ある夜、俺は喉の渇きで目が覚めました。
1月半ばの冷たい雨が激しく降る夜でした。
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子供が産まれてからは、妻と子供達が1階の和室で眠り私は2階に独りで眠るようになりました。
トイレは各階にあるので、2階のトイレに寄ってからリビングへと向かいました。
階段を下りると左手にリビング、正面に玄関、右手に和室があります。
リビングも常夜灯が点いていて(寝たんなだな…)と思いながら水を一杯飲みました。
2階に戻ろうと、リビングを出た時ふと玄関の鍵が開いている事に気がつきました。
妻はよく、鍵をかけ忘れる。電気を消し忘れる。物をしまい忘れる。予定も忘れる…
いつもの事だろうと、鍵をかけて2階へと上がっていった。
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少しして、うとうとし始めた頃…
ギシッ!
ミシミシミシ・・・
ザーザーと雨音がする中で、奇妙な音に気がつき再び目を覚ましました。
一瞬、気のせいか…と思い目を閉じると
ミシ・・・
ズル、ズズ・・・
やはり、音がします。何かを引き摺るような、そんな音が混じっているのです。
怖くなり、息を潜め全身の神経がその音の方へと集中していきます…
ミシ・・・ミシミシッ!
ズル、びちゃっ・・・
ズズ、びちゃっ・・・
ミシ・ギシッ!
ズルズル、びちゃっ・・・
音は確実にベランダへと近づいていました。
ベランダの下はカーポートとなっているので、上がろうと思えば上がってこれます…。
不審者だろうか…考えているうちに、音は尚も近づいてきます
ギギッ・・・ズル・・・
ギィッ・・・びちゃっ、ズルズル・・・
ゴトッ!
ズズズッ…
ドサッ!
ベランダに上がってきた!
心臓の鼓動が早まる。いつでも対応できるように、身体は半身を起こした状態で様子を伺います…
*
*
コンコン・・・コンコン!
静かに、ベランダの戸を叩く…不審者ではないのだろう。少しだけ安堵しました。
コンコン・・・コンコン!
「ねぇ、あけて…」
はっとしました。弱々しい、女性の声で「開けて」と確かに聞こえました。
「おねがい、あけて…」
女性は弱々しく訴え続けています。しかし、時刻は夜12時を回っています。普通だったら、こんな時間にベランダから来る人はいません。
*
カーテンを開けるかどうか…
ゴンゴンゴン!
「ねぇ、ねぇってば…あけてっ!」
ゴンゴンゴン!
*
今度は強く叩き、強い口調で訴えてきました。
ゴンゴン!
ゴンゴン!「あけてー!」
あまりの訴えに、覚悟を決めカーテンに手をかける…
恐る恐る、カーテンを開けると…
*
目の前にびしょ濡れの女性が立っていた。
思わず、腰を抜かしその場に崩れ落ちてしまいました。尻餅をついたのは、これが初めてです…
肩より下まで伸びた長い髪は濡れて、青白い顔に水を滴らせている。
ポタポタと水を垂らす、その顔をよく見ると
・
・
・
妻だった…
*
「な、何やってんの?」
これが、俺がやっと絞り出せた一言だった。
《終》
作者トド
お読み頂きありがとうございました!
あまり、怖い話にはならなかったですね(^_^;)
雨が降る真夜中…果たして妻は何をしていたのでしょう?
ふふふ…(`・ω・´)
あ、実はノンフィクションです
(・ω・)ノ