wallpaper:126
引っ越して来たばかりで道を
知らなかったから、
いつも大通りをバイクで通っていた
通勤時間帯
車の量も多いけれどトラックの数も
凄まじい
ロッカールームで着替えながら愚痴る
トラックが怖いし渋滞もひどくてさー
同僚から「裏道、知らないの?」と言われ教えてもらった
nextpage
次の日から、ずっと時間は短縮されて
快適になった
大通りを左折すると、いきなり急な
カーブになる
それからは線路沿いに狭い道が続く
車もすれ違えない道だったからか車は
通らず、目の前は畑一面
慣れてくると、かなりのスピードで走り抜けていた
途中で1メートルもない踏切を渡る
唯一、一旦、停止する場所
それでも踏切はタイミング良くいつも開いていた
nextpage
あの日まで、遮断機の音など聞いたことも
ないし立ち止まることもなかったんだ
あの日まで……
nextpage
小雨が降っていた、初夏にしては肌寒い
初めて踏切で引っかかる
電車はなかなか通らない
あーっ!もう!ついてない
悪たれた
……………………………
あれ?
………………
バランスが悪い事に気がつく
バイクにまたがってフラフラしてたから
気がつくのが遅れた
右に傾く……それは服の右側を
引っ張られてるから…だった
えっ?…………
踏切が開いたのでアクセルを
思いっきり回し駆け抜ける
それが全ての始まりだった
nextpage
それから、気にはなっていたが別に
意識して時間調節したりは
しなかったが、偶然か…
踏切の遮断機はいつも降りていて
警報機がなっている
異変はそれだけじゃなかった
線路の前で止まってる私の手首を
誰かが……掴んでる
靴を触ったりしている感覚
でも、姿は見えなかった
今までも道路を歩いていた時に服を
引っ張られて、その方向を見ると
花が供えられていたりしているような
事は、たまにあったりしていたので
それほど怖いと思わなかった
その道を使いたかったし……
反応しないでジッとしていればいい
反応してはいけない
反応したら…………………
nextpage
ある日、ちょっと興味がわいて
同僚に聞いてみた
「あそこの踏切で何かあった?」
「あんな小さい踏切で何もないしょ」
同僚は即答した
8年めの同僚が知らないくらいだから…
何もないんだろう
nextpage
3ヶ月が過ぎた頃
仕事の帰り道に踏切の前でいつもの
ように電車が通るのを待っていた
体の方に全神経が集中する…
もう癖になっていた
誰かが触る感覚
顔は真っ直ぐ反対側を向いている
でも、きっと目は何者か探るように
動いていたんだろう
ふと、向こう側に色の付いた物に
目がとまる
それは花束だった
nextpage
電車が通って踏切のバーが上がる
反対側に行き、花束をマジマジ見た
隣にお線香の焚いた後もある
御供えの花だよな
思わず……
つぶやいてしまったんだ
「やっぱ、何かあったんじゃんか!」
その瞬間、ゾクっと鳥肌がたつほどの
冷たい感じがした
周りの音も消えたように静まり返る
まるで時間が止まって動いているのは
私だけのよう
nextpage
え?えっ?
あまりの静けさに鼓動が早まる
…………………………
………………………………
……………………………………
「フフフッ……ワカッテタノカヨー!!!」
いきなり怒鳴り声がしたので驚き
バイクごと倒れそうだった
なに………………!!!
声がした方に目が行く
花束の周辺に目をこらしよく見る
線路の石と石の間に目があった
え?!
……………………
限界までバイクを倒し近づき見る
まるで石の下に人間が埋まっているかの
ようにそれはいた
白内障のように混濁した眼球
鼻は半分なく窪んでる
少し見える口は干からびて
黒く変色した血?汚れがついていた
わぁーーーーーーーーーーーーっ!!
叫んだ
nextpage
バイクで一本道をスピードを上げて
走り出す
大通りに出ると普通に車が走っている
いつもの光景だった
ヤバイ…………
目眩がしたので道のはじに停めて
深呼吸をする
何回も何回も
近くのホームセンターに寄り
ペットボトルの水を買いベンチを見つけると
倒れるように座り込んだ
水をゴクゴク飲んだ
頭から怒鳴り声が離れない
「ワカッテタノカ」
知られた………………
触られてるのを解っていたことを……
しかも初めて姿も見た
その日の夜、なかなか寝付けず
もうろうとしていると白昼夢
のような感じの映像を見た
誰かのお葬式の場面だった
やたら、何て言う物?看板のような
故人の名前が書いてある
⚪︎⚪︎⚪︎⚪︎様 葬式会場みたいなのが
強調される
嗚呼、自分の名前を教えたいんだな
ダメだよ
何もしてあげられない、出来ないから
何度も心の中でつぶやいた
夢を見たのは1度だけだった
nextpage
次の日から裏道は通れなくなった
その手の物には、あんまり怖さを感じない私も
今回はヤバイと感じたから
あの道は魅力的だったから残念だった
この話しは4年前に本当にあった話です
地縛霊などは、その場所に縛られたり
するといいます
その、たぐいでしょうか
私に何か伝えたい事があったようですが…
勘弁ですよね
次に気付く人を今でも探しているでしょうか……
あの石の下から
作者あこ