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私には3つ離れた妹がいる。
一人は血が繋がってる『明優音』。
そしてもう一人の『萌々香』。この子は親から酷い虐待を受け施設に入りそうになった時、私の母親が引き取った。
家も近く生まれた時から遊んでいる為特に違和感も無かった。
その上妹二人は大のオカルトマニア。
TVのホラー特集から有名なホラー映画もみるが、曰く付きの場所に出かけたり御札や禍々しいモノを収集するのが趣味だ。
しかも何故か私を含め三人とも『視える』。
怪異、怪奇、幽霊、バケモノ、、、色々な呼び方があるだろうがまぁなんでもいい。
此の世のモノではないということだ。
この話は私と二人の妹が体験した話だ。
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廃ビルから出て地下鉄の駅まで歩く。
途中コンビニに入って飲み物やらを買う。
妹二人は楽しそうにお菓子を選んでいた。
「まるで遠足だな(笑)」
そう呟いて妹達のもとに向かう。
当たり前のようにお菓子と飲み物を手渡され、二人はさっさと店を出た。
溜息をついて支払いを済ませる。
家に帰ったら請求してやろう。
金がないなら労働してもらうまでだ。
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駅に着くと明優音が切符を手渡してくれた。
路線図を見ると、ここから6駅先の駅名だった。
どれくらいの時間かかるのは分からないがまあまあかかるだろう。
席に座ると持ってきた文庫本を読んだ。
明優音はノートに何か書いていた。
そっと覗き見ると先程の事を書き記しているようだった。
萌々香は携帯をつついていた。
誰かと連絡でも取っているのだろう。
20分程経っただろうか。
私たちが降りる停車駅を告げる、アナウンスが聞こえた。
二人はもう荷物を鞄にしまった様で、私も急いで本をしまった。
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駅を出ると、だいぶ街の中心地から離れたような場所に出た。
森があって民家があってというザ・田舎を想像してほしい。
妹達が選んだ(買ったのは私だ)お菓子を食べながら歩く。
10分くらい経つと森のような場所に鳥居が見えた。
なんとなくその下を通りたくなかった。
だが通らないという選択肢は私に残されておらず、せめてもの抵抗で鳥居の際を歩く。
妹達もそうさせた。
幼い頃、叔母に『鳥居から中に入ったら真ん中を歩いてはいけない』と言われたのを思い出したからだろうか。
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中に進むと水が枯れてしまっている手水舎があった。
手を清めるのは諦めて境内の中を散策した。
小さい神社だ。
隅々までみても5分もかからない。
妹二人は写真を撮るため時間が掛かりそうだ。
仕方なく石階段に座り煙草を吸う。
未成年だということは目をつぶって頂きたい。
自分自身も未成年が吸うなんて。という事より神社、しかも曰く付きという場所で吸ってもいいのかと思った。
だがもう半日以上吸ってない。
ヤニ切れだ。
携帯灰皿もあるし、汚すわけじゃないんですよ!と誰かに言い訳をした。
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そこに白い犬と神主さんが現れた。
やべぇ。そう思って急いで煙草を消す。
バレているかは微妙だが証拠隠滅しておいて損はないだろう。
神社、神主、白い犬。
なんだかここまで揃うと白ける。
ここで何か現れても雰囲気があるのか無いのか分からない。
いや、もしかして犬も神主もこの世のモノじゃない?
