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中編3
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彼の夢と私の名前

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こんにちは。

牡丹でございます。

今回の話は、私の本名の意味に関わる夢の話でございます。

私の彼、Hさんが見た夢ですので、彼sideで話を進めさせて頂きます。

ちなみに、牡丹は本名ではありませんので、ご注意下さい。

それでは、どうぞ。

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今年の春の終わりに、俺はある夢を見た。

見覚えのない住宅街を大学時代からの友人T(※以下、Tとします。)と歩いていた。

住宅街は、真っ暗で灯りもない。月や星もない。

俺達は帰り道を探していたが、その帰り道が分からず、あちこち歩き回っていた。

何故帰り道を探していたのかは、分からない。

ただ何となく、自分達がいた場所はここではないと分かるのだ。

その感覚に従って、行動していた。

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しばらく歩いていたせいか、疲れが出てきた。

困り果てながらも、Tが「次のブロックまで行ってみよう」という目標を立て、Tと共に歩き始めた。

歩いていると、周りの路地から騒めくモノが近付いてくるものを感じた。俺達の周りにある闇に紛れて「何か」がいる。Tが言っていたブロックに着いたのはいいが、そこまで来る予感がしたせいか、Tと二人で焦り始めた。

俺は「もう一ブロックまで行ってみよう」と言い、向かった。

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俺が言っていた「次のブロック」に着くと、そこには十字路があった。街灯のような灯りがぼんやりと点いている。その灯りに照らされた十字路の真ん中には「牡丹」がいた。

俺は牡丹がいることに対しての驚きが隠せず、思わず話しかけた。

「こんなところで何してるの?」と。

牡丹は、ゆっくりと落ち着いた口調で

「何もしてないよ。それより、早く帰ろう?」と言った。

Tと俺は戸惑いながらも「そうだね。」と言い、違うブロック先を目指す。

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違うブロックを目指し、歩き始めるとあることに気付いた。

今までは真っ暗な道を歩いていたが、牡丹と会ってから街灯のような灯りがあって、薄っすらと明るい。

だが、街灯のような灯りの周りにある闇から、さっきよりも嫌な気配がした。闇に紛れているモノは、灯りがあるからか思うように近寄れないらしいが、それでも徐々に俺達との距離を縮めてきている。牡丹に会えたのは良いが、俺とTは直感で危険と判断したモノに再び追われることになったことに対して、苛立ちと焦りを感じ始めていた。

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俺とTは、感情が昂ぶり始めた時、牡丹は初めて自分から言葉を発した。

「こっちじゃない?」

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リン、と鈴が鳴るような声に、昂ぶった感情は鎮められ、牡丹が指差す方向に向かう。

指差した方向に向かい、一つの道に出た。その道は、普通に何処にでもある街の夜道だった。灯りも、ぼんやりとしたものからハッキリと物が見える明るさになった。

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さっきよりも明るくなったと3人で話していたら、牡丹はまた「こっちじゃない?」と道を進んで行く。いつの間にか、闇に紛れているモノの気配はしなくなり、牡丹の声と指差す方向で次々と道が示され、その道を歩いていく。

「こっち」とまた声を発し、方向を指差す。

その方向に向かうと、また一つの道に出た。

その道には朝日が見えた。

Tと話してやっと帰れるなと話し、これで帰れる。と何故かそう確信した。

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見慣れた天井

布団の感触

ギシギシと軋むベッド

部屋のドアの前で「起きろ」と鳴く猫の声

俺はいつも通り、ベッドに寝ていた。

薄暗い部屋の中で

「あぁ、戻ってこれた。」と呟いた。

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起きて数時間後、牡丹に夢の話をした。

牡丹は、現実に戻って来れたのは、自分の名前のせいかもと言っていた。

そういえば、以前、Yにも言われたがあった。

牡丹の名前には「道標」や「導く」という意味があると。

牡丹自身がどういう経緯で自分の名前の意味を知ったのかは分からないが、俺を夢から現実へ導いてくれたのは確かなことに変わりはなかった。

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