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「サッちゃんはね、
サチコっていうんだ本当はね~♪」
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中学一年生の紗千子(サチコ)。
生まれつき体が弱く、身長が低い。
学校の給食を残すのが当たり前なくらい少食。
誰とも喋らずうつむいてばかり。
ある四人の生徒から嫌がらせを受けていた。
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春佳(ハルカ)
夏実(ナツミ)
秋吉(アキヨシ)
冬希(フユキ)の四人。
紗千子が一人でいるのを見つけたら、四人で嫌がらせをしていた。
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「あ、いたわよ。」
一人で帰る紗千子を囲み手拍子する。
声をそろえて歌いだす。
「サッちゃんはね、
サチコっていうんだ本当はね~♪」
紗千子は無視するだけだった。
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ある日四人が何かを話しながら、一人で帰る紗千子に声をかける。
「ねぇ、一緒に遊ばない?」
「もういじめないからさ!」
「すぐそこの神社で遊ぼうぜ!」
「どうせ帰っても暇だろ?」
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無視して帰ろうとする紗千子を四人が帰そうとしない。
いつもと明らかに態度が違う四人が、何か企んでいることは紗千子じゃなくても分かる。
いいから来い、と命令口調になる四人に紗千子は仕方なくついていった。
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「何して遊ぶ?」
「あ、はいは~い!かくれんぼ~」
「お、いいね~」
「賛成~!」
わざとらしい会話がつづく。
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「紗千子も賛成だって」
「さすが紗千子~!」
「じゃあ紗千子が鬼だな」
「百秒数えたら探せよ」
鳥居の柱に無理矢理押しつけられる。
ちゃんと目を閉じろ、と言われる。
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紗千子が数えはじめると、四人はその場からいなくなった。
百と言って探すが誰も見つからない。
神社の敷地内の至るところを探すがどこにもいない。
紗千子はいつまでも探しつづけた。
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「今頃何してるかな?(笑)」
「一人でウロウロしてるんじゃない?(笑)」
「ホント馬鹿だよなアイツ(笑)
中学生でかくれんぼなんてするわけねぇじゃん(笑)」
「だよな~、ガキじゃあるまいし(笑)」
四人は紗千子をおいて帰っていた。
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翌日、紗千子が学校に来ない。
欠席か?
生徒たちが騒いでいると担任が席につくように言う。
出席簿を机において担任が話をした。
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「みなさんに悲しいお知らせがあります。
昨日紗千子さんが亡くなったそうです。
詳しいことは分かりませんが、大切な友達が亡くなったということでお知らせしておきます。」
そう言うといつも通りの授業をはじめた。
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昼休み、学校の屋上で話す四人。
「何で死んだのかな?」
「分からないよ、でも……」
「でも何だよ、あの神社で死んだとでも?」
「変な冗談やめろよ!
俺たちは絶対に関係ねぇぞ」
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「そうよ、私たちは遊んであげてただけ」
「だよね」
…………………………
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家に帰って大好きなマンガを読もうと本棚に手を伸ばす春佳。
何かが落ちているのに気づき拾うと、一枚の写真だった。
入学式の日の集合写真。
春佳の隣には紗千子がうつっている。
いつもうつむいてばかりの紗千子が笑っている姿。
春佳はなぜか不気味さを感じた。
…………………………
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帰ってきて家の玄関を開けようとする夏実。
歌が聞こえてきた。
「サッちゃんはね、
サチコっていうんだ本当はね~♪」
振り向くと向かいに住んでる女の子が歌っている。
庭で走り回りながら歌う女の子を眺める夏実は、紗千子を思い浮かべていた。
…………………………
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公園の前を歩く秋吉と冬希。
小学生の声が聞こえ思わず立ち止まる。
「もういいか~い?」
「ま~だだよ~」
かくれんぼをしている小学生を見ながら二人も紗千子を思い浮かべていた。
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紗千子の死がどうしても気になる四人は、あの神社へ向かった。
まだ明るいのに鳥居の先は暗くて見えない。
吸い込まれてしまいそうなその光景に息を飲む。
ゆっくり足を踏み入れて鳥居をくぐった瞬間、冷たくて重い空気が流れた。
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神社の敷地内は長い間管理されていないのか、雑草が生い茂り枯れ葉が落ちている。
地蔵に供えられている花は枯れ、湯飲みが割れている。
祠の横には古井戸がある。
神社は錆びたところや朽ちたところが目立つ。
砂利を踏む音だけがやたらと大きく聞こえる。
神社の裏へまわると下へ行ける坂がある。
四人がその坂を下ると川が見えてきた。
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花束やお菓子、ジュース、ぬいぐるみなどがたくさんおいてある。
ぬいぐるみと一緒においてある便箋に「紗千子ちゃんへ」と書かれているのを見た瞬間、四人は落胆した。
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「やっぱりここで死んだんだ……」
「溺れたってこと……?」
「でも俺たちは連れてきただけで
殺したわけじゃねぇよ……」
「それに川があるなんて知らなかったし、
アイツが勝手にここで死んだんだ……」
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「だけどここで死んだのは事実じゃん!」
「私たちがここに連れて来たから
こんなことに……!」
「何だよ!
今になって自分たちのせいだって言うのか?!」
「俺たちは関係ねぇ!」
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…………ポチャン。
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水の音で驚く。
風が吹きはじめ、木々がざわめく。
鳥の鳴き声が聞こえる。
心臓の鼓動だけが全身に大きく伝わる。
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「きゃあ!」
足を滑らせて春佳が川に落ちた。
「春佳!!」
三人が引き上げようとしたとき。
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「もういいか~い?」
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四人の動きがとまる。
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「何……?
今の声……?」
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「うわぁぁあ!!」
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川に黒い影がいる!!
こっちに近づいてくる!!
三人は春佳を残して走りだした。
「待って!置いていかないで!!」
春佳が叫ぶが誰も振り返らない。
「あぁ……!」
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何かが両足をつかんで引きずり込もうとしている!
地面の草を必死でつかむが何かの力が強すぎる!
あっという間に川の中に引きずり込まれてしまった。
「苦しい!たすけて……!」
もがく力が無くなっていく。
意識が薄れていくなか、誰かが耳元でささやいた。
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「春佳ちゃん見~つけた……」
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「あ!」
足をくじいてしまう夏実。
逃げたくても腰が抜けて立ち上がれない。
「待って!待ってよ!!」
夏実の声は届かない。
何かに体を押さえつけられる!
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すごい力で夏実の首をしめる!
やめてと言いたいが声を出せない!
ミシミシと骨にヒビが入っていく。
あまりの痛さで涙がでる。
それでも声は出せない。
視界が暗くぼやけていくなか、誰かが耳元でささやいた。
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「夏実ちゃん見~つけた……」
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「うわ!!」
何かに片手をつかまれ引きずられる秋吉。
離してくれ!と叫ぶがすごい力で秋吉を引きずる。
「わ~!!」
古井戸に落とされた。
のぼろうとするが、あまりの深さにどうすることもできない!
黒い影が顔をふさぐ。
暴れても離れない。
「やめてくれ!」
息絶える寸前何かが耳元でささやいた。
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「秋吉くん見~つけた……」
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「う……うぅ……」
首に何かが絡まり鳥居の柱に押さえつけられる冬希。
首に絡まったロープのようなものを必死でほどこうとするが意味がない!
「悪かった……!許してくれ……!!」
泣きながら声を絞りだすが力はゆるまない!
誰かが耳元でささやいた。
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「冬希くん見~つけた……」
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静かな神社で女の子の声が聞こえる。
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「もういいよ~……」
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