中編4
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二人の女 〈完〉

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カァ~ カァカァ~

カラス達が飛んでいる。

暗い洞窟で一人暮らす加奈子。

外はいつも闇のように暗く、黒い雲が空を覆っている。

無人島に流れ着いて、もうどれくらい経つだろう?

加奈子にとってこの島は、自分の家のような存在になっていた。

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「やっぱり黒が一番素敵。

どんな色にも染まらないから。」

一羽のカラスを見ながら加奈子はつぶやく。

忘れたくても忘れられない過去を、加奈子は黒く塗り潰して生きていた。

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ある日、遠くの空が始めて明るく晴れた。

いつも黒い雲で覆われていた空から光が差し込む。

久々に見るまぶしい光に少し不機嫌になる加奈子だったが、晴れた空が妙に気になり光が差し込む方へ歩いた。

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雨水でぬかるむ地面を一歩一歩歩くと、少しずつ森が明るくなってきた。

地面は少しずつ色を変え、白い砂になる。

加奈子はピタリと歩みを止めた。

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一人の女が姿をあらわした。

白いワンピースを着て、白い薔薇を髪につけている。

加奈子に気づき、二人はしばらく目を合わせたまま、互いの存在に驚いていた。

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「あなた誰?」

先に加奈子が口を開いた。

ずっと黙っている相手に苛立ち、もう一度聞く。

相手が小さな声で答える。

「小百合……」

加奈子がその場から立ち去ろうと背を向けると、同じ質問が。

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加奈子は背を向けたまま、自分の名前を答えて帰った。

暗い森へ入っていく加奈子を、小百合は悲しい目で見つめていた。

洞窟に帰ってきても、加奈子は小百合のことが頭から離れなかった。

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次の日、洞窟の入り口に白い薔薇が一本置かれていた。

加奈子は小百合の姿が頭に浮かぶ。

舌打ちをして、白い薔薇を足で踏みグチャグチャにする。

加奈子はなぜか、小百合のことが気に入らなかった。

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白い薔薇は毎日置かれるようになる。

それを見つけるたびに加奈子は不機嫌になっていた。

毎日つづきとうとう嫌気がさした加奈子は、小百合と出会った場所へ向かった。

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「いつもいつも何なのよ!

迷惑だからやめてよ!」

加奈子は小百合を鋭く睨みつける。

小百合は黙ったまま笑顔で加奈子を見つめる。

「聞いてるの?

黙ってないで何とか言いなさいよ!」

獣のような赤い目で、自分を睨む加奈子に小百合は聞く。

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「どうしてそんなに怖い顔をするの?」

小百合の言葉で加奈子は拳を握る。

それを見た小百合は自分の髪につけていた白い薔薇を手にとり、加奈子の手に渡そうとした。

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「触らないで!!」

加奈子が小百合の手を思いきり払うと、白い薔薇は地面に落ちた。

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「黒……」

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小百合がつぶやく。

地面に落ちた白い薔薇を拾い、香りをかぎながら小百合は言う。

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「素敵でしょ? この白い薔薇……

白はどんな色にでも染まるから私は白が一番好き。

涙の青、幸せのピンク、情熱の赤……」

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「何が言いたいのよ!」

苛立ちを見せる加奈子に、小百合は更につづける。

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悲しげな顔で加奈子を見る小百合。

「黒……

あなたの心はいつも黒……

どんな色にも染まらない唯一の色……

あなたはたくさんの想いを吐きだせずに、今まで生きてきたでしょ……?

何となく分かるの、私には……」

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小百合が何を言いたいのか、加奈子には分からない。

「いい加減にしてよ!!」

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大声でさけぶ加奈子を、小百合は強く抱きしめた。

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小百合の突然の行動に加奈子は驚き、離して!とさけぶ。

小百合の肩をつかむが、小百合は加奈子を強く抱きしめたまま離れない。

小百合の体が小さく震えはじめ、加奈子は動きをとめた。

ゆっくりと小百合の顔に目を向ける。

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小百合の頬を涙がつたっている。

ポロポロと頬をつたう涙が見えた。

小百合は泣いていた。

加奈子の背中を撫でながら。

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「大丈夫…… つらかったね……

もう誰もあなたを苦しめないから……」

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出会ったばかりの人が、加奈子の心を開こうとしている。

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「どんな想いも吐きださずにいたから

黒く染まってしまったの……

だけど大丈夫……

これからはどんな想いも吐きだして

いろんな色に染まっていこう……。」

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加奈子の顔を涙が濡らしていく。

小百合の白い薔薇は、いつの間にか加奈子が強く握りしめていた。

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Concrete
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光道 進様、コメントありがとうございます(^^)
怖いお話をつくるのが苦手で、できた!と思ってもどこか切ない感じの文章を書いてしまいます……(^_^;)
誰かの作品とかぶってないかな?と心配しながら投稿してる時もあります。
これからも頑張ります!

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私と同じような??????
怖くない。だけど切ない。
お仲間ですね。
これからも、怖い物含めて、悲しいもの書いて行きましょう。
のんさんの話良かった。
このサイトでは、怖くておどろ、おどろしいものが好まれます。
私は書こうとしても書くことが中々出来ない。
読む人少ないかもしれませんが頑張ってください。
私もおなじですので。

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