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カァ~ カァカァ~
カラス達が飛んでいる。
暗い洞窟で一人暮らす加奈子。
外はいつも闇のように暗く、黒い雲が空を覆っている。
無人島に流れ着いて、もうどれくらい経つだろう?
加奈子にとってこの島は、自分の家のような存在になっていた。
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「やっぱり黒が一番素敵。
どんな色にも染まらないから。」
一羽のカラスを見ながら加奈子はつぶやく。
忘れたくても忘れられない過去を、加奈子は黒く塗り潰して生きていた。
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ある日、遠くの空が始めて明るく晴れた。
いつも黒い雲で覆われていた空から光が差し込む。
久々に見るまぶしい光に少し不機嫌になる加奈子だったが、晴れた空が妙に気になり光が差し込む方へ歩いた。
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雨水でぬかるむ地面を一歩一歩歩くと、少しずつ森が明るくなってきた。
地面は少しずつ色を変え、白い砂になる。
加奈子はピタリと歩みを止めた。
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一人の女が姿をあらわした。
白いワンピースを着て、白い薔薇を髪につけている。
加奈子に気づき、二人はしばらく目を合わせたまま、互いの存在に驚いていた。
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「あなた誰?」
先に加奈子が口を開いた。
ずっと黙っている相手に苛立ち、もう一度聞く。
相手が小さな声で答える。
「小百合……」
加奈子がその場から立ち去ろうと背を向けると、同じ質問が。
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加奈子は背を向けたまま、自分の名前を答えて帰った。
暗い森へ入っていく加奈子を、小百合は悲しい目で見つめていた。
洞窟に帰ってきても、加奈子は小百合のことが頭から離れなかった。
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次の日、洞窟の入り口に白い薔薇が一本置かれていた。
加奈子は小百合の姿が頭に浮かぶ。
舌打ちをして、白い薔薇を足で踏みグチャグチャにする。
加奈子はなぜか、小百合のことが気に入らなかった。
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白い薔薇は毎日置かれるようになる。
それを見つけるたびに加奈子は不機嫌になっていた。
毎日つづきとうとう嫌気がさした加奈子は、小百合と出会った場所へ向かった。
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「いつもいつも何なのよ!
迷惑だからやめてよ!」
加奈子は小百合を鋭く睨みつける。
小百合は黙ったまま笑顔で加奈子を見つめる。
「聞いてるの?
黙ってないで何とか言いなさいよ!」
獣のような赤い目で、自分を睨む加奈子に小百合は聞く。
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「どうしてそんなに怖い顔をするの?」
小百合の言葉で加奈子は拳を握る。
それを見た小百合は自分の髪につけていた白い薔薇を手にとり、加奈子の手に渡そうとした。
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「触らないで!!」
加奈子が小百合の手を思いきり払うと、白い薔薇は地面に落ちた。
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「黒……」
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小百合がつぶやく。
地面に落ちた白い薔薇を拾い、香りをかぎながら小百合は言う。
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「素敵でしょ? この白い薔薇……
白はどんな色にでも染まるから私は白が一番好き。
涙の青、幸せのピンク、情熱の赤……」
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「何が言いたいのよ!」
苛立ちを見せる加奈子に、小百合は更につづける。
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悲しげな顔で加奈子を見る小百合。
「黒……
あなたの心はいつも黒……
どんな色にも染まらない唯一の色……
あなたはたくさんの想いを吐きだせずに、今まで生きてきたでしょ……?
何となく分かるの、私には……」
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小百合が何を言いたいのか、加奈子には分からない。
「いい加減にしてよ!!」
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大声でさけぶ加奈子を、小百合は強く抱きしめた。
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小百合の突然の行動に加奈子は驚き、離して!とさけぶ。
小百合の肩をつかむが、小百合は加奈子を強く抱きしめたまま離れない。
小百合の体が小さく震えはじめ、加奈子は動きをとめた。
ゆっくりと小百合の顔に目を向ける。
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小百合の頬を涙がつたっている。
ポロポロと頬をつたう涙が見えた。
小百合は泣いていた。
加奈子の背中を撫でながら。
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「大丈夫…… つらかったね……
もう誰もあなたを苦しめないから……」
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出会ったばかりの人が、加奈子の心を開こうとしている。
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「どんな想いも吐きださずにいたから
黒く染まってしまったの……
だけど大丈夫……
これからはどんな想いも吐きだして
いろんな色に染まっていこう……。」
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加奈子の顔を涙が濡らしていく。
小百合の白い薔薇は、いつの間にか加奈子が強く握りしめていた。
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作者退会会員
完結します!
怖い話じゃなくてごめんなさい(^_^;)