会社員のOさんは旅行好きだ。半年に一度は有給を使い、親しい友人達と地方を旅している。
ある秋の日。Oさんは会社の同僚と有名な滝を見に旅行に出掛けた。滝の近くには紅葉が綺麗に見えるという評判のスポットがあったため、それも兼ねてのことである。
滝の近くまで来た二人は写真を撮ったり動画を撮ったりと楽しんでいた。二人の他にも多くの観光客が来ており、辺りは賑やかだった。
やがて写真や動画を取り終えた二人が滝を見ていると、隣にいた若い女性が金切り声を上げた。紺色のカーディガンを羽織った若い女性である。彼女は滝のてっぺんを指差し、叫んだ。
「見て!見て!あそこ!」
驚いた二人がそちらに目をやると、今にも滝に飛び込もうとしている人影が見えた。声を出す暇もなく、人影はふらりと滝に飛び込んでしまった。
「大変だわ!」
Oさんは慌てて近くの人にも知らせ、警察や救急車を呼んだ。すぐにダイバーが捜索をし、滝に飛び降りた人物はすぐに見つかり、引き上げられた。
残念なことに、飛び降りた人物は既に事切れていたらしい。遺体は青いビニールシートに包まれようとしていたが、その様子を見ていたOさんは「あっ」と声を上げた。
ビニールシートに包まれようとしていた遺体ーーーそれは紺色のカーディガンを羽織った若い女性だったからだ。
それは間違いなく、Oさんの隣で叫んでいた女性だった。
作者まめのすけ。-2