レイジさんから聞いた話。
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学生の頃だったか、夏休みかなんかに友達4人で肝試しに行った。
友人の中に、暇さえあれば心霊スポット巡りする程オカルト好きな奴がいた。名前は青木。
ある日青木からおもしろそうな場所を見つけたから行こう!というメールがきた。断る理由はなかったから行くことに。
待ち合わせ場所は青木の家の前で、時間は12時過ぎ・・・だったか正確には覚えてない。
当日集まったメンバーは俺、青木、海、阿部。何故か俺が車を出して運転係をやらされた。
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青木以外はあんまり楽しそうな顔していなくて、海は見るからに具合悪そうだった。
「海、大丈夫?具合悪そうだ・・・」
「大丈夫大丈夫!平気だから。」
被せ気味に言うと、助手席に乗り込んだ。
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出発すると青木は怖い話をし始め、阿部は酒を飲み始めた。
青木の怖い話は海以外は聞いていなかった。
「阿部、お前飲み過ぎんなよ。」
「俺は酒強いから大丈夫だ~」
「吐きそうになったら早めに言ってくれ。」
「大丈夫大丈夫~」
既にベロベロだった。
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一時間位経って目的地に着き、車を停めて4人で歩いて行った。
「青木、ここただの森じゃん。なにが心霊スポットだよ全然怖くねーじゃん。」
阿部が青木に言った。
「ただの森じゃないんだって・・・・呪われた森なんだよ」
青木はぶつぶつ言いながら歩き出したから、3人でついて行った。
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数分歩いたところで青木が急に立ち止った。3人で駆け寄り青木の前を見ると、手作りの墓みたいなよく分からない物が置いてあった。みた瞬間、鳥肌が立ち身震いした。横に居た海の方を見ると、顔面蒼白で唇をぎゅっと噛みながらぶるぶる震えてた。
「おい大丈夫か!・・・大丈夫じゃないよな・・・なぁ青木!海の様子がおかしい、今日は帰ろうぜ。」
青木の顔を見ると、口だけ笑っていて目が笑っていなかった。目は光がない・・・・人形みたいな目。
何度か話しかけたり肩を揺さぶったりしても無反応だ。
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「阿部!阿部!青木が変になってる!おい聞いてるのか?!」
「俺さ~ションベンしてくるわ。えへへええへへええ」
涎を垂らして目の焦点が合っていない。明らかに阿部もおかしくなっていた。
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ここで騒いだらだめだと思い、冷静に言葉を返した。震える腕を力いっぱい抓った。
「あ、そう・・わかった。早く戻ってこいよ。」
「うぃ~っす」
ふらふらした足取りで阿部は用を足しに行った。
汗でシャツが胸と背中にくっついているのが気持ち悪かった。
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ガザ!ガザ!バキバキバキ・・・パキパキパキ・・・・
目の前で青木がしゃがんでなにかをしている。
「おい!なにやってんだ・・・・え」
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「バキ・・・・バキバキバキ・・・・うめぇ・・・・うめぇうめぇ~・・・バキバキ・・・」
前に置いてある墓の様な物を壊し、食べ始めた。一心不乱に口に入れるのその光景に腰が抜けそうになった。
肩を叩いたり腕を掴んでも食べるのを止めなかった。
「お前どうしちゃったんだよ!止めろよ!!」
ガシッ!!!!!
shake
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肩に爪を立てながら思いっきり掴まれ押し倒された。拍子に後頭部をぶつけたが、草や葉がクッションになりあまり痛くなかった。
青木は馬乗りになり顔を近づけてきた。
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shake
「お前も仲間になれぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!」
叫んだ青木の口から葉っぱや木屑と一緒にうねうね動く何かが飛び出してきた。
「お”お”え”え”え”え”--------」
顔に向かって嘔吐され、こっちまで吐きそうになった。
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青木の顔を殴り間合いをとった。自分の顔に付いた物を振り払い、地面に落ちたそれをみた。
虫 虫 虫!!!
ゴキブリに似たもの、芋虫、蚯蚓に近いもの、足がたくさん生えた虫が蠢いていた。
青木は自分の首を引っ掻きながら四つん這いになり、獲物を狙う肉食動物の様なギラギラした目をしていた。
阿部はまだ戻ってこない。
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ガシ!!!!!
