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中編3
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白い影

music:5

僕の友人から聞いた話。

俺が小学校5年生の頃の話だ。

当時俺には霊感みたいなものはなく、普通の小学校ライフを謳歌していた。

特に仲の良かったKって奴がいて、よくそいつの家に遊びに行って、日が暮れてからKの家から帰るなんてことはザラだったな。

問題は、その帰りだ。

Kの家から帰るには、かなり不気味なところがあって、俺は苦手だった。

そこは、墓標みたいな物が山のように積まれ、その天辺にお釈迦様が立っている。

それが二つ、向かい合わせに置いてあるところだ。

ある日のこと、その日は満月で、8時頃にその2対になっているお釈迦様の前を通ったのだが、片方の足から上がなかった。

視界の下に白いものが見えたので、地面を見る。

そこには、ひび割れたお釈迦様の頭が転がって、こっちをジッと見据えているように見えた。

言葉が出なかったね。

その時だ、お釈迦様の下の墓標みたいなところに、白い影が見えた。

全身真っ白で、凹凸もなく、人型であることがやっと分かる。

そんな影だった。

不意に影が俺に喋りかけた。

「…俺のこと、見えるの?」

俺は無言で頷く。

「…君、よくここで見かけるね。」

優しい声だった、自然と恐怖心はなかった。

「そこに友達の家があるから」

と、Kの家の方向を指差す。

「…そうかい、関係ないこんな幼い子をこっちに引き摺り込むなんて、あの男も悪い奴だな」

なんのことがわからなかったので、首をかしげると

「…何れそいつに会うだろうね」

とだけ言った。

白い影は後ろを振り向く…。

正確にはそう見えただけだが。

そこからはひたすら俺の個人情報を洗いざらい喋らせた。

「こっちのお釈迦様を壊したのは貴方なんですか?」

と、問いかけたのは俺だ。

影は違うよ、続けて

「…君は遅かれ早かれ、壊したやつに会うだろう、その時は…」

そう言うと、影は闇の中に消えていった。

その日の深夜のこと、俺は化け物に出会った、そいつには目がなかった。

人型だが、人間ではないことはハッキリとわかった。

顔の配置はバラバラ、指も5本以上はあった。

そして…、その手には人間の首が掴まれていた。

そして言う…

『見たな』

『しゃあない、連れてくぞ』

そんなことをブツブツ呟いていた。

急に視界が真っ白になり、俺は布団の中だった。

夢だったようだ。

そんな日からだ、俺は次々と不気味な物を見るようになった。

そう語り終えると、この自称霊能者の友人は顔を上げた。

高校三年生の12月だった。

僕たちはその話の舞台となった仏像の前に2人並んで立っていた。

時計は夜の10時を示そうとしていた。

「白い影をその後見ることはなかった」

だがなと、友人は続ける。

「犯人には会ったよ」

「仏像を壊した犯人?」

僕はそう問いかけた。

「にも、会ったな」

にも?最近の彼との、会話ではこんなはぐらかされるようなことが多くなった。

「重要なのはバランスなんだ」と友人は言いながら、仏像に歩み寄る、墓標を階段のように踏みつけながら…。

「これまではこれで良かったが、これからはこいつは邪魔だ」

言うと、仏像の顎に右フックを決めた。

像の首は胴体ごと吹っ飛んだ。

墓標の上に、足だけ残して。

その刹那に、僕は聞いたような気がした。

『…この罰あたりもんが』

低く、暗い声で。

友人はこちらを見やると、帰ろうかとニカっと笑いながら言った。

彼のこの奇行の真の意味を知るのは、まだまだ先の話だ…。

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