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中編5
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ヒキコさんと私

私は、長い間学校で所謂《いじめ》を受けて来ました。

事の発端を、今はもう覚えていません。

ただ、些細な、些細な出来事だった筈と記憶しています。

私の髪飾りがクラスのリーダー格の子と被ったとか、私が花壇の花を間違えて潰してしまったとか、そんな些細な出来事です。

そんな些細な事が発端となって、私は、長い間いじめられてきました。

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無視され。

物を隠され。

水を掛けられ。

泥を投げつけられ。

そんな日々を送っています。

私をいじめているのは《○○さん》です。

先生は知りません。

知らない振りをしているのかも知れません。

両親は知っています。

でも、お母さんは

「貴方にだって悪い所があるのよ。」

と言って、助けてくれません。

お父さんには、この事を言うと酷く機嫌が悪くなるので、話すのを止めました。

なので、私は今日も独りです。

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●●●

学校が終わって直ぐに家へと帰ると、機嫌が悪いお母さんと二人になってしまいます。

なので私は学校が終わると、近所にある人気の無い神社へと向かいます。

森の中にある神社です。

人は、滅多に来ません。

私は其処で、夕陽が沈むまで座っています。

宿題はしません。

家に帰った時、部屋に行く理由になるからです。

その日も、私はブラブラと足を揺らしながら縁側に座っていました。

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●●●●

その日は雨降りで、糸の様に細い雨が降っていました。

私は、ポタリポタリと屋根から垂れる雫を見ていました。

すると、ヨロヨロとよろめきながら、一人の女性がやって来たのです。

その人は、大きな傘と、大きなマスクをして、白いワンピースを着ていました。

雨宿りをしに来たのでしょうか。

彼女は、私から少し距離を開けて座りました。

「・・・今日は」

私がそう言うと、彼女は小さな声で

「・・・・・・ゴンニヂハ。」

と言いました。酷くしゃがれた声をしていました。

それが、私と女の人との出会いでした。

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●●●●●

それからその人は、毎日毎日、神社へとやって来ました。

季節は梅雨で、毎日毎日、雨が降っていました。

私達は、少しずつ話をする様になって行きました。

「ドモ・・・ダヂハァ?」

「居ません。」

「・・・ナァンデェ?」

「○○さんと言う人が居て、私を苛めるんです。」

「ゼンゼェバァ?オドヴザンオガァザンバァ?」

「・・・思ったより、助けてくれないです。」

「・・・・・・・・・。」

私がそう言うと、彼女は少し黙って、ゴソゴソとワンピースのポケットを探りました。

「・・・ァイ。」

彼女が突き出した手には、一本の棒つき三角飴が握られていました。

「・・・ありがとうございます。」

私が飴を受け取ると、彼女はマスクの下で小さく笑いました。

「ギィレイ。」

「・・・綺麗?」

彼女が、神社の柱を指差しました。

其処には、一匹の雨蛙が張り付いていました。

目に鮮やかなエメラルドグリーン。

「・・・綺麗ですね。」

女性が今度は、私の事を指差します。

「ニデルゥ。」

「似てる?私に?」

私がそう聞くと、彼女は嬉しそうにガクガクと頷きました。

「ニデルニデルゥ。」

「・・・ありがとうございます。」

誉めてくれたのかな、と私が思っていると、彼女は唐突に言いました。

「・・・ワダジ、ミニグイィィ??」

彼女の顔には、酷い傷が付いていてました。

「そんな事無いですよ。」

「・・・・・・・・・ゾゥ。」

そして、彼女は立ち上がりました。

「・・・・・・ザョゥナラァ"」

「・・・さようなら。」

そして彼女は、ユラユラと石段を下りて行きました。

次の日から、彼女は神社へ来なくなりました。

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●●●●●●

彼女が神社へと来なくなってから暫くして、学校で《ヒキコさん》と言う噂が立ち始めました。

親から虐待され、いじめられて、手足を縛られて引きずり回された妃姫子(ひきこ)さんが、雨降りの日に出て来て、子供を引きずると言う話でした。

「私は醜いか?」

と聞くのだそうです。

《美しい》と答えると、ヒキコさんに気に入られて引きずられます。

《醜い》と答えると、怒って引きずります。

《普通》と言っても、引きずられます。

ですが、ヒキコさんは、いじめられている子供は引きずりません。

昔に自分をいじめていた子供と、同じ名字の子供も怖くていじめられません。

でも、そんな事私には関係ありません。

今日も私は、いじめられていました。

なので、ヒキコさんには引きずられません。

私はまた今日も、あの神社へと向かいます。

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●●●●●●●

次の日。

○○さんが学校を休みました。

雨降りの日でした。

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その次の日も、休みました。

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その次の次の日も、休みました。

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その次の次の次の日も、休みました。

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その次の次の次の次の日も、休みました。

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そうして、○○さんは休んだまま、この学校を去って行きました。

