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男性の遺体が発見された。
現場は小さな寺の近くにある、心霊スポットとして有名な墓地。
墓地には誰もつかっていない古井戸があり、遺体はその古井戸の中に転落した状態で発見された。
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遺体には獣に引っ掻かれたような痕が無数にあり、それを聞いた近所の住人たちは、気味が悪い……と言っていた。
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亡くなっていた男性の名は、カズヤ。
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カズヤは写真をとることを趣味にし、カメラマンを目指していた。
毎日カメラを所持し、気に入った景色や建物をみつけるとすぐにカメラにおさめていた。
朝日や昼の街並みなどの日常的な写真をとるのが多かったカズヤだが、いつしか廃墟や心霊スポットにも興味を持ちはじめた。
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「なぁなぁ、今度はあの心霊スポット行ってみねぇ?
ほら、最近テレビとかで紹介されてるトコ!」
「お!いいねぇ、行こ行こ!」
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心霊スポットに行くのが好きだという共通点で知り合ったリョウタから電話がきて、誘いにのるカズヤ。
その心霊スポットがあの墓地だった。
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日が落ちはじめ、そろそろ行くか!と張りきるカズヤ。
待ち合わせ場所に着くとリョウタが先に来ていた。
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「じゃあ、早速行くか?」
「ったく、お前は相変わらずだなぁ~!
早く行きたい!って顔に出てるぞ~(笑)」
ワクワクしながらニヤニヤする俺にリョウタは呆れながら言った。
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互いにバカバカしい話で盛り上がりながら人通りの多い道を歩くと、高いビルばかりだった風景から次第にアパートや古い民家などが目立ちはじめた。
更にしばらく歩くと、小さな寺の前に来た。
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「え~っと確かこの辺のはず……
お!ここだここだ!」
寺のとなりを指さしながらリョウタがいう。
カズヤもリョウタが指さす方へ目をやると墓地があるのがわかる。
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もうすっかり日は沈み、辺りは暗くなっている。
懐中電灯の光を墓地の方へむけるとたくさんの墓石が並び、寺にあるいくつかの地蔵が不気味さを一層きわだてていた。
墓地まで行くためには寺の門をくぐり抜けないと行けないらしい。
まだ季節は夏だが肌寒さを感じる。
念のためと思って長袖してきて良かったと思う。
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「よし!行こうぜ!」
フーッと息をはき、頷くような仕草をしたリョウタが先に寺の敷地内に足を踏み入れた。
それをみたカズヤも門をくぐり抜けた。
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「何もねぇなぁ……」
「あぁ、何か出るってわけでもなさそうだし……」
コソコソ話しながらゆっくり足を進めると、古井戸がある場所に来た。
相当長い間つかわれていないのか苔が生え、口は板で塞いである。
すぐそばには祠があり、まだ夏だというのに真っ赤な彼岸花が咲き乱れている。
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「ちょっとヤバくね?」
あまりの不気味さにさすがのリョウタも怖がりはじめたのか、辺りをキョロキョロ見ている。
「あ!忘れてた!」
この心霊スポットに来た目的を思い出したカズヤはリュックからカメラをとりだしてシャッターをきる。
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「な、なぁ……
そろそろ帰らねぇか?
正直俺、ちょっとビビってんだけど……。」
カズヤはリョウタの言葉を無視してシャッターをきりつづける。
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ガタガタ……
ガタガタ……
…………………………
音に驚いてリョウタがふりむくと、古井戸の口を塞いでいる板を壊すカズヤの姿が。
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「おいおい!何やってんだよ!
バチ当たるぞ!
さすがにそれはヤバいって!!」
あわてて止めようとするリョウタを見てカズヤは笑う。
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「何言ってんだよ(笑)
俺は肝試しするためにここに来たんじゃねぇよ(笑)
怖い写真いっぱい撮らねぇと帰れねぇじゃねぇか(笑)」
そう言ってカズヤは板を壊し、古井戸の中にカメラを向けてシャッターをきる。
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風が吹きはじめ木々がざわめくかのように音をたてる。
「カズヤ!
もう俺は帰るからな!
そんなに怖い写真が欲しいなら朝まで一人で撮りつづけてろ!!」
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カズヤに対してあまりの無神経さを感じたリョウタはカズヤを残して帰っていった。
「ったく、へっぴり腰め!
あんなだから彼女できねぇんだよ!
情けねぇ野郎だ!」
カズヤは一人でシャッターをきりつづけた。
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二ャ~。
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「ん?」
何かの気配を感じて祠の方に目をやると小さな黒猫が祠の裏から出てきた。
「なんだ、猫か……
ビビらせやがって!」
桃色の首輪をした黒猫はカズヤの足に顔をすりつけてきた。
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「あ~何なんだよ!気持ちわりぃな!
あっち行けよ!」
カズヤは黒猫を蹴飛ばした。
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黒猫は目を黄色く光らせカズヤを威嚇する。
威嚇する黒猫に苛立ち、もう一度蹴り飛ばしてやろうと黒猫に近づこうとしたとき……。
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「うわぁあぁ!!」
誰かに後ろから両手で抱きつかれ後ろへ引っ張られる。
何がなんだかわからず手足をばたつかせるがどうすることもできない。
視界に黒い影が現れたかと思うとカズヤの身体中に痛みが走った。
ハサミ?包丁?爪?
何なのかはわからないが鋭く尖ったモノがカズヤの体を何度も切り裂く。
やがて古井戸の中へ引きずりこまれ、鈍い音とともにカズヤは姿を消した。
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…………カシャ。
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カズヤが古井戸へ転落した拍子にシャッター音が聞こえた。
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二ャ~。
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お腹にケガを負った黒猫を黒い影が抱きあげる。
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「大丈夫?
まったく、この男は相変わらずね……
先に帰った人みたいに早く帰れば許してあげたのに……
…………………………
なんてね……
許すわけないでしょ……!
少しは長生きさせてあげたんだから感謝しなさい……」
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「あら……」
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…………………………
カズヤのカメラが最後に撮った写真が古井戸のそばに落ちている。
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……ピラッ。
…………………………
「これはもらって行こうかしら……
なかなか良く撮れてるじゃない……
行きましょう、モモ……」
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一人の女と美しい満月がうつる写真を拾い、黒い影は去っていった。
作者退会会員
続編です(^^)
楽しんでもらえるかな~?
ウキウキ♪(笑)