東京にいる姉のアパートに遊びに行った。前々から夏休みを利用して行く予定だったのだが、なかなか姉と予定が合わず、結局冬休みになってしまった。
久しぶりに会う姉はとても綺麗で、都会的な空気に染まった女性、というイメージだ。とても長閑な田舎町から上京してきたとは思えない。
姉は仕事も恋愛も順調だそうで、色々話をしてくれた。高校生の私は、華やかな都会の生活を楽しむ姉を、半分羨望、半分嫉妬の思いで聞いていた。
やがて夜も更けたので、姉はお風呂に入ると行って立ち上がった。私は姉を待つ間、リビングにあったノートパソコンを弄って暇を潰すことにした。
あれこれ掲示板を見ていた。すると気になる書き込みを発見した。
「このブログ、スゲェ!」
「ちょー赤裸々ww」
「ここまで書くとは……」
「ヤバいよ、これ。何考えてんだ」
「とにかく読んでみ」
そんな書き込みでいっぱいだった。ふと興味を覚え、私はそのブログを見てみることにした。
「え……、“キョーコたんのブログ“?」
それは姉のブログだった。タイトルからしていい加減だが、中身はそれを遥かに超えてヤバイものだった。
そこには赤裸々過ぎる姉の私生活が書かれていた。仕事でミスして先輩に頬をぶたれたこと、現在、妻子持ちの上司と不倫していること、彼氏とラブホに泊まったこと、自慰を週二のペースでしていること、巨乳に見えて実はパットで誤魔化していること、中学生の時、苛めから拒食症になったこと……目を疑いたくなるようなことが、面白おかしく書き綴られているのだ。
どちらかといえば控え目で、大人しい性格の姉が、まさかこんなブログを……。信じられないというより、痛々しくて恥ずかしかった。姉はブログで自分や彼氏や不倫相手のことなど、実名で表記しているようだった。これは問題だろう。
やがて姉がお風呂から上がると、私はノートパソコンのブログを見せ、「これはやり過ぎだよ」と非難した。姉は眉根を寄せ、パソコンを覗き込み、黙ってブログを読んだ。
そして呟いた。
「……これを書いたのは私じゃない」
作者まめのすけ。-2