噂では、ヒキコさんに連れて行かれたのだ、との事でした。

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●●●●●●●●

○○さんが居なくなると、クラスメイトは、掌を返した様に私と仲良くしてくれました。

私は、最初こそ警戒したり、クルクルと態度を変えるクラスメイトを軽蔑していましたが、何時の間にか、友人と遊ぶ楽しさで忘れていきました。

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●●●●●●●●●

ある日、私は友人の一人に、神社に来ていた女の人の話をしました。

すると、彼女は驚いた顔をして言いました。

「それ、ヒキコさんだよ!!」

私は驚きました。

だとすると、彼女は・・・・・・。

あの時、私が○○さんにいじめられていると言ったから・・・・・・。

「・・・ごめん。ちょっと先に帰るね。」

私は、ランドセルを背負って、昇降口へと駆け出しました。

「ねぇちょっと!!雨降ってるよ!!濡れちゃうよ!!」

友人はそう呼び掛けて来ましたが、私は振り返りませんでした。

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雨の降る中、神社へと向かいます。

石段を駆け上がると

其処に、彼女は居ました。

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●●●●●●●●●●

雨の中、彼女は立っていました。

私はゆっくりと彼女に近付きました。

彼女がそっと、マスクを外します。

顔にはやはり酷い傷が付いていてました。

彼女が、ニッコリと微笑みました。

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ミヂッッ・・・!

ミ"ヂッッヂュッ・・・グヂャッ"ブヂッグヂャッグヂュグヂジュゥ・・・!!

彼女の頬が裂け、肉が露になりました。

「え・・・・・・?」

唖然としている私に、彼女は聞きました。

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「ワダジィバァ・・・ミニグイガァァ?!」

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○○○○○○○○○○○

私は、気付きました。

《ヒキコさん》が引きずらないのは、

《いじめられている子供》なのです。

いじめられていない《私》等、彼女にとっては、もう、只の《子供》にしかすぎません。

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引きずる対象である《子供》に。

Concrete
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こわ…もう雨の中歩けないですw
あ、あとすごく面白かったです(´・ω・`)

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だいぶ前からこの話好きだった!

この前やっとアカウント作れたから、
怖い付けましたwww

元ネタの方ゎ出てる?

返信

翔さんへ
コメントありがとうございます。

あ、元ネタと言っても、そっちは怖さ皆無ですよ。
いつか書きます。
質問の選択肢、どれを選んでも引き摺るって・・・。
最早質問の意味、無い気がします。

いじめられっ子だけが対象外って、何だか納得いきませんよね・・・。

返信

だいちゃんさんへ
コメントありがとうございます。

ムシャクシャしてbadendにしました!
反省も後悔もしておりません!!

返信

元ネタ有るんだ(ーー;)
いずれ拝見したいです(^^)
ヒキコさん…出くわすとほぼ引きずられるんですね(ーー;)
苛めっ子だけに狙いを定めてほしいですね(^^)

返信

ナツさんへ
コメントありがとうございます。

そう言って頂けると嬉しいです!
本当にありがとうございます。

返信

絶望さんへ
コメントありがとうございます。

遊びから出来た妖怪・・・。
としたら、矢張、僕の友人が出会ったのはヒキコさんと違うんでしょうか。
今となっては、知る由も有りませんが・・・。

返信

あーやんさんへ
コメントありがとうございます。

ありがとうございます。

あの音は、鶏肉を捌く音と、ビーフジャーキーや燻製イカを食い千切る音を参考にしました。

落ち、やっぱり救いが無さすぎでしょうか。
この話を書いた時、寝不足とデータのぶっ飛びで苛ついていたんです・・・。

返信

ロビンMさんへ
コメントありがとうございます。

ヒキコさんは《引っ張るぞ!引っ張るぞ!》と言うと怖がって退散する様です。

・・・人外になってもなお、引き摺られるのを恐れているんですね。
これが世に言う《PTSD》と言う奴なのでしょうか。

返信

あー…想像してしまった……。
怖っ。

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人間が妖怪化するのは
それぞれ理由がある
そのなかでひきこさんは、ある人たちが遊びで作ったのですが 怨霊達の集合体がひきこさんだと聞きました

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音の描写がリアルで...
てか全部が怖かったです。。ひきこさん、意外といい人だと思ったら...そんな落ちが来るとは。。。

返信

やあロビンミッシェルだ。

ひ、ヒキコさん怖えええ!!

私氏逃げろーーー!!

口避け女氏の様に足メチャ速そうだけどとりあえず逃げてくれーーー!!

返信

Uniまにゃ~さんへ
コメントありがとうございます。

この落ちは、《もしヒキコさんが本当に、自分のルールに忠実だとしたら》と思って考えた話です。

本当はもっとハートウォーミングな話だったんですよ。

返信

MEGさんへ
コメントありがとうございます。

実話の方では、少し落ちが違います。
経験したのは僕の友人です。

何時か書けると思います。
気長にお待ち頂けたら、幸いです。

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切ないな(T_T)虐められてないと引きずられちゃうのかぁぁ

返信

ぶちぶちが想像できて、痛いやら怖いやら痛いやら怖いやら..

いじめられてる子供の
味方までは..

いいやつじゃん(*≧∀≦*)

って思ってだけど..

そうじゃないと引き回しの刑なのは..

いやぁぁぁ((((;゜Д゜)))

実話が元ならまた実話も読んでみたいです☆

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