医師は世界的に有名らしく、数ヶ月、下手したら年単位で予約がいっぱいだとか。
エリカはバイト先のママの取り計らいにより、半年後の予約を取ることができた。
苦しい期間も乗り越え、人間的にも肉体的にも更に魅力的になったエリカ。
果たしてそのエリカがタイからとんでもないお土産をもってかえってしまった。
幸いお店のママが簡単な除霊ならできるので事なきを得たと思えたが• • •
以下、エリカのお話。
それでね、ママから聞いたお話なんだけど。
アタシがママに挨拶に行った時にね、なんか薄暗い影が見えたんだって。
で、アタシと話しながらもずっとその影に注意を払ってたんだって。
でね、ママが、じゃあ、来月から正社員としてって言った時にね、その影は正体を現したのよ。
ねぇ、ゆ〜ちゃん、メーナークって知ってる?
知らないよね。
タイの幽霊なんだけどね、メーナークって人は生前、妊婦さんだったの。
彼女はものすごい難産で、出産の途中で赤ちゃんと共に亡くなったんだって。
でね、タイ語で赤ちゃんの事をターロックって言うんだって。
だからアタシの所に現れた幽霊が、
『クッ• • • クッ• • • 』
って言ってたのはアタシがちゃんと聞き取れなかっただけで、
『ターロック』って言ってたんじゃないかしら、って。
赤ちゃんを探してたんじゃないか?って事なの。
でも今更あんな取り乱してた時の外国語なんてはっきり思い出せないし。
でね、アタシ、ママに言ったの。
そんな勝手に出てきて、赤ちゃん赤ちゃんって言われても、アタシじゃどうすることもできないし、困りますよね。
って。
じゃあね、ママが言うの。
ね、エリカちゃん、あなたは私と同じ、赤ちゃんは産めないわよね。
でも愛する男性の子供を授かりたいって一度は思うことがあると思うわ。
今、あなた好きな人がいるのかしら?と思ったんだけど。
それか、身近に妊婦さんか、その可能性のある人がいるんじゃないかしら。
ってね。
アタシ、好きな人はいないし、もし身近に妊婦さんがいたとして、じゃあなんでアタシの所に出てくるのよ。
って思って。
でね?よく考えたら、アタシの周りで妊娠の可能性のある人って言ったら。
エリカが私をじっと見る。
「え、何?」
「ゆ〜ちゃん、おめでたかなぁとおもったの。違ったらごめんね。」
そう、私はこの時、新婚ホヤホヤだったのだ。
式にはもちろんエリカにも参列してもらった。
「まだ結婚したばっかりやし。暫く作る予定もないねん。だからハズレやね(笑)」
「そっかぁ。ママに、心当たりって言ったらゆ〜ちゃんくらいしかいないって言ったの。そしたらね、アタシがゆ〜ちゃんに元気な赤ちゃん産んで欲しいな、アタシの代わりに愛する人の子供を産み育ててほしいな、って何処かで思ってるのをメーナークが察知して邪魔をしに来た。よく見てみるとアタシはニューハーフだった。どうしても邪魔したいメーナークはゆ〜ちゃんのいる日本まで着いてきた。ところがうっかりママに除霊されてしまった。」
「え〜、私がもし妊娠してたら怖かったね。」
「そうなのよ。でね、ママが倒れたのもパワーストーン、砕けたはずなのに元通りだったのも、アタシが気絶してた時夢を見てたみたいなの。」
「なるほど。ママ無事でよかったね。でもラピスラズリとローズクォーツって除霊に効くの知らんかったわ。」
「そう、それ!アタシもママに言ったの。そしたらね、ママったら、あぁ、あの子(パワーストーン)たちは女性力上げるための石よ、とりあえず何か持たせなきゃって思ったの。ですって。」
「うふふ、ママ面白い。」
かくしてメーナークはきれいさっぱり除霊出来た。
その時は誰もがそう思っていたのだ。
エリカとママの除霊奮闘記 ③へ続く。
ご拝読ありがとうございました。
作者ゆ〜
エリカではなく私の邪魔をするためにわざわざタイから日本へやってきたメーナーク。
ママの除霊が効いたと思っていたらとんでもない事になっていた。
エリカとママの除霊奮闘記 ③もよろしくご拝読ください。