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僕の持っているウォークマンは、今時珍しくもないが、FMラジオが聞ける。
・・・と言っても、音質はかなり悪く、音が綺麗に聞こえるポイントも日々変化するため、殆ど使ったことはない。
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ポケットから何か声のようなものが聞こえた。
探ると、ウォークマンが手に触った。
これか。
何時の間にかボタンを操作してしまい、知らない内にラジオや音楽が流れていたりするのだ。
耳にイヤホンを突っ込んでみると、女性の話し声がする。ラジオのようだった。
ノイズが時折入るが、今日は何時もよりは比較的マシに聞こえる。
どうやら怪談を話しているらしい。
若い女性が語り部で、まだ話は冒頭部分のようだ。
僕は何となく、其のまま放送を聞いてみることにした。
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主人公の女性がマンションの自室で寛いでいると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。
来客かと思いインターホンを見たが、誰も居ない。
悪戯かと顔を背けると、またノックの音。
インターホンには、やはり誰も映っていない。
死角に隠れているのかも知れない。
そう思った彼女は、玄関から直に確認しに行くことにした。
また、ノックの音。
怒った彼女は勢い良くドアを開けてーーーーーー
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ザザザザッと、突然ラジオにノイズが入った。
電波の来るポイントが変わったのだろう。
部屋の中を歩き回りながら音が聞こえる場所を探す。
然し、一向に直る気配は無い。
どうしたんだろう。電波の通り道に、何か障害物でも来たのだろうか。
僕は残念に思いながら、イヤホンを耳から外した。
・・・そろそろ寝るか。
ベッドへと上がり、布団の中に潜り込む。
其の時だった。
shake
窓から、コツン、コツン、と音が聞こえた。
ハッとして跳ね起き、窓の方を見る。
カーテンを閉め忘れていたので、ガラス戸と網戸を通して外が見えるが、誰も居ない。
気の所為か・・・?
もう一度気を取り直して布団を被り、今度は壁の方を向いて横になる。
コツン、コツン、
また音がした。
寝返りを打って窓を見る。やはり誰も居ない。
もしかして、あの話の通りに・・・
思わず窓に駆け寄った。カーテンを閉めなければ。
鍵の掛かったガラス戸。其の外側には目の細かい網戸が・・・・・・
「・・・・・・あ。」
網戸。
音がした時、網戸はずっと閉まっていた。
閉められた網戸越しでノックは出来ない。
じゃあ、あの音は・・・
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コン、コン、
自分の直ぐ隣から、ノックの音がした。
作者紺野
どうも。紺野です。
《すべてを否定する執事》というスタンプがあまりにものり姉を煽るのに便利だったため、つい使い過ぎて胸ぐらを掴まれました。
最近何だか変態な話の話しか聞いていなかったので、ありきたりな話を一つ。
FMラジオが場所によっては聞こえないのは田舎あるあるですよね?