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短編2
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目を瞑って5

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 秋から冬に変わる季節。大学の仲間で飲み会をやった。合コンな近いが、終わる頃には人数が増えに増え、帰ったメンバーも把握出来なくなっていた。

「いたのね」

「東城」

 東城 小夜子。ほぼ夜型生活のため、講義の出席カードを出してやっている。お礼はテスト範囲だ。完璧に当ててくるので、試験が楽しいという不思議な感覚を覚えてしまった。

「帰るの?」

「うん、遅いしね。東城は? あ、電車」

「ないわね。歩くわ」

「行くよ、俺も」

 まず、何が起こるとかあり得ないだろうが。小夜子には不思議な力がある。ヤマカンだけならかわいいものだが、小夜子に関わると、自分の命が危ないのだ。

 と、みんなが言う。

 小夜子にフラれ、悪口を言いふらしたアイツは早朝ランニング中に野良犬に噛まれ、狂犬病の疑いだとかで入院を余儀なくされ、単位を落としかかっている。小夜子のきれいな黒髪にガムを吐き飛ばしたアイツは、まあ、きっかけにしたかったらしいが、強風に飛んできた看板に手首を切断された。悪魔の子さながらな話が山のようにある。

「あ、ハンカチを返してもらってないわね」

「え」

 あれは何かのお礼じゃなかったかなと記憶を探る。

「ごめん、じゃあ、うち、寄ってって」

 大学からも最近始めたバイト先からも徒歩圏内のワンルーム。ここからも十分かからないだろう。小夜子は酒でピンクに染まった頬を撫でながら歩いている。

「上がってく? 泊まってってもいいよ」

「お水、飲みたい」

 二階の奥で玄関が通路から見えない。小夜子はどうするのかと思ったら迷わず靴を脱いだ。白い足が丸出しになる。白い手がちゃんと玄関の鍵を締めている。

 小夜子は差し出した水を飲むとハンカチのことを思い出した。

「ちょっと待って、探すから」

 白いハンカチだった。洗っただろうか。物が少ない部屋を見回す。

「それよ、あるわ」

 本棚の隙間を指差した。確かに本じゃないものが挟まっている。

「ハンカチ、白だったろ?」

 黒い背表紙を見せるそれを掴んで引っ張ると出ていた場所だけが黒くなった、白いハンカチだった。

「うわ、ごめん」

「いいの。ねえ、眠れてた?」

「え」

「クマがひどかったから。ちょっとでも眠れたらいいなと思ったの」

 ハンカチを返すと玄関が開いた。妹の希沙が飛び込んできた。

「兄貴、久しぶり。あら、お客様? ごめん、帰るわ」

 希沙は小夜子と目が合った途端、踵を返して出ていった。

 玄関の鍵はアタシがかけたのにと、小夜子が笑った。

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