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友人が体験した話でございます。
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私はお母さんが嫌いです。
お母さんも私の事が嫌いだと思います。
本当のお母さんじゃないから、私の事が嫌いなんだと思います。
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「いつからお母さんが嫌いなの?」
「いつからだろう、わからない。本当のお母さんは私が5歳の頃に亡くなったの。それから一年位して新しいお母さんがきて....」
どうしてお母さんが嫌いなのか思い出せない。いつからなんだろう...
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「お母さんから何かされたの?いじめとか?」
「....うーん。いじめられたような、何もされてないような。」
思い出せない...
私は今も実家暮らしでお母さんとお父さんと妹と住んでいる。
妹は新しいお母さんの子供だから、お母さんに溺愛されている。
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「妹とは仲良いの?妹と比べられたりするの?」
「妹とは仲良いよ。比べられたりとかは無いかな。でも、お母さんと二人きりの時はいつも緊張していた。」
「どうしてお母さんと二人きりだと緊張するの?」
「怖いから。」
どうして怖いと思うんだろう...
何故、お母さんが怖いの?どうして...
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「お母さんに嫌な事されたりしたとか?お母さんはどんなお母さんだったの?」
「嫌な事...嫌な事....され....あ」
嫌な事...嫌な事をされた....思いだした。
私はお母さんに嫌な事をされた。
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「嫌な事をされた....でもなんだっけ..」
「...何か嫌いな物ある?食べ物とかお化けとか虫とか...」
「虫...?....虫....虫!!ああ!!」
思い出したくない映像がフラッシュバックした。鮮明にあの時の記憶が蘇る。
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小学三年生の春の晩、私とお母さんは二人で留守番をしていた。妹は塾に行っていて家にはいなかった。
「お母さんーお父さんまだかなー」
「....,,」
「ねぇお母さんーお父さん今日も遅いのかなー」
「.....貴方はお父さんが大好きなのね。」
お母さんは洗い物をしながら答えた。
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「うん。お父さん大好きだよ。...きゃっ」
リビングの床に小さな蜘蛛がいた。
私は虫が大嫌いで、中でも蜘蛛は特に嫌いだった。
「お母さん!蜘蛛!蜘蛛がいるよ!怖いよ取って取ってっ」
お母さんはただニコニコしながら此方をみているだけだった。
「蜘蛛さんだって、貴方が怖いわよ。」
「やだー怖い怖い!」
私はリビングの端へ逃げた。お母さんは終始笑顔で此方を見るだけ。
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いつの間にかお母さんがキッチンから消えていた。
「お母さん?お母さんどこいったの?」
声をかけるが返事がない。
テレビをつけて画面の映像をぼんやり見つめる。
「ねぇー、来てちょうだい。凄いものがあるわよー」
お母さんの声がする方向へ耳を傾ける。
どうやらお風呂場にいるよだ。
「なにー?お母さんどうしたの?」
お母さんのいるお風呂場へ向かった。
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「ほらほらー見てよ、これ。」
お母さんはお風呂場で私に背を向けるように立っていた。なにやら右手に何か持っている。気になり私もお風呂場に入った。
「お母さん、どうしたの?」
「ねぇ、見て!ねぇっ!」
そう言ってお母さんは私の方へ振り向き、何かを此方に向かって投げた。
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「わっ!...お母さん...なんか...なんか顔に...顔についたよ!なにこれ取って!取ってよ!!!」
「あらら、ごめんなさいね。今取ってあげるから動かないでね。」
その時わたしの顔に何がついているのかわからなかった。硬くて薄い毛のような物が顔の皮膚に当たった。
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「ねぇ、お母さん!早く取って!取って!お母さん!お母さん!」
「あっはははは...今取ってあげるから....それっ!」
お母さんが棒のような物で私の顔を叩いた。すると....
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ぶわぁああぁあぁああーっ
私の顔についた物から何かがいっせいに飛び出した。
「わぁああああーー!!!」
私の顔についたものは大きな足長蜘蛛で、
お母さんが叩いた事により蜘蛛の子がいっせいに飛び出したのだ。
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私は叫んだので口の中に数匹入ってしまった。
「あっはははははははははは」
お母さんは私の顔を見ながら笑い、シャワーの冷水をかけた。
私は大嫌いな蜘蛛が顔についていること 口の中に数匹入ったことにより気絶した。
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「君のお母さん、怖いね....」
「やっと思いだした....だからお母さんが嫌いなの。」
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あの時お母さんはとても嬉しそうに笑っていた。
お母さんも私の事嫌いなのかな。
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<おしまい>
作者群青
虫の話はゾワゾワします。
こんな事されたらトラウマになりますね。