短編2
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訪い

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深夜、弱々しくドアを叩く音で相馬さんは目を覚ました。

何時であるかはわからなかったが深夜である事には間違いなかった。

ほとほと………ほとほと………。

音は小さいけど途切れる事なく続いた。

そうした音は気になりはじめるとタチが悪い。

夜遅く帰る日が続いていたので頭が鉛のように重い。

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寝てしまおう。

あんなものは無視して……。

ほとほと………ほとほと………。

自分のマンションのドアである事は確かだった。

ドアは甲の柔らかい所で叩かれるとあんな音を出した。

目をつむりなおし、俯せた。

枕に顔を埋めると寝入って行けそうな気がしたから。

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ほとほと………ほとほと………。

無理だった。

彼女は身を起こすと確かめに行く事にした。

開ける気はなかった。

ただ自分に関係がないという事だけを確認すれば気が済んだからだ。

灯りは点けなかった。

人が起きたと悟られたくなかったし、ドアスコープを覗かれて自分の影を見留められるのも…。

寝室から狭いキッチンに出た。

夜気がひんやりと足下から這い上がってきた。

身をすくめドアに足音をたてぬようにそっと近づいた。

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ドアスコープに瞳を近づける。

廊下に人の姿は無かった。

《なんだろ…。》

彼女はドアから身を離し、戻ろうとした。

ほとほと………ほとほと………。

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ドアが叩かれた。

再び、スコープを覗く。

人影はない。

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だがドアは叩かれていた。

ほとほと………ほとほと………。

音は高い所でしていた。

見上げると天井に女が張りついていた。

伸ばした手でドアを内から叩いていた。

気がつくとコンビニの前で店員に、

「大丈夫ですか?」

と、声をかけられていた。

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