馴染みの店で酒を飲んでいた時の話。
店で隣にいる男女2人の会話が耳に入った。
男「俺さぁ、霊感あるんだー。」
女「本当?すごいね。私の後ろに何か見える?」
男「うーん。悪いモノは見えないなぁ。けど女の人?お婆ちゃんかな?が守護霊になって見守ってくれてるみたいだね。」
女「………だったらとても嬉しいな。私はお婆ちゃんっ子だったから。」
男「えっと、、、何か悪い事言ったかな俺?気を悪くしたら謝るよ。ごめん!」
女「違うの。」
男「?」
女「気を悪くしたんじゃないの。私のお婆ちゃん生きてるから。」
男「あっあぁ。じ、じゃあ先祖の方かな?」
慌てて身体を動かしながら説明する男。
妙に口調が早くなり饒舌になる。
女「気を悪くしないでね。実は私も見えるんだ。」
男「?本当に?」
女「うん。貴方を今、すごい睨んでる女の人がいてる。ウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきウソつきって。、、、、、ものすごく怒ってる。」
男「はっははは。」
乾いた笑いをあげる男。
女「女の人、、、赤ちゃん抱いてるよ。ものすごく睨んでる。」
男「あいつは子ども産む前にちゃんと、、、あ。」
女「やっぱり。私の後ろにいる人見えて無いでしょ?」
女「ワタシノオネエサンヨ。」
男「!!!」
ガタンと椅子を倒して店を飛び出て行く男。
女は溜息をついている。
女「あぁ〜あ。やっぱりつまらない男だったな。お姉さんもお婆ちゃんも嘘なのに。」
俺「あのー。ちょっといいですか?」
女「はい?」
俺「今の話聞こえてしまいました。聞き耳を立てて申し訳ない。けど本当の話ですか?」
女「どうしてそんなこと聞くの?」
俺「貴女の後ろにいる人が怒ってるから。、、、信じてもらえますか?」
女の顔が怪訝そうになったが俺の話を聞いて青ざめる。
俺「貴女はお婆ちゃんっ子だったんですね。けどお婆ちゃんが認知症になってから鬱陶しく思いたまに暴力を振るっていた。仕事のストレスや人間関係のストレスをお婆ちゃんにぶつけていましたね?」
女「な、何を言ってるの?貴方頭おかしいんじゃない?」
俺「認知症でボケてたかもしれませんがお婆ちゃんは可愛い孫が苦しむ姿が見たくなくてワザと暴力振るわれる様に行動していたんですよ?お婆ちゃんにとってはいつまでも可愛い孫なんですよ。」
女「…そんな。あり得ない。」
俺「そんな可愛い孫が荒んで行くの見たくないそうです。貴方が殴ったのが致命傷なのはお婆ちゃんと貴女の秘密。だそうです。」
絶句する女。
俺はさらに続ける。
俺「男を食い物にしない事。男を騙す様な仕事しない事。それがお婆ちゃんの願いだそうです。」
女は涙して席を外した。
後悔の涙かお婆ちゃんとの優しい思い出を心に思い出した涙かはわからないが。
俺「これで良いですか?お婆ちゃん?」
先程のテーブルの後ろにいたお婆ちゃんは怒ったのか笑ったのかわからない表情を残して消えていった?
おそらく女の後ろに憑く為に。
お婆ちゃん。
貴女は半分守護霊で半分怨霊にしか見えませんでしたよ。
どうかバランスを崩さないでください。
崩れるなら優しい気持ちのお婆ちゃんに傾いてください。
俺はゆっくりと大好きな赤ワインであるアリアニコを口に入れた。
作者パグ太郎
実話を崩しながら書いてみました。
会話ばかりで申し訳ない。