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長編8
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廃病院-生贄の記録-⑥

music:2

コッ....

コッ....

B1Fにあると思われる「霊安室」へ繋がる階段は、全面コンクリート製の冷たい空間でした。

一歩降りる度に重くなる空気。

(....まるで、そのまま死へ直結しているみたいだ。

生きてる心地がまるでしない。)

階段を半分ほど降りた時でしょうか。

ガッ..コン....

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shake

「!!!!」

先程までいた手術室の、更に奥。

1Fフロアから物音が聞こえたのです。

(まさか....。)

「ノブっ!!!」

私が振り返り、来た道を戻ろうとした途端、ヒロキさんがその道を塞ぎました。

「やめとけっ!!

罠かもしんねーだろうが!!」

私は一旦躊躇しましたが、それでも私はヒロキさんを振り切りました。

「ノブの....ノブのような気がするんです!!

確認だけしてくるんで、ヒロキさんは待っててください!!!」

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バンッ!!!

手術室の観音扉を開け、暗い通路をライトで照らしながら走って1Fフロアへ出ました。

しかし、そこにはノブの姿も無ければ、エレベーターも誰かが乗った形跡はなく、1Fで止まったままでした。

(気の....せい?)

いや、確かにあの時私には、エレベーターが開いたであろう音が聞こえていたのです。

辺りをライトで照らし、周りをくまなく探しました。

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その時でした。

sound:18

「うわぁ!」

私は思わず叫びました。

1Fフロアの廊下に、あの青白い「女」が立っていたのです。

ソレはまるで私をどこかへ誘導するように、廊下の奥へと消えていきました。

「来い....ってことか。」

私は、今思えばこの時のことをとても不思議に感じています。

普段なら、そんな霊が消えていった先など行くわけがありませんでした。

それでも、どうしてかその時は着いていってしまったのです。

それが、その「女」の霊気によるものなのか、自分だけに見えた幻覚なのか。

定かではありませんでしたが、私は後を追うことにしたのです。

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music:3

「女」は、私達が一番最初に入った病室へ消えていきました。

(あそこに何があると言うのだろうか...。)

私は一人、原点である最初の病室へ入りました。

そこには、入ってきた時と同様の風景が広がるのみで、何かがある様子がないのです。

「罠...なのか?」

そこで一気に焦りと恐怖が込み上げて、私は一目散にヒロキさんの元へ戻ろうとした時でした。

(違う...まだ、あるじゃないか!)

私は、一つここで確認していないことがあることに気がつきました。

それは、私達が一番最初に廊下へ出た際に聞こえた何かの落下音。

その正体をまだ確認していなかったのです。

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私は室内をライトで照らしながら探しました。

(何かが落ちているはすだ。

手がかりになる、何かがきっと....。)

sound:18

私の目に、それは躊躇なく入りました。

そう、それは一番最初にこの部屋を見た際に気になったあの「茶色いタオル」。

私は恐る恐るそのタオルを拾いあげました。

そこには、一冊の本のようなものが落ちていたのです。

「.....生贄...記録....?」

確かにそう書かれた本。

そして、私はその中身を読んでいきました。

*************

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music:4

2008年5月14日(水)

妻が亡くなり一年が過ぎた頃、途方に暮れていた私を、ある男が訪ねてきた。

その男は、三神(みかみ)と名乗っていた。

三神は、自分は死んだものを蘇らせる方法を知り、蘇生神会という団体を作った。

貴方の奥様が亡くなったことを聞き、ぜひ協力させてほしい。と言ってきた。

胡散臭い話だったが、妻が亡くなったショックで生きる目的の無かった私は、三神の話を聞くことにした。

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2008年5月20日(火)

改めて訪れた三神は、代わりに私の経営していた病院を使わせてほしいと言ってきた。

妻が亡くなり、一年以上も放置していた病院だがそれでもいいのか?と聞くと、三神はニッコリと二つ返事で了承した。

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2008年5月21日(水)

私は三神の指示通り、病院の手術室を隠す作業を行った。

非合法なので、もし誰かに見つかるとまずいと三神は言っていた。

どこぞの映画で見たトリックだったが、これが一番コストがかからず分かりにくいだろうと思い、絵画で隠すという手法を行った。

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2008年5月30日(金)

手術室の隠蔽作業が終わると同時に、三神が一人の男を連れてきた。

男は松尾(まつお)という名前で、非常にガタイのいい男だった。

松尾も、蘇生神会の一人だと言っていた。

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2008年6月5日(木)

松尾が、一人の女を連れてきた。

女は両手両足を縛られ、目も口も塞がれていた。

私が、三神にどういうことかと訪ねると、蘇生には生贄が必要だと言った。

初めは冗談ではないと言ったが、奥様を蘇生させて、また楽しい日常を過ごしたくはないのですか?という言葉に、返す言葉が見つからなかった。

私は間違っているのだろうか?

