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女性の遺体が発見された。
場所は女性が住むマンションから十数キロ離れた場所にある廃墟ビルで、転落死した状態で発見された。
いつも帰ってくる時間になっても帰って来ないと夫が捜索願いを出し、発見された。
…………………………女性の名は、ナオ。
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ナオは高校教師。
学生時代から成績優秀だったのを理由に、家族からの薦めで教師になる道を選んだ。
教師になりたての頃は真面目に生徒と接していたが、仕事に慣れてくると次第に生徒を見下すような態度や言葉が目立つようになった。
生徒たちからは嫌われ保護者からもクレームがくることもあったが、他の教師たちは見て見ぬふりをするだけだった。
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ある朝、テレビをつけて支度をするナオ。
時計を見ると家を出る時間になっている。
「もう行かなきゃ!」
テレビを消そうとしたとき、あるニュースが目に飛び込んだ。
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「まさかね……(笑)」
鼻で笑ってテレビを消すとナオは家を出た。
少し気になることがあり頭から離れなかったナオだが、仕事場である学校に着くと自然と忘れていった。
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「どうしてこんな簡単な問題が解けないの?」
「勉強する気ある?」
「遊んでばかりいるからアナタたちは駄目なのよ!」
「聞いてる?返事ぐらいしたらどうなの!」
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いつもナオの声がひびく教室は、生徒たちにとって苦痛の場所でしかなかった。
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今日の仕事がおわり、ナオは車で家へと帰る。
途中コンビニに寄ってコーヒーを買うと、駐車場で煙草を吸いはじめた。
肌寒い風が吹くたびに、赤茶色く染まった自分の髪を耳にかける。
左手で煙草を持ち、右手はまだ開けてない熱い缶コーヒーと一緒にポケットへ突っ込む。
煙草の煙を吐きながら日が少しずつ沈んでいくのを眺めていると、小さな黒猫が道を横切って行くのが見えた。
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「あれ?あの猫……」
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ナオは煙草を消して黒猫を追いかけた。
黒猫はトコトコとどこかへ向かって歩く。
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黒猫が姿を消した。
あ!と思いながらも更に前へ進むと、大きな廃墟ビルがたつ場所に出た。
足をとめて辺りをキョロキョロ見渡していると、また黒猫が姿を現した。
黒猫は一瞬ナオに目を合わせると非常階段と思われる階段を駆け上がって行く。
ナオも追いかけた。
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ハァ……ハァ……
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最上階まできて息をととのえる。
辺りを見渡すが黒猫の姿はない。
静かな廃墟にナオの荒くなった息だけがひびく。
冷たく感じる重い空気が更に静けさを感じさせた。
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二ャ~。
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上から鳴き声が聞こえる。
屋上か?
眉間にシワをよせながら長い通路の先を見ると、奥の扉が少し開いているのに気づく。
開けると更に上へとつづく階段が。
のぼっていくと屋上に出た。
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二ャ~。
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屋上の真ん中に黒猫が座ってナオを見つめている。
黒猫が桃色の首輪をしているのに気づいたナオはボソッと呟いた。
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「やっぱりだ……」
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ガシャーーーーン!!
大きな音でふりむくと、屋上の鉄柵の一部が壊れてなくなっている。
呆然と立ち尽くしていると、今度は壁に立てかけてある看板が倒れた。
バサバサバサバサ!!
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見上げると異常な数のカラスたちが鳴きながら円を描くように飛び回っている。
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異様な光景にナオは足を震わせ、立っていられず尻餅をついた。
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ガシャーーーーン!!
パリーーーーン!
バリバリ!!
ガラガラガラ!!
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次から次に何かが割れたり壊れたりするような音が聞こえてきた。
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何かを確信したナオは震える手で耳を塞ぐ。
「ごめんなさい……
ごめんなさい……!!」
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ナオは階段を駆けおり扉を開けようとするが、ドアノブをいくら回しても開いてくれない。
何かで塞がってしまったようだ。
もう一度屋上に駆け上がり下へおりるところはないか探すが見当たらない。
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カツンカツンカツンカツン……
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誰かのヒールの音が聞こえる。
近づいてくる!!
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「きゃあぁぁあ!!」
屋上の真ん中をみた瞬間ナオが叫んだ。
黒猫の横に誰かいる!!
誰なのかわからない黒い影がナオの方へと近づいてくる!!
ナオは後ろへ逃げることしかできない。
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「あ……」
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とうとう鉄柵のところまで来てしまった。
これ以上逃げられない。
ナオが黒い影に向かって叫ぶ。
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「あ、貴女でしょ!
貴女なんでしょ?!
あの二人を殺したのも貴女なんでしょ!!
黙ってないで何とか言いなさいよ!!」
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黒い影はナオの目の前までくると、真っ赤な唇でニヤリと笑いナオを屋上から突き飛ばした。
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ナオの声は遠くなりカラスたちの鳴き声によってかき消された。
辺りが静かな日暮れに変わる。
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二ャ~。
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「もう遅いわよ……
今さら謝るなんて……
散々人を見下しておいて……
貴女が教師になるなんて許さない……
フフフ……
あの二人と仲良く後悔することね……」
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二ャ~。
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拳を強く握りしめる黒い影に黒猫が顔をすりつける。
黒い影は黒猫をそっと抱きあげ頭をなでる。
なでられるのをノドを鳴らしながら喜ぶ黒猫に、黒い影は優しく微笑むとその場を去った。
静かな廃墟ビルにヒールの音が響き渡った。
作者退会会員
続編です(^^)
どんなお話なのか読んでいただけると嬉しいです。
ウキウキ(笑)