な訳あるか。
こんなにはっきりくっきり影までつけて出てこられても困る。
そう思っているとドンドンそいつ等は近づいてきた。
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やっぱ煙草吸ったんはまずかったかなぁ。
だが私の横を通り妹達に声を掛けた。
『そない面白い神社でも無いでしょう。参拝客も滅多に来ない廃れた神社ですよ。』
『いえ。面白い話を聞いたので来たんです。』
『そうそう。何か曰く付き的なね。』
そう萌々香が言った瞬間、神主の顔色が変わった。
怒っているような悲しんでいるような顔だった。
『なら今すぐ帰りなさい。何を聞いたんかは知らんが興味本位で来ていいもんじゃあない。』
その言葉が一層興味を誘ったのか『嫌です。』と一言言って探索を再開した。
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何か言おうとしている神主に近づき私は尋ねた。
「曰く付き言うんは本間ですか?」
『私からは何とも。ただ帰った方がいいとしか言えん。』
「教えて下さい。聞いたらアイツら連れてすぐ帰ります。」
嫌な顔はしたが私達が帰らないという事を悟ったのだろう。
神主に敷地内にある家に案内された。
そこに住んでいると説明されるまでは、御守りや破魔矢等売る為の場所だろうと思っていた。
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玄関を入ってすぐの和室に通され、冷たい日本茶を出して頂いた。
『お前さんら。どんな噂を聞いた?』
『この神社で何かをすると何時だろうとどの時計だろうと4:44を指す。と聞いて来ました。』
明優音が説明する。
『ほうか。』
それだけ言って神主はお茶を飲んだ。
『ねぇねぇ。これってマジ?教えてーな』
「ため口聞くな馬鹿たれ。」
『構わん構わん。
その噂は本間や。
何処ぞの阿呆がこの神社で肝試しをしおってな。
それからその噂が徐々に広まり出した。
それからお前さんらみたいにその噂を確かめにくる奴は少のうない。』
「その原因はなんですか?
磁場が狂うとるとかではないでしょう。
現にここに掛かっとる時計は正常やないですか。」
『あぁ。
原因は儂にも詳しくは分からん。
ただやってはならん事をした。
それしか言えん。』
『うちらはそれが聞きたいんよ。
ざっくりでええけ教えてや』
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神主は考える様に目を閉じた。
うちらに喋ってもええもんかと。
「他言無用なんは重々承知しとります。知ってどうする訳でもないですし。ただ知りたいんです。」
それくらいしか説得の様な言葉は出てこない。
また目を閉じた。
時計の針の音だけが鳴り響く。
口を挟みたそうな萌々香もこの時は黙っていた。
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正座をしている足がそろそろ限界だなと感じた頃。
ようやく目を開けて口を開いた。
『これから話す事は口外しちゃならん。
もし誰かに話とうなっても神社の名だけは出しちゃならん。
それは守れな』
勿論。
そんな意味を含めて三人とも頷いた。
『ここはな。
神様を祀っとる場所じゃあないんや。
全くの別もんを鎮め、封印しとる場所や。
その護りを任されとるんが儂ら一族でな。
もう何千年となると亡き父から聞いとる。
その別もんを鎮めとったもんを阿呆が調子乗って壊してしもうたんや。
そこからはどうにもならんかった。
鳥居とこの敷地を囲んどる結界みたいなもんで外には出しとらんが、ここはアイツの庭になってしもうた。』
『爺さんがもっかい鎮めるとかできんの?』
『出来ん。儂ら一族は護るだけの存在。
封じるなんぞ出来もせんわ。
もう帰りんさい。
話聞いたやろ。
何かが起こってからじゃ遅い。』
萌々香はまだ何か言いたそうだったが、『有難うございました。』そう言って立ち上がった明優音に黙って従った。
二人が出て行ってから私は神主に聞いた。
「結界はどれくらい持つんですか?
持たんなったらどうなるんですか?」
神主は小さく首を振った。
『知らんでええことはこの世にいっぱいある。
これもその1つや。』
納得はいかなかったがもう話す気はないだろう。
私も部屋を出て、靴を履いて外に出た。
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白い犬が先程まで私が座っていた石階段に横たわっていた。
その犬に軽く会釈をして、神主に御礼を言って三人で歩き出す。
明優音は次の場所へ行く為、電車の時刻を調べているようだ。
まだ行くのか。と溜息をついたがこちらをチラッと見ただけで携帯に視線を戻した。
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鳥居をくぐり二、三歩歩いて振り返ると、白い犬は何処にも居なかった。
ただ何処かに行ったのか。
それとも、、、
そんな事を考えながら、駅までの道を歩いた。
作者弥織(ミオリ)
初めまして。こんばんは。
広島三姉妹シリーズ第二弾です。
至らないところ多々ありますが、怖いを押して頂けると幸いです。
誤字脱字や疑問がありましたら、コメントの方で宜しくお願い致します。
2015.9.16 弥織