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2008年6月6日(金)

私は女と対面した。

ひどくやつれた様子で、私の質問には一切答えなかった。

精神安定剤を投与し、私は彼女に対しての後ろめたさからなのか、病院で一番景色の良かった308号室へ案内した。

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2008年6月7日(土)

三神が、女の素性を言ってきた。

何も答えなかった彼女がよく話したなと言ったが、三神はニッコリするだけだった。

女は渡部 美佳(24)、埼玉県出身、A型。

旦那からの虐待による鬱で、樹海へ自殺しようと入ったところを三神らに拉致されたようだ。

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2008年6月8日(日)

私は女のいる308号室へ足を運んだ。

女の身体中には生々しい傷があり、ひどく怯えたように部屋の隅で震えていた。

自殺しないよう、相変わらず手足を縛られ、口には拘束具を付けられていた。

女は、私のことを終始睨んでいた。

その目が忘れられない。

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2008年6月15日(日)

女が3日ほど前から食事を口にしない。

私は食事を与えようとするが、女は私を睨みつけるだけで一切口にはしなかった。

あの女の目が恐ろしい。

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2008年6月16日(月)

私は、女を手術室へ運んだ。

目と舌を切除するためだ。

舌はもちろん自殺しないようにするためだが、目は私の意向だった。

三神に問題ないかと訪ねると、相変わらず三神はニッコリと笑って大丈夫と答えた。

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2008年6月18日(水)

目と舌のない女が徐々に衰弱し始めた。

私は、三神に蘇生はまだかと訪ねたが、まだ色々と準備がいると言っていた。

本当に蘇生など出来るのだろうか....

しかし、女のあの目を取り除いてからというもの、夜がよく眠れるようになった。

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2008年6月25日(水)

女の身体が、徐々に骨のようになっていく。

それなのに、相変わらず食事を取ろうとしない。

私がこのままだとすぐに死ぬぞと警告したが、女は目のない顔でニッコリと微笑んだ。

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2008年7月5日(土)

今朝、女は自らベッドの端に頭を強く打ち付けて死亡していた。

身体は、驚くほど軽く、私は彼女を手術室に運んだ。

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2008年7月6日(日)

信じられないことが起きた。

三神が、病院の3Fで死亡していたのだ。

私はすぐさま原因を調べてみたが、恐らく何かしらのショックによる心筋梗塞のようだった。

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2008年7月7日(月)

今度は松尾がエレベーターの中で死亡しているのを発見した。

私は急いで蘇生神会を調べたが、一切の情報を得ることは出来なかった。

結局、蘇生はできず、死体が3体集まっただけになってしまった。

そういえば、女の遺体を放置したままだ。

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2008年7月8日(火)

今朝、病院へ行くと、青白い女が何度か現れた。

三神と松尾も、彼女の仕業なのだろうか...

次は私の番なのかもしれない。

私は、明日もう一度病院に行き、真相を確かめることにした。

*************

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music:2

記録はそこで終わっていた。

裏を見ると、

「茂木外科病院 茂木 道夫」と書かれていた。

恐らく、この病院の名前と設立者なのだろう。

次のページをめくろうとしてみましたが、茶色い汁のようなものでくっついてしまっていて、見ることが出来なかったのです。

私は震えました。

そして、この女の処遇に同情しました。

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容易に想像できる女の恨み。

それが霊体となり三神達を殺したとしても、何ら不思議はない。

それほどまでに、この女の恨みが強いことを理解したのです。

それゆえに、私はノブが今どれほど危険なのかを再認識しました。

(これはかなり....ヤバイな。)

一気に押し寄せる焦りと不安。

ノブを巻き込んだのは私なのです。

自分に課せられた責任は、どんなことよりも優先しなければなりませんでした。

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(ノブだけは必ず助ける。

.....必ずだ。)

私は本をその場に置き、ヒロキさんの元へ戻ろうと廊下へ出ました。

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shake

「!!!!??」

廊下の奥、エレベーター付近に誰かがいる。

少し近づいてライトで照らすと、それはヒロキさんでした。

....が、何やら様子が変だ。

肩をガックリ落とし、顔を下に向けたままフラフラとしている。

ヒロキさんはおもむろにエレベーターのスイッチを押し、エレベーターへ入ろうとしているのです。

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「ヒロキさん!!!