後ろからいきなり海に腕を掴まれ、耳打ちされた。
「逃げよう・・・レイジくん。青木はもういないから・・・もう青木はいないから・・・逃げよう」
「え?青木は目の前に居るだろう!阿部もまだ戻ってきてないんだ、青木も無理やり車に・・・」
「阿部もいないんだ!青木も阿部も!いないんだよ・・・」
涙目になってたけど、その気迫に圧倒された。
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「ガガガガガガガガガガガあははははははははははははははははははー」
青木が四つん這いで此方に向かってきた。
「ひっ!」
足をめちゃくちゃに動かしながら顔を左右に振りながら追いかけてくる彼奴は、もう人間ではない”別の何か”になっていた。
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海に腕を掴まれ森の中を走った。まっすぐに車が停まっている場所には行かずに遠回りをして逃げた。
何回か躓きそうになりながら必死に走った。さっきまで海は具合悪そうだったのに、この時はいつもの海に見えた。
青木の足音は消え、俺と海の走る音しか聞こえなかった。
走りながら心の中で置いてきてしまった阿部に詫びた。
だんだん自分の車が見えてきて心が少し落ち着いた。
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海をすぐに助手席に乗せると、自分も急いで運転席に乗り込んだ。
やっぱり阿部を置いてはいけないと思い、阿部の携帯に電話した。
「なにやってるんだ!かけちゃだめだ!電話かけたら場所が分っちゃうよ!」
「やっぱり阿部も連れて帰る・・・だから携帯返してくれよ」
海は俺の携帯を取り上げるとすぐに通話を切るボタンを押して、自分のポケットにしまった。
返してもらおうと掴みかかると、遠くの方から声が聞こえた。
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「なにか聞こえる、なんだ?」
「なんだろう・・・・ん?・・・・うおおおおおおおおおおおおおおおお!」
海が大声で叫び前を指さした。
「うわあああああああああああああああああああ!」
この時、失禁しそうなくらい怖かった。
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shake
「待ってぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!待ってぇええええええええええええええええ!置いてかないでぇええええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
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阿部が四つん這いで髪を振り乱しながら此方へ向かってきた。
「うおおおおおおおおおおおおおわああぁああああああああああああああ!!!!!」
俺は車のエンジンをかけるとバックした。後ろも見ずにあんなにスピードを出して木に当たらなかったのは奇跡だと思う。
阿部との距離を離すと今度は猛スピードで直進した。だんだん阿部が目の前に見えてきたところで海が叫んだ。
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「避けないで!!行って!!!!」
避けないで阿部を通り過ぎた。ガタン!!!とか、バァーン!!とか当たった感覚が何もなかった。何もない所を走ったような感じ。後ろを振り向いたが阿部らしき人はおらず、ただ暗く不気味な森があるだけだった。
またどこからか追いかけて来られたら怖いから、すぐその場から離れた。
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見慣れた景色が見えてきたところで、海に二人の両親にどう説明しようか尋ねた。
「今日の事、なんて言えばいい。二人はどうしちゃったんだ?呪われたのか?・・・なぁ」
「・・・・・」
海は目を瞑って苦しそうな顔をしていた。海も阿部や青木みたくなるかもしれないと思い一瞬身構えた。
車を停めて様子を窺った。
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海は顔が赤く、自分の額に腕をつけて目を閉じていた。
「どうした?具合悪いのか?」
首に触れると熱く、脈が速いのが感じられた。
「お前すごい熱・・・ここに来る前も具合悪そうにしてたよな?風邪ひいてたのか?」
「うつしたらごめん。でも、今日は来ないとだめだったんだ。」
「来ないとだめ?どういう意味だ?」
この問いに海は答えなかった。
「・・・・レイジくん、悪いけどコンビニに寄ってくれないかな・・・飲み物が飲みたい。」
「え、ああ。でもまだ質問には答えてないぞ。」
「具合が悪くてもう話ができない・・・」
「なんだよそれ。」
海の言葉が引っかかったが、これ以上質問せずコンビニに向かった。
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コンビニで飲み物を選んでいると硝子に映った自分の顔が幽霊みたいでびっくりしたのを覚えてる。
格好も相当酷い恰好だった。
飲み物と氷を買い車に戻った。
海は席を倒して眠っていたが、さっきよりも表情が苦しそうにみえた。
飲み物を飲ませた後、買ってきた氷を首と脇の下に当てた。
車の中に居るのは自分と海の二人なのに、まるで独り知らない土地に取り残されたような寂しい気分になった。
運転している最中もその気持ちは消えなかった。
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もうすぐ海の家に着くという所で声をかけた。
「もうすぐ着くぞ。調子は・・・・・・え!」
shake
横で寝ているはずの海の姿が無い。あるのは飲み物と氷だけ、海本人が消えた。
