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僕の友人から聞いた話。
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俺が小学校5年生の頃の話だ。
当時俺には霊感みたいなものはなく、普通の小学校ライフを謳歌していた。
特に仲の良かったKって奴がいて、よくそいつの家に遊びに行って、日が暮れてからKの家から帰るなんてことはザラだったな。
問題は、その帰りだ。
Kの家から帰るには、かなり不気味なところがあって、俺は苦手だった。
そこは、墓標みたいな物が山のように積まれ、その天辺にお釈迦様が立っている。
それが二つ、向かい合わせに置いてあるところだ。
ある日のこと、その日は満月で、8時頃にその2対になっているお釈迦様の前を通ったのだが、片方の足から上がなかった。
視界の下に白いものが見えたので、地面を見る。
そこには、ひび割れたお釈迦様の頭が転がって、こっちをジッと見据えているように見えた。
言葉が出なかったね。
その時だ、お釈迦様の下の墓標みたいなところに、白い影が見えた。
全身真っ白で、凹凸もなく、人型であることがやっと分かる。
そんな影だった。
不意に影が俺に喋りかけた。
「…俺のこと、見えるの?」
俺は無言で頷く。
「…君、よくここで見かけるね。」
優しい声だった、自然と恐怖心はなかった。
「そこに友達の家があるから」
と、Kの家の方向を指差す。
「…そうかい、関係ないこんな幼い子をこっちに引き摺り込むなんて、あの男も悪い奴だな」
なんのことがわからなかったので、首をかしげると
「…何れそいつに会うだろうね」
とだけ言った。
白い影は後ろを振り向く…。
正確にはそう見えただけだが。
そこからはひたすら俺の個人情報を洗いざらい喋らせた。
「こっちのお釈迦様を壊したのは貴方なんですか?」
と、問いかけたのは俺だ。
影は違うよ、続けて
「…君は遅かれ早かれ、壊したやつに会うだろう、その時は…」
そう言うと、影は闇の中に消えていった。
その日の深夜のこと、俺は化け物に出会った、そいつには目がなかった。
人型だが、人間ではないことはハッキリとわかった。
顔の配置はバラバラ、指も5本以上はあった。
そして…、その手には人間の首が掴まれていた。
そして言う…
『見たな』
と
『しゃあない、連れてくぞ』
そんなことをブツブツ呟いていた。
急に視界が真っ白になり、俺は布団の中だった。
夢だったようだ。
そんな日からだ、俺は次々と不気味な物を見るようになった。
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そう語り終えると、この自称霊能者の友人は顔を上げた。
高校三年生の12月だった。
僕たちはその話の舞台となった仏像の前に2人並んで立っていた。
時計は夜の10時を示そうとしていた。
「白い影をその後見ることはなかった」
だがなと、友人は続ける。
「犯人には会ったよ」
「仏像を壊した犯人?」
僕はそう問いかけた。
「にも、会ったな」
にも?最近の彼との、会話ではこんなはぐらかされるようなことが多くなった。
「重要なのはバランスなんだ」と友人は言いながら、仏像に歩み寄る、墓標を階段のように踏みつけながら…。
「これまではこれで良かったが、これからはこいつは邪魔だ」
言うと、仏像の顎に右フックを決めた。
像の首は胴体ごと吹っ飛んだ。
墓標の上に、足だけ残して。
その刹那に、僕は聞いたような気がした。
『…この罰あたりもんが』
低く、暗い声で。
友人はこちらを見やると、帰ろうかとニカっと笑いながら言った。
彼のこの奇行の真の意味を知るのは、まだまだ先の話だ…。
作者慢心亮
罰当たりもんガァー!!