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「ねぇ、黒い家って知ってる?」
「うん、たまに聞くよ。でもウワサでしょ(笑)」
「だけど知らない人がいないってぐらい有名な話じゃん、本当かは私も知らないけど……」
…………………………
私と美和はある話で盛り上がっていた。
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…………………………
この町には昔から「黒い家」という話がある。
詳しい情報は誰も知らない。
その家を見てしまった人はあの世に連れていかれるという。
私と美和も100%信じてるわけではないが、多少怖いと思う気持ちはあった。
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カァ~ カァ~
カァ~ カァカァ~
…………………………
「最近この町カラスが増えたね」
「すぐ近くにゴミ屋敷あるでしょ?
多分そのせいだよ」
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二ヶ月前に空き家に越してきた男性がいる。
還暦を過ぎた白髪だらけのおじさん。
いつも白いタンクトップとヨレヨレの半ズボンを履いて一人暮らしをしている。
炊事や掃除ができないのか、玄関や庭に空の弁当の容器や割り箸、ペットボトルなどが散乱し近所の人を困らせていた。
そのゴミ屋敷に一日中カラスたちが集まってゴミをあさっている。
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私と美和の家はゴミ屋敷から離れているから困りはしないけど、一日中カラスたちの声がひびくのは正直嫌だった。
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「美和~、ご飯よ~!」
「あ、は~い!じゃあまた明日ね」
美和に手をふり私も帰ることにした。
カァ~ カァカァ~
相変わらずカラスたちの声が響いている。
カ~ラ~ス~何故鳴くの~♪と歌いながら帰宅した。
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次の日学校にきて自分の教室に入ると、美和が走ってきた。
「ねぇ聞いた?」
美和の言葉に「何を?」と聞き返す。
美和の話によると、ゴミ屋敷のおじさんがいなくなったらしい。
生徒の中には黒い家に行ってしまったのでは?と話す人もいた。
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夕方、今日は美和の家で宿題をすることに。
美和には菜々美という妹がいて、三人ですることにした。
分からない問題を教え合いながら宿題をしていると、菜々美が話し出した。
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「ねぇ、ゴミ屋敷のおじさんどこに行ったのかな?」
私と美和はお互い目を合わせて、さぁ?と答える。
何故いきなりそんなことを聞くのか美和が聞くと、菜々美は昨日ゴミ屋敷のおじさんを見たと言い出した。
散歩でもしてたんじゃない?と美和はいうが、菜々美は首をふる。
あんな格好で散歩なんかしないと。
詳しく聞くと、おじさんは裸足で道の真ん中を歩いていたらしい。
誰かに引っ張られるように右手は前に伸ばして。
歩き方はどこかぎこちなく、ずっと見ていたら気持ち悪くなったから急いで帰った、そう言って菜々美はうつむく。
私と美和が菜々美を見つめていると、また菜々美が話し出した。
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「そういえば今日、カラスたちがいないね」
私と美和も声を揃えてそういえば……と言う。
窓を開けて外を見るが、どこにもいない。
いつもなら電線や屋根にいるはずなのに。
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カァ~カァ~ カァ~カァ~
カァ~カァカァ~ カァ~カァカァ~
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突然カラスたちがどこかで鳴き出した。
三人で窓から空を見ると、たくさんのカラスたちが飛び回っている。
口をポカンと開けていると部屋の扉が開く音。
見ると菜々美が部屋から出ていく姿が。
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「どこ行くの!」
「菜々美ちゃん!」
私と美和が追いかけるが、菜々美は返事もしないで裸足のまま外へ。
誰かに引っ張られるように右手は前に伸ばして。
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「菜々美!待ちなさい!」
美和が菜々美の肩を掴んだ。
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「!!!!!」
…………………………
驚く美和を気にしながら私も菜々美の顔を覗きこんだ。
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「!!!!!」
…………………………
私も驚いて口をふさぐ。
菜々美の目は白目になり、顔中の血管が青く浮き出ていた。
口からヨダレを垂らしながら唸り声をあげている。
菜々美はまたゆっくりと歩きはじめた。
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カァ~カァ~
カァ~カァカァ~
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上を見ると、カラスたちが急降下してきた。
私と美和が菜々美の体を抑えてしゃがみこむ。
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カァ~カァカァ~
バサバサバサバサ
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怖い!助けて!
早くどっか行ってよ!!
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背中や頭に当たるカラスたちの羽を避けようと片手で抵抗するが、全然意味がない。
早くどっか行ってよ!!
カラスたちに大声で叫ぶ。
カァ~カァカァ~
カァ~ バサバサバサバサ
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カラスたちがいなくなった途端美和の叫び声が。
私も腰が抜けてしまった。
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そこには見るも無惨な姿になった菜々美がいた。
ちぎれた肉片がところどころに散らばり、黒い羽が体に覆い被さっていた。
私と美和の体にも血がベットリ。
「あ"……あ"……」
美和は何も言えないまま泣き崩れた。
息絶える前に菜々美の声が聞こえた。
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「く" ろ" い" い" え"」
作者退会会員
カラスのお話が多いので、私もカラスが登場するお話を作ってみました(笑)
読んでくれれば嬉しいです(^^)