このところ、毎日のように同じ内容のニュースを見る。テレビを付ければ必ずと言っていいほど、あのニュースで持ち切りだ。毎日このニュースを見ている僕にしてみれば、いい加減飽き飽きしているのだけれど。
ごろりと寝転がり、ぼんやりテレビの画面を見つめる。そういえば、昨日もやってたよなぁ。
事件の概要は以下の通り。都内の中学校に通う男子中学生が行方不明になったことが、全ての序章だった。
男子バスケット部に所属していた○○。その日、いつものように部活を終え、友人らと途中まで帰り道を共にした。だが、友人と別れ一人になった後、自宅には戻らなかった。心配した家族があちこち捜すも見つからない。携帯電話に電話やメールをしても返信がない。夜の九時過ぎ、家族は警察に通報した。
当初はよくある家出事件として扱われた。思春期の子どもにありがちな逃避行というもので、学校や家庭に不満を感じていたり、人間関係で思い悩んだ少年少女らが家出を繰り返すのは、今の時代さして珍しいことではない。警察も形通りの簡単な捜査しか行わず、しばらくすれば帰ってくるのではないかと鷹を括っていたようだ。
だが___数日後、状況は一変する。
都内のゴミ捨て場に不審なゴミ袋が放置されているのを、近くに住む主婦が発見した。ゴミを捨てようとしたところ、異様に生臭い臭いが鼻をついた。生ゴミなどの臭いではない、もっと強烈で血生臭いような悪臭に思わず口を押えた。屈んでよくよく見てみると、ゴミ袋から人間の腕らしいものが透けて見えた。彼女は悲鳴を上げ、家に駆け戻るとすぐさま警察に通報した。ゴミ袋の中には人間のものと思われる両の腕が二本入っていた。また、別のゴミ捨て場からは人間の足が発見された。
廃棄された両腕及び両足を調べたところ、右足の甲に火傷と思われる跡があった。その後の調べで、行方不明の男子中学生の右足にもまた、同じように火傷があると母親が証言。彼がまだ保育園に通っていた時、アイロンで悪戯をして右足に火傷を負ってしまったのだと。念のため母親を呼び、確認を取ったところ「息子の火傷と同じ」と答えたという。
これを機に、事件は一気にヒートアップ。○○君は誘拐された後、バラバラに切断され、殺された。そしてその遺体は都内各所にバラまかれた___マスコミはそう騒ぎ立て、世間もまた震え上がった。残忍な殺人事件だ、猟奇事件だ、いやまだ事件は終わっていない、まだ続くのではないのか、次の犠牲者は誰なのか、犯人は誰なのか、なぜこんな恐ろしいことをしでかしたのか・・・・・・メディアは連日連夜、このテの話題で持ち切りだ。
殺人事件に詳しい専門家が番組に呼ばれて解説を行ったり、○○が通っていた中学校の生徒や保護者にインタビューしている映像が出ている。みんな口を揃えて喋っている。「これは稀に見る残忍な殺人事件だ」と。○○の両親もテレビに主演し、涙ながらに訴えている。「息子を返して下さい」と。
笑わせるなよ。殺人事件だって?
・・・・・・僕はまだ、生かされているのに。
作者まめのすけ。-3