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「これで三人目かぁ……」
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一人の男性がボソッと呟く。
煙草を口にくわえるがライターの火がつかないことに苛立ち足元のゴミ箱を蹴る。
舌打ちしたり頭を掻いたりで気分が落ち着かない男性。
彼の名は、ヒロキ。
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ヒロキはアパートで一人暮らしをしている。
居酒屋でアルバイトをしながら生活費を稼いでいた。
いろんな仕事をしてきたが結局はどれもつづかず、転々とするばかりでいつしかアルバイトだけで稼ぐ毎日になった。
学生時代遊びばかりを優先して勉強に無関心だったヒロキにとって、父親が警察官で母親が弁護士として働いてることが嫌で仕方なかった。
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「親はあんなに立派なのに……」
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そんな目で見られるのがヒロキには堪えられなかった。
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ヒロキは非行に走るようになり、両親から叱られるたびに家出を繰り返した。
しまいには家に帰るのが嫌になり、勝手に一人暮らしをはじめた。
そして現在にいたる。
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今日も居酒屋でアルバイトをしていたヒロキ。
店が閉店し、皿洗いや掃除を済ませ最後にゴミを裏口まで捨てに行く。
ゴミを捨てる場所は毎日ジメジメしてて下水道のニオイが漂っている。
ネズミやゴキブリにはうってつけの場所と言いたくなるほど汚い。
ヒロキはゴミ捨てを済ませて、自分の車をとめている駐車場へ向かった。
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二ャ~。
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「ん?」
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車の下を見ると一匹の黒猫がいた。
ヒロキを見つめたままジッとしていたため、黒猫を追い払う。
「邪魔だ、あっち行けよ!」
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黒猫がいなくなったのを確認して車を発進させた。
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賑やかで人通りが多い街から小さな住宅街を行き、街灯が点々と灯る道を更に行くと、やがて明かりはヒロキが運転する車のライトだけになっていた。
アパートまではあと二~三分で着くかな……
そう思ったとき。
目の前を黒い何かが飛び出してきた。
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「うわぁ!!」
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あわててブレーキをかけるがハンドルをきり損ねてしまい、一気に何も見えなくなった……。
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目を覚ますと病院のベッドにいた。
話によれば、ヒロキの後にもう一台あの道を通ろうとした車がいたらしい。
事故に気づいた運転手が救急車を呼んでくれたそうだ。
ヒロキは片足を骨折していたが、三週間以内には退院できるだろうと医師から言われた。
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退院日、医師と看護師に頭をさげ松葉杖をつきながら病室を出た。
タクシーに乗り込むと自分のアパートがある場所を運転手に伝えた。
アパートに着くと男性が一人玄関の前で煙草を吸っている。
ヒロキに気づいて駆け寄ってきた男性は、中学高校で当時仲が良かったタカヒロだった。
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「おぉ!久し振りじゃん(笑)
どうしたんだよ、いきなり俺ん家来て(笑)」
久々の再会にテンションがあがるヒロキ。
タカヒロは久し振りにヒロキと酒でも飲みながら話がしたくなったらしい。
玄関前には缶ビールとつまみが入ったビニール袋が置いてある。
懐かしいなぁ、とお互い言いながらヒロキの家に入った。
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「何だよビール全然冷えてねぇじゃん、
お前いつから俺ん家に来てたの?」
「ヘヘヘ、どうしても早くお前に会いたくてさ!
玄関のトコでずっと煙草吸ってた(笑)」
「早く会いたいって……
彼女じゃねぇんだから……」
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いろんな話で盛り上がり楽しい時間が過ぎていった。
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「ところでさぁ、お前片足どうしたんだよ?
ずっと気になってたんだけど……?」
タカヒロがヒロキの足を見ながら言う。
運転中目の前に何かが飛び出してきて、避けようとした際にハンドルをきり損ねたと笑って説明するとタカヒロの顔色が変わった。
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「おい、どうしたんだ?タカヒロ?」
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タカヒロはまばたきもせずにどこか一点をジーッと見つめつづけている。
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ヒロキがタカヒロの顔を覗き込むように見ると、タカヒロがヒロキに詰め寄った。
驚いて後ろへのけ反るヒロキ。
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「な、なぁ!その何かって何だ?!
何が飛び出してきたんだ?!
早く答えろよ!!」
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タカヒロの反応に驚きを隠せないヒロキ。
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「分かんねぇけど動物だったんじゃねぇかなぁ……
人じゃなかったってことだけは確かだよ……
小さくて黒い生き物が飛び出してきた……」
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ヒロキが言った”黒い”という言葉に更に動揺を隠せなくなるタカヒロ。
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頭をかかえて歯をカタカタいわせながら震えはじめた。
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「殺される……!!
殺される……!!」
何かに怯えるかのようにブツブツ呟いている。
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「ヒロキ!!俺たち殺される!!
アイツが!!アイツが帰って来やがった!!」
大泣きしながら叫ぶタカヒロ。
ヒロキにはタカヒロが何を言っているのかが分からない。
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コイツ酔っぱらってんのか?と思ったヒロキは酒を飲むのはここまでにしようと言い、タカヒロを帰すことにした。
待ってくれ、一人にしないでくれ!!と暴れるタカヒロを、ヒロキは帰れ!と言って追い出した。
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「ヒロキ!ヒロキ!!
頼む!開けてくれ!!」
タカヒロが扉を叩いて叫ぶが、放っとけばそのうち諦めて帰るだろうとヒロキは無視していた。
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…………………………。
…………………………。
…………………………。
…………………………。
何も聞こえなくなり、やっと帰ったか……と煙草を吸いながら一息つく。
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二ャ~、二ャ~。
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カシャカシャカシャカシャ……
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今度は何だ?と思い、音がする玄関へ向かい扉の穴から外を見るが誰もいない。
扉を開けると小さな黒猫がいた。
ヒロキをジーッと見つめている。
「なんだ、猫か……」
扉を閉めようとしたとき、
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チリンチリンと鈴の音が聞こえた。
黒猫を見ると桃色の首輪をしている。
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「この猫、どっかで見たような……」
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ヒロキの背筋に寒気が走った。
急いで扉を閉めて鍵をかける。
……が、もう遅かった。
振り向くと、散らかっているリビングに人らしき黒い影。
真っ赤な口紅を塗りニヤリと笑みを浮かべる女。
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ヒロキは足がすくんで動けない。
ゆっくりと近づいてくる影に向かって松葉杖を振り回すが意味がない。
「や、やめてくれ!
来ないでくれ!!」
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ヒロキの体は真っ赤な炎に包まれていった……。
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カツンカツンカツンカツン……
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「あら……
ここは私が来なくても良かったみたいね……
それにしても不思議よねぇ……
人間って一人になるとこうも簡単にあの世へいけちゃうんだから……」
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翌日、二人の男性の遺体が発見された。
一人はアパートで焼死、もう一人は自殺だったらしい。
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夜中アパートで火事があり、住人は皆避難したと思われていたが一人だけ逃げ遅れたという。
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もう一人は自宅で首を吊っていたらしく、家族の話によれば昨夜帰って来たときから精神状態がおかしくなっていたそうだ。
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一人の女性がベンチに座って空を見上げている。
膝の上には桃色の首輪をした黒猫が。
真っ赤な口紅を塗った女性が黒猫をなでながら呟く。
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「もうすぐ自由になれるわよ、モモ……」
作者退会会員
続編できました~(о´∀`о)
楽しんでもらえるかな~(*´ω`*)