つい最近気付いたことなのだが。
木葉の性格は、温厚、臆病、そして引っ込み思案に見られがちだ。・・・・・・一見。 確かに、間違いではない。
しかし、俺が思うに、其れはあくまでも彼の一面でしかないのだ。
そして、其の一面により隠されている、木葉のまた別の一面とは・・・・・・
「あの影のこと、ご存知なんですね?僕達に教えなかったのは、単に面倒だったからですか?其れとも、他に教えたくない理由でも有ったのでしょうか。」
こんな感じ。
さっき書いたかと思うが、木葉は臆病だ。其れはまごうこと無き事実だ。怖いものには悲鳴を上げるし、一目散に逃げる。
だが。生来の気性か育ちの所為か、妙な所で妙にアグレッシブになるのだ。どちらにせよ、間違い無く彼の祖父であるヒゲジジイの影響だと思うが。
殺られる前に殺る精神というか、攻撃は最大の防御というか・・・
兎も角、発動すると厄介極まりない。
というか、今考えてみると出会ってから暫く経った頃に巻き込まれたプチ家出。両親を忘れそうで怖くなったとか言ってたが、あれも、ジジイ譲りアグレッシブの所為だったに違い無い。
あの時は凄い叱られた。特にあのヒゲジジイには其れはもう・・・・・・
「もし貴方が此のままはぐらかすと言うのなら、其れでも僕は構いません。・・・自分でどうにかするだけのことです。」
あれっ何時の間にか凄い勢いで話が飛躍している。
何言ってんだこいつ。
「おいちょっと待て!何でまたそんな危険なことをだな」「真白君。着いて来てなんて、僕は一言も言ってませんよ。」「でも、お前一人でなんて無理だろ!俺も」
「はい言質取った。真白君も来てくれるそうですよ?赤の他人である僕なら平気かも知れませんが、仮にも貴方の孫です。記憶にあろうとなかろうと。どうします?危険に晒しますか?」
開いた口が塞がらない。
俺、まんまと乗せられたのか。
テーブルの向かい側を見ると、縁さんが俺と同じようにポカンと口を開けていた。
「・・・・・・君の其のやる気はなんなの。」
俺としても完全同意だ。
木葉はすました顔で答えた。
「強いて言うならば《じっちゃんの名に懸けて》僕は頑張らねばならないのです。」
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「さて、可愛い孫を人質に取られてしまった訳だが。君は一体何をお望みなのかな?」
縁さんが早くも今の状況に慣れたようだ。楽しそうにさえ見える。順応の早いジジイである。
木葉は淡々と言う。
「先ずはあの影の正体。あとは性質と撃退方法、あとは有効活用出来る部分等があれば、其れも教えて頂きたいです。」
木葉もグイグイ行ってる。さっきまでの様子がまるで嘘のようだ。
そうすると、縁さんは益々楽しそうな顔になった。
「ほほお。其れを知ってどうするの?」
「退治とまでは言いません。実力が圧倒的に足りていませんから。只、町から追い出すぐらい出来ないかと・・・・・・」
「追い出すってのは、君が?」
「ええ。」
「出来ると思ってるのかい?」
ふん、と軽く鼻で笑われた木葉。しかし、本人は眉一つ動かさず尋ねる。
「ならば、貴方がやってくれますか?」
縁さんは軽く肩を竦め、答えた。
「悪いけど、仕事はとうに廃業してるんだ。」
「じゃあやっぱり僕がやるしかありませんね。」
「其の黒い影がそんなに嫌なんだね?」
「ええ。嫌ですよ。其れだけが理由でもありませんけどね。」
「ふーん。無理だと分かっているのに?物好きだねぇ君も。」
ニマリと縁さんが笑う。
直感で分かった。縁さんが何やら企んでいる。
こうなると録なことにならない。止めなくては!
「縁さ」
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「やっぱり引き受けようか。此の仕事。復業にも時期的に丁度良いし、何かと面白そうだからね。」
「「・・・え?」」
木葉の顔が一気に輝く。
おかしい!
あのニヤケ面でこんな真面目なことを言うなんて。
「ただし、報酬はキッチリ貰うよ。」
「はい!有り難う御座います!!」
「礼には及ばない。ビジネスだからね。」
「其の、御代というのは・・・」
「何、ほんの御気持ち程度だよ。」
おかしいおかしいおかしい。
こんなの絶対におかしい。
いよいよ世界の滅亡が近付いたか。
そんなことを思いながら俺が戦いていると、縁さんはやはり老人らしからぬ口調で言った。
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「丁度、雑用を任されてくれる使いっぱ・・・基、助手が欲しかったんだ。」
「えっ?」「・・・やっぱり。」
そして其の日から、俺達の日々はまた少し非日常に近付いて行くこととなったのだ。
作者紺野
お腹を壊して偉いことになりました。休日が丸1日トイレの中で終わってしまい泣きそうです。
吐き気まで加わって祖母より先に僕にお迎えが来てしまいそうだ。
あ、そうそう。祖母の件につきましては無事解決致しました。皆様に無用なご心配をさせてしまい、申し訳御座いませんでした。
今思うと大分阿呆なことで悩んでいた気がします。