後部座席を確認しても、見つからない。
海の携帯に電話しても出なかった。
「嘘だろ・・・もしかしてあの森に置いていったのか?幻覚か?夢なのか?・・・・」
自問自答しても答えは見つからない。
海の家に電話をかけて確認しようかと考えたが、時間が時間だから次の日の朝に電話して確認することにした。
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翌朝 海の家に電話するとお母さんが電話に出た。
「あの、海君はいらっしゃいますか?」
「海は一昨日から風邪をひいて高熱を出して寝込んでいるのよ。今朝熱を計ったら少し下がっていたのだけれど・・・」
「え、昨晩もお家で寝ていましたか?夜中に出かけたりしませんか?」
「ええ、寝ていたわ。」
「そうですか・・・・海君に宜しくお伝えください。お大事になさって下さい。」
昨晩自分と一緒に居た海は海じゃないのか、昨晩の出来事は夢なのか。わけがわからなかった。
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次に青木の家に電話をした。
「もしもし、青木さんのお宅でしょうか?」
「はい・・・どちら様で?」
青木のお母さんが暗い声で出た。その声を聞いて昨晩の出来事が思い出された。
「友人のレイジです。悠君はいらっしゃいますか?」
「・・・・・・・・レイジ君・・・・うぅうっ・・・・・・」
電話口で泣く声を聞いて胸が苦しくなった。
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「一週間前に孝君と一緒に心霊スポットに行くって出かけたっきり行方が分からないのよ・・・レイジ君、悠から連絡きてない?メールとかきてない?」
耳を疑った。昨晩一緒に心霊スポットに行った青木が一週間前から行方不明?なにかの冗談だろう。青木の家の前に集合して向かったのに。
阿部の家も同様、青木と一緒に出かけて行ったきり行方不明との事だった。
では、昨晩の出来事は夢だったのか・・・・何度考えても分からなかった。
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「レイジ・・・・鼻血出てるぞ、大丈夫か?」
弟に言われ鼻を触ると指に真っ赤な血が付いた。
ブーッ ブーッ ブーッ ブーッ
着信の携帯が鳴った。
画面には”阿部”の文字が表示されていた。
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「もしもし!!阿部か?今どこ・・・」
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「待っておおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!置いて行かないでよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!どうして置いていったんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお待っておおおおおおおおおおおおお!!!」
shake
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「うわああああ!!!!」
びっくりして携帯を落とした。電話口から阿部の断末魔のような叫び声が漏れていた。
弟が携帯を掴み耳に当てる。
「・・・・・・・・何も聞こえないんだけど。何ビビってんの?」
「貸せ!!」
自分の耳に当てると阿部の叫びが聞こえた。
自分以外の者には聞こえないのか?
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数日後 体調がよくなった海と会って、あの日俺が体験した事を話した。
「確かにその晩も家で寝てたんだけど、レイジ君と一緒に幽霊から逃げる夢をみたよ。レイジ君と一緒に森の中を逃げていた。」
「そうなんだ・・・。じゃあ、俺は夢の中にいたのかな。」
「わからない・・・・あの二人はどこに行ってしまったんだろうね・・・・あ、レイジ君鼻血出てるよ?」
鼻に触れてみると指に血がべっとり付いた。
ブーッ ブーッ ブーッ ブーッ
着信の携帯が鳴った。画面にはまた”阿部”の文字が。
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「阿部?!え、」
「どうする?出た方がいいか?・・・でも、なんか怖いよな」
「出ない方がいい、気がする。」
着信に出るか出ないか迷っているうちに携帯の音が止んだ。
この着信が本当に阿部からの電話だったかは分からない。
その日のうちに俺は携帯を変え電話番号も変わった。
4人で行った森について色々調べたけど、心霊スポットがどうとか呪われた云々の話は見つからなかった。
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青木と阿部の家族は引っ越してしまって連絡がとれなくなった。あの2人がどうなったのかは分からない。
あの日から月日が経ってもたまに変な着信がくる。その着信がくる前は必ず鼻血が出るんだ。多分、阿部からの電話だと思う。
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少し気がかりな事がある。
最近、阿部からの電話がかかってこない時でも鼻血が出るんだ。病院に行って診てもらっても、原因は分からない。
ただの鼻血だったらいいんだけどな。
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作者群青
誤字脱字がございましたら是非ご指摘ください。よろしくお願いします。
友人二人がどうなったのかは、分からないままのようです。
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