どこに行くんですか!!!!」

私は引き止めるためにエレベーターへ向かおうとするものの、廊下の足場の悪さと焦りでなかなか進めません。

ヒロキさんは私の声に少し反応しこちらを見ましたが、虚ろな目をしたまま、何かに操られているかのようにフラフラとエレベーターに乗っていくのでした。

(....マズイ。)

エレベーターまで後5mという所で、無情にも閉まる分厚い扉。

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shake

ドンッ!

shake

ドンドンドンッ!!

「ヒロキさん!!!

ヒロキさん!!!!!!」

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必死に扉を叩き、名前を呼んでも反応は無し。

すると、やがてエレベーターは上へ昇っていったのです。

1F.....

2F.....

徐々に上昇するエレベーターの階数表示。

絶望感による鼓動が、破裂するかと思うほどに早くなっていきます。

3F....

3Fへ到着したその時でした。

ふっ....

shake

「!!!!!!!!」

エレベーターの電気が消えたのです。

淡く光っていた橙色のボタンも、現在階数を示していた光も。

そして、

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shake

グォオオオオオオオ!!!!

ものすごい音をたてながら、上から落下するエレベーター。

1Fにまで伝わる振動。

そして、音が自分の目の前まで達していく瞬間、時間がまるで走馬灯のように遅くなりました。

「ヒロキ....さん....。」

shake

ズガァァアァアアァァン!!!!

B1Fで、けたたましい音と地響きが病院内へ響きました。

それは同時に、ヒロキさんとの別れの瞬間でもあったのでした。

「あ.....ぁ....。」

私は、しばらくその現実を受け入れられず、その場に立ち尽くしました。

口を閉ざすことを忘れたまま、ただひたすらと。。

そして時間の経過と共に、私はそのまま床へ泣き崩れたのでした。。

続く

Concrete
コメント怖い
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海月さん、コメント&怖いを付けていただき、ありがとうございます。

今回は、恐らく皆様が疑問になっていたであろう部分を説明する意味も込めて、このような形にいたしました^_^

ぜひ、最後までお付き合い願えれば嬉しいです。
宜しくお願いします^_^

返信

次は霊安室かと思いましたがまさかの展開ですね...!
段々と病院の全貌がわかりはじめてワクワクです。

返信

はなさん、コメント&怖いを付けていただき、ありがとうございます。

映画化....夢のお話ですw
しかし、そのような評価をしていただいて、本当に嬉しいです^_^

ご期待に添える展開になるかは分かりませんが、少しでもはなさんの楽しい時間を作れたらと思います。

返信

ヒッ!これは………映画化おねがいします♡♡ヾ(o´∀`o)ノ

返信

VEILEDGOTさん、コメント&怖いを付けていただき、ありがとうございます。

数々のお褒めの言葉、大変嬉しく思います^_^

ホラー映画は、私も最近なかなかいいのが見つかりません(T ^ T)
日本のホラーも怖いですが、洋画のホラーも個人的には大好きですね。
特に、キリストなどの宗教絡みのものだったり、パラノーマルシリーズなどの本当にあり得そうなものは、ちょくちょくチェックしてたりしますw

あ、ずばり気づかれてしまいましたねf^_^;
ご察しの通り、バイオは昔よくやっていました。
ただ、全シリーズやっているのはサイレントヒルシリーズですね!
世界観、ストーリー、共にどストライクでしたw

話はそろそろクライマックスを迎えるつもりです。
ただ、このまま病院を抜けて終わりではつまらないと思いますので、もう少し手を加えられればと思っております。

ぜひ、次もよろしくお願い致します^_^

返信

ロビンMさん、コメント&怖いを付けていただき、ありがとうございます。

この先の展開がご期待に添えられるよう、頑張っていければと思います^_^

安全運転で頑張ります!笑

返信

ホラー映画好き!是非ともオススメなども伺いたいです!(笑)
そしてホラーゲームをやはりやってらしたんですね。
フラグの立て方が凄く上手かったり謎を解きながら進んで行くような感じの文章だったので、
もしかするとバイオハザード辺りをやってたりなさったのかなと思ってました!

自分自身無い頭を使いながら読んで居ます!

いよいよ話はクライマックスなのでしょうか?
相変わらずドキドキが止まりません!

次の更新楽しみにしてます!

返信

翔さん、コメント&怖いを付けていただき、ありがとうございます。

ヒロキさんの行く末、、
それはこの先のお楽しみにしていただけたら、と思います^_^

ぜひ、次のお話も読んでみてください^_^

返信

やあロビンミッシェルだ。

ひひ…まさかの展開だな…先が全く読めない…ぐう…

NAOKI氏、運転には呉々も気をつけて続きを急いでくれ!!…ひひ…

返信

ここまで一気に読んじゃったけど…ヒロキさんは…Σ(゚д゚lll)???
続き気になります(